- 金貸しは、国家を相手に金を貸す - http://www.kanekashi.com/blog -

市場縮小の深層:10 権力の弱体化

 「貧困消滅⇒市場縮小」の深層にある「私権の衰弱」と「序列原理の崩壊」に着目した今回の『市場縮小の深層シリーズ』、前回は「不正・不祥事の続出は、指揮系統の末路の姿」を扱いました。

 私権圧力が大きく力の原理が強烈であった時代は、万一隠蔽がバレたら即打ち首であり、その恐怖の力で隠蔽が一定抑えられてはいた。ところが’70年貧困が消滅し、私権圧力⇒序列原理が衰弱すると、民間企業も官僚機構も不正のオンパレードとなってきた。

 序列原理の衰弱の結果、引き起こされるのは権力の弱体化です。
 『市場縮小の深層シリーズ』10回目は「権力の弱体化」を扱ってみたいと思います。
[1]
[2]
 続きを読む前にいつものように応援の方をよろしくお願いします。


るいネット『権力の弱体化』(リンク [3])より

 私は権力を私有権の制覇に基づく支配権力と私有権がもたらす序列。という意味で主に使っています。
 なお、権力の衰弱は経済先進国でのみ言えることです。
 
 権力の弱体化は大きく言えば2段階あると思います。一つは近世、いわゆる封建領主や国王などの土地所有と武力と身分秩序に支えられた支配の時代からの移行期です。
 それが市場社会化したことで、私有権が身分による絶対化から市場における競争関係に委ねられるようになった。つまり現実の半分が開放された時代です。これは相対的衰弱です。
(もちろんこのあと自由競争が大資本による独占に転化した=力が半絶対化した時代を再度経由します)
 
 そして二段階目が現在先進国では絶対的貧困から多くの人が脱出することによって(生産力の発達と福祉・労働法などの分配制度によると思いますが)私有権に基づく権力が絶対的なもので無くなってきた。という現象です。自民党の旧いタイプの政治化の相対的凋落。若者のフリーター志向等、例をあげればキリがありませんが要はお金や出世が価値序列において相対的になってきたということをさしています。
 また旧秩序の瓦解もその現象の一つでしょう。(個人主義思想の浸透に加えて私有権力や金の力による秩序の弱体化がその原因だと思います)

 上記のるいネット投稿を読むと、今の日本は第2段階目にあたるようですが、ここで一つ疑問がわいてきました。「そもそも日本で権力が強大化した時代があったのでしょうか?」ということです。
 日本の権力体としてまず第一に思い浮かぶのは「天皇制」ですが、調べてみると戦後だけでなく、その成立過程から一貫して象徴としての存在であったことがわかります。

 私権闘争⇒序列原理の少数上位者である天皇−貴族は、大和朝廷の時代から奈良時代初期まで熾烈な主導権争いを繰り広げていた。
 しかし、相手を徹底的に破壊し尽くすまで権力闘争を繰り広げることはなく、ある一定の決着が付けば、それを追共認し皆が従う『談合』的な主導権争いであった。古墳時代(大和朝廷時代)の「天皇(大王)」とは、まさに有力豪族の談合の上に成立していた存在であり、その「天皇(大王)」を誰もが認めることが、序列を追共認することと同義であった。
 平安時代以降、血統を維持するという役割に特化した天皇は、貴族間闘争という序列上位での私権闘争を止揚する象徴的な存在として存続し続けてきた。

【日本的政治システム1 「天皇制」は、どのようなシステムに支えられてきたのか?】(リンク [4]
 
 太平洋戦争で暴走したと言われる軍部でさえも、『開戦すべきか否か』の決断がなかなか出来ず、独裁政権とはほど遠いものであったようです。
NHKスペシャル 開戦前夜 より(リンク [5]

 各組織のリーダーたちは、戦争に勝ち目がないことを知りつつも、戦争できないと言うことが自らの組織に不利益を与えると考え、言い出すことができない。海軍、企画院、陸軍、首相、それぞれが互いに責任を押しつけ合い、重大案件は先送りとなっていく。しかし、日米交渉が暗礁に乗り上げ、妥結の見通しがみえない中、首脳部は、国力判断、すなわち国家の生産力・戦争遂行能力のデータを総動員して、譲歩か、戦争かの合議を行う。

 今まさに、東日本大震災という未曾有の危機の中、「特権階級の暴走」で混乱を起こしている中身も、絶対的な権力者が不在なまま誰も決断できずに最悪の事態に陥っているという状況なのかも知れません。
 
 こうした日本人の体質は権力者になるには最悪ですが、庶民レベルで見ると意外な長所につながることになります。「独裁権力を行使しない≒みんなの合意の下に決定する」ということで西洋的な価値観からすると談合体質ということになりますが、それだけ共同体性を残しているとも言えます。
 日本は、その地政学的な特徴(島国で長らく略奪闘争に巻き込まれなかった。)から、本源気質が色濃く残っています。そのおかげで震災という外圧の中でも暴動・略奪が発生せず、諸外国が驚嘆する落ち着きぶりを見せています。 
[6]
[7]
 国内ではあまり評判の良くなかった東電社長の土下座謝罪も、支配権力の強大な中国では驚きのニュースになっています。
【東電社長が強い民意の前に土下座、華字紙が驚きを示す】(リンク [8]

「東京電力と言えば中国では、ペトロチャイナや中国海洋石油総公司に相当する。このような大企業の社長に膝を折らせたのは日本国民の強さだ」とし、日本国民は粗暴な民族では決してないが、社会的武器を行使したと報じた。さらに、「日本には明確で厳格な問責制度と大衆の監査システムがあり、東京電力の社長ですら、この制度の前には土下座せざるを得ない」

 強大な権力支配とは無縁で、何事も「和をもって尊しとなす」日本人も、3月11日の未曾有の危機の中、新しい動きも見え始めています。
 可能性を見せてくれるリーダーシップを求める動きです。
■橋下人気・・・4/11の大阪府議会、市議会選挙(リンク [9]

「大阪維新の会」(維新)は、府議会で57議席、大阪市議会で33議席、堺市議選で13議席を獲得。府議会では目標の過半数に達したほか、両市議会でも議会第一党の座を得て、大阪都構想推進へ主導権を握った。

■ 河村たかし市長が主張する「地域委員会」は庶民の社会参加の可能性を開くのか?
地域委員会、モデルの8カ所決定(リンク [10]
減税日本 現役東大生当選(リンク [11]

 東大大学院で公共政策を学ぶ現役の学生で、出馬を決めたのは告示のわずか1カ月前。スニーカーにジーパン姿で街を駆け回り「自分たちのことは自分たちで決める行政の実現を」と訴え続けた。
 「社会が変わってほしいという期待で票を入れてもらった。1票の重さを感じる。期待に応えられるよう努力する」と前を見据えた。
 東区の減税日本新人近藤徳久さん(48)は、当選確実になった午後10時前、河村市長とともに30人の支持者が待つ事務所へ姿を見せた。
 「皆さんの温かい気持ちで当選できた。震災の支援策も考えて、全力で前に進んでいきたい」と声を詰まらせた。
 傍らの河村市長も控えめな笑顔で「庶民の政治をやってちょうよ」と近藤さんの肩をたたいた。

地域委員会(リンク [12]

 近年では、これまで地域で取り組んできた事柄のほかにも、様々な課題が出現しています。難しい地域課題の解決のためには、地域の事情に詳しい学区連絡協議会や町内会・自治会と、専門性を有するNPO、企業など多様な主体がお互いの強みを活かして、連携して取り組む仕組みが必要になってきます。
 そこで、「地域のことは地域で決める」という理念のもと、地域課題を解決するために、投票で選ばれた委員を中心に公開の場で話し合い、本市予算の一部の使い途を決める”新しい住民自治の仕組み”として「地域委員会」の創設を目指しています。

モデル実施の検証結果(リンク [13]
 こうした動きが、今後どのような流れになっていくか注目していきたいと思います。

[14] [15] [16]