- 金貸しは、国家を相手に金を貸す - http://www.kanekashi.com/blog -

止まらない円高=世界通貨戦争どうなる?14〜円高は本当に問題なのか?【前編】〜

こんにちは〜
13〜世界通貨戦争の行方は?【後編】 [1]
では、『世界通貨戦争後の支配者たち』(著者:原田武夫氏)を読み、原田氏の予見を抜粋・紹介していきました。
%E5%86%86%E9%AB%98.jpg [2]
今回は、るいネットより『誤解に満ちた円高騒動』 [3]の投稿を元に円高容認論を語っているものを紹介していきたいと思います。
応援よろしくですm(_ _)m

「15年ぶりの円高が日本経済を直撃している」というが本当だろうか?
「円高は貿易立国の日本にはマイナス」という間違った固定概念が日本市場を支配している。15年前の日本経済と今日を事実に基いて比較すれば今日の日本市場を動かしている多くの固定概念がことごとく過去のものであり、もはやあり得ないものであることが分かる。

増田俊男   第604号(2010年09月2日号) [4]
増田氏は、円高が貿易立国の日本にはマイナスといった固定観念が間違っていると言っています。
具体的にどの様な内容をいっているのかを見て行きたいと思います。

1.輸出企業の為替変動に対する耐久力
日本の輸出入業者は為替先物予約などで為替変動に対応しているので変動リスクはほとんどなくなっている。「1円の円高は100億円の損」などと騒がれているのは単細胞的議論で大間違いである。

増田氏は輸出企業が為替変動に対するリスクヘッジとして為替予約という対策をとっているので、円高になったから損失するというのは正しくないと言っている。
為替予約というのは、

輸出企業は、為替の行方を指をくわえてただ見守っているわけではありません。
多くの輸出企業は、輸出売上代金を外貨建てで受け取る場合には、
「為替予約」を行います。
為替予約は通常銀行と輸出企業間で行われ、
外貨建て売上代金の一部を為替予約することが一般的です。
全額を予約しない理由の一つとして、為替予約のコストがあります。
(為替予約の例)
輸出取引の契約時、1ドル115円で、そのレートで利益計算を行います。
しかし、実際輸出売上代金を受け取る際に1ドル110円になってしまった場合、
想定していた利益は目減りします。
そこで、例えば「100万ドルを115円で売る」という予約を行うことで、
為替相場が1ドル110円になってしまった場合でも利益の目減りは起こりません。
このように輸出企業は為替予約を行うことで、
為替相場の変動による損失を回避します。
輸出関連企業の円高(為替)対策 [5]より

短期的にみれば、円高に上がった時のリスクは回避されることは分かりました。
ただ、長期間円高になり続けると、為替予約するとしても厳しくなってきそうですよね。
この辺りはどうなんでしょうか?

2.日本の主な輸出企業は海外に拠点(子会社や支社)を持ち原材料や半製品は自社企業グループ間取引になっているので為替リスクは吸収されている。

一般的に円高対策(為替相場の変動に対するリスクの軽減)としては、円建てで全ての商取引を行うか、現地生産、現地販売を推進して為替 相場の変動によるリスクを軽減する方法が言われています。

輸出企業は、競争上の圧力や長期的な円高トレンドに対応して、ずっと以前に生産拠点を海外にシフトし始めた。1997年から2007年までの10年間で、製造業者は海外生産比率を11.4%から19.1%に拡大した。日本の最も競争力のある輸出企業は同時に海外生産の先導役でもある。日本の輸送機材(自動車を含む)の39.2%、情報・通信機器の28.1%が現在、海外で生産されている。
投資家なぐなぐの徒然草【【オピニオン】誰が円高をおそれるのか?】2010年9月7日記事 [6]より

とあるように、日本の主力の輸出企業は円高対策として既に海外生産比率を上げたり、工場を海外移転したりと対策を行なっているという。
輸出企業の円高対策は他に、どの様なものがあるのだろうか?
少し見ておこう
%E5%86%86%E9%AB%98%E5%AF%BE%E7%AD%96.bmp [7]
(帝国データバンク) [8]
上記表をみると、輸出企業は様々な円高対策を行なっていることが分かります。

3.15年以来日本の国内企業物価は7.4%下落しているので、仮に今の為替レートが1995年4月19日と同じ1ドル79.75円であったとしても日本の国際輸出価格はまだまだ1995年より低いことになる
。1995年以来の貿易相手国の通貨の変動率を加重した実質実効為替レートは現在1995年(79.75円)より30%安い計算になる。
つまり1ドル55.82円になってもおかしくないと言うことであり、現在84−85円は超円安である。

日本銀行が試算した円の実質実効為替レートの推移(下グラフ)を見てみると、過去の円高を記録した1995年4月時点の指数は151.11であるのに対して2011年1月時点では103.11と約2/3の水準と低いことが分かります。
[9]
※実質実効為替レート:物価調整後の実効為替レートのこと。
(1973年3月時点を100とした指数)

円高になると輸出した際に価格が高くなり売れなくなる(価格競争力が低くなる)。と懸念する声が上がっているが、この実質実効為替レートを見る限りは、価格競争力が下がっているとはいえないことが分かります。

4.日本は加工貿易を基本にした貿易立国との概念がある。しかしこれも過去の話である。
世界銀行によると(2008年)輸出入のGDP(国内総生産)比の全世界平均が52.5%であるのに対して日本はわずかに31.5%でしかない。世界190カ国中最下位から7番目である。
日本が国際貿易国という概念は大間違い! 日本は貿易を通じての世界とのリンクが最も低い国である。

増田氏は、日本は国際貿易国という概念が間違っているという。
実際はどうなのか?

日本の貿易依存度はG20の中で18番目。先進国で日本より貿易依存度が低いのは米国だけなのです。
G20諸国の輸出依存度と輸入依存度(GDP比)は下記の通り。
(中央日報) [10]
●輸出依存度(GDP比)
韓国  :43.4%
ドイツ :33.6%
メキシコ:26.2%
中国  :24.5%
ロシア :24.4%
日本  :11.4%
アメリカ: 7.5%
●輸入依存度(GDP比)
韓国  :38.8%
ドイツ :28.0%
カナダ :24.6%
アメリカ:11.4%
日本  :10.8%
日本は輸出依存度11.4%の内需型国家 [11]より

のように、日本は貿易依存度が極めて低い内需型国家だったのです。
増田氏が言うように、日本が貿易立国というのは間違った固定概念のように思えます。
つまり、円高になると貿易赤字になってヤバイというのは、一部(輸出企業)の話だけのようにすら感じます。
今回は、円高って本当に問題なのか?という疑問を出発点に「円高でも問題ない。」という円高容認論を展開してきました。
ただ、今後日本は、円高を止められないと予想されます。
そうなれば日本は、円高をどうする?ではなく、円高社会にどう適応していくか?を考えていく必要があるのではないでしょうか?
次回は、円高社会に適応するには?を考えていきたいと思います。

[12] [13] [14]