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経済破局を超えて、新しい政治経済の仕組みへ 第17回 共同体の時代 現実直視した当事者が全てを担う事、それが社会再生の道

シリーズ第15回「日本人の可能性〜東日本大震災が顕在化させた縄文体質」では、復旧のために立ち上がった相馬救援隊などの活動の中に、日本人が持つ縄文精神の真髄、「様々な外圧に対する“当事者意識”の存在」を確認しました。 
第16回「縄文体質を持つ日本人だからできる実現可能性〜大震災を克服して〜」では、様々な外圧に対する当事者意識が、過酷な試練を背負いながらも「ふんばり」「支えあい」ながら自分たちの村や町を、自分たちの手で再生させようとする取り組みを紹介しました。 
 
この中で注目されるのは、家族単位(数人単位)ではなかなか立ち上げれず、家族を超えた集団(集落単位、中小企業)を基盤として、すばやく復興に向けて立ち上がっていることです。その象徴が、社員30名の八木澤商店です。三つのスローガン“生きる”“共に暮らしを守る”“人間らしく魅力的に”を掲げて復興への第一歩を踏み出しました。「共同体」こそが基盤なのです。 
 
当事者意識に目覚めた男たちががんばっている一方で、女たちは炊き出しや、日常生活面において「ふんばり」「支えあい」の主役となっています。女が真の力を発揮するからこそ、男たちは過酷な闘争に立ち向かっていけるのです。 
 
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一人暮らしのお年寄りに食事を届ける沖縄県高齢者協同組合の配食センター「配彩那覇」のメンバー、「琉球新報」から借用 
 
今回がシリーズの最終章となります。縄文文明の精神を発揮し出した日本人は、縄文精神の真髄である“当事者意識”に立脚して、すべての仕組みの源となる「共同体の時代」(21世紀の新しい社会づくり)へと進んでゆく可能性について紹介していきます。 
 
1.現実を直視して、人々の活力を再生する 
2.女が真の力を発揮し始めた 
3.出資、経営、労働を一体化した働き方 次代は共同体の時代 
 
いつも応援ありがとうございます。 
 
 
 


1.現実を直視して、人々の活力を再生する 
 
『クレド』はラテン語で「志、約束、心情」を表す言葉という意味です。『日本クレド株式会社』(HP)は、このクレドを企業理念に適用して、様々な企業の活力再生コンサルティングを行っている企業を紹介します。
意識潮流を捉えて人々の活力を再生する企業−日本クレド株式会社

現在、多くの企業経営者や社員が「活力の低下」に悩んでいます。特に、世代間での温度差が激しいようで、「どうすればいいんだ・・・」と頭を悩ませる方も。 
このように、なかなか突破口を見出せない社会だからこそ、『実態はどうなっているの?』という現状分析が必要なのです。 
 
日本クレドによる現代社会の分析は、 
 
「暮らしを良くするために必死で働く」といった価値観は、もう過去のものなのです。過去の理念を携えて創業した企業は(ほとんどの企業がそうだと思いますが)、ここへ来て、新しく変わってしまった価値観の従業員に対して、給料などの金銭的満足感ではなく、純粋な「働く満足感」を与え、しっかり働けるようにすることが必要になってきます。そのための「戦略・対策」というのが必要な時代なのです。 
 
共同体 類グループより引用 [1]

ここの企業の取り組みは、働く人が本当に充足できることは何かという現実を直視して人々の活力を再生しようとしています。 
 
次に「反常識経営」という理念を持った、一風変わった企業の取り組みを紹介します。
未来工業の「反常識経営」—半専任での統業参加へ

製造業の現場でも、社員の活力を引き出す面白い試みで、業績を伸ばしている企業があります。後発メーカーである不利さを逆手にとって、「反常識」で社員全員が「常に考える」という仕組み、体質を作っているところが、参考になります。 
 
しかも、「反常識」の経営で確保された多くの休日、仕事(専業)外の時間で、社会的な活動を積極的にしている社員もいるようですし、仕事のアイデアが浮かぶのも、仕事外の時間でのことが多いそうです。 
 
これからの新しい社会統合で、半専任でみんなが社会統合に関わっていく、認識形成上では、皆が「常に考える」ことで、仕事(専業)で活力を挙げて成果を出し、そして、仕事外の時間を多く作り出すことは、とても可能性を感じさせます。そして、それが、専業と統業のプラスのスパイラルを生み出していくのではないでしょうか。 
 
「ホウ・レン・ソウ」という一般企業での常識も未来工業は通用しない。報告する本人が一番状況を把握しているのだから即座に自分で判断せよ、ということだ。全国には本社が知らないうちに設立が決まった営業拠点がたくさんある。最終的には社長の承認が必要だが、各地の社員が判断することでスピードを生んだ。「社員の力を100%引き出せば成果は後からついてくる」ので目標は立てさせない。 
 
るいネットより引用 [2]

一般的な私権企業では「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)」がなければ企業としての体裁が保てません。 
 
社員一人一人が「自分達の会社は、自分達が責任を持って運営してゆく」という共同体としての共通認識に立って、本当に社会が求めているものは何かを、常に追求しているから成績も伸ばすことが可能となっているのでしょう。また、そこで生み出した時間を社会統合活動に活かすことは素晴らしいと思います。 
 
2.女が真の力を発揮し始めた 
 
次は、充足の実現基調、闘争の実現基調、両者相まって実現基調を形成している企業や集団を紹介します。 
 
リクルートの女性力 〜会社の「空気」は女で決まる!

私が思う、「リクルートの女性力」は「担当事業を絶対に成功させる、成長させる!」という”徹底した当事者意識と圧倒的なコミットメント”を、誰もが、それが当然、という感覚で持っていることだと思います。 
 
もう、10年近く経ちますが、入社当時、当時かもめ編集にいらしたNさんはじめ、先輩の女性たちが銀座で歓迎会をしてくださったとき、途中まで、女子会でわーきゃーとミーハーな話で盛り上がっていたのが、気が付けば、最後は、どうやったらリクルートという会社がもっと成長できるか、来るネット時代に向けて、会社が何をしていくべきか、みんなが熱く語っていて、すごくびっくりしたし、これがリクルートっていう会社なんだ、って感動したのをすごく覚えています。 
 
『みんながここで働きたいと願い、みんなが成果を出せる「会社の空気」をつくること』は、老若男女問わず、みんなが充足、安心、安定して、集団として戦っていける組織作りの根本ではないかと思います。男原理である闘争の背後には、女原理の充足、安心、安定が基盤にある。だからかっていけるのではかなろうかと思います。 
 
るいネットより引用 [3]

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女が真の力を発揮する企業や集団は、古い私権社会の中であっても成長をしています。充足存在である女たちが、周りを安心させ、明るく、男たちのやる気を引きだすことが出来るからです。 
 
次は、頑張るママさんたちの登場です。 
 
子供と一緒に働けるカフェの事例:Mama’s Cafe(ママズカフェ)

岐阜県の多治見市にMama’s Cafe(ママズカフェ)という一風変わったカフェがある。 
 
何が変わっているかというと、お客さんがほとんど子連れのママ(お母さんや女性限定というわけではなく一般客の入店も可能)。従って店内は騒々しいというか元気いっぱいではちゃめちゃ、というのは店名から想像のとおり。更に、離乳食メニューあり(しかも中期、後期、完了期と3段階!)という子育て経験のある親にとっては痒いところに手の届く配慮。 
 
しかし、なによりの特徴は、店員さんたちが実は「“子連れ”で働いている」ということである。 
 
Mama’s Cafeの事業は、「孤独な子育てをなんとかしたい」、「子供と一緒に働ける場を作りたかった」、「母親の働く姿を誇りを持って子供に見せたい」、「子育てママの心を少しでも楽にできる時間と空間を提供したい」、「社会参画のできる場所がほしい」・・・そんな思いをカタチにしたものである。(平成14年度の経済産業省「市民ベンチャーモデル事業」に選ばれ、平成16年8月に特定非営利活動法人になる) 
 
カフェ・ド・ノイエより引用 [4]

日常生活の場面で、気付いたことや実現したいという気持ちを、素直に周りの仲間たちに語りかけることができるのも、女の人が得意とするところです。普通のママさんたちの原初共同体的な活動は今後も注目していきたいところです。 
 
現代の社会全体が閉塞した状況の中、「女が真の力を発揮」し、共同体的な組織基盤をつくり始めています。まさに、次代は共同体の時代です。

私権意識が衰弱した現在において、もはや企業も社会も、力による序列原理では統合不可能な状況になっているのだと思います。 
 
また一方で中小企業を中心としてですが、従業員自ら、自分達の組織をどうするかという当事者意識を持って、具体的な現業課題に取り組んでいる事例は少なからず見受けられます。 
 
これこそが、共認原理社会における、企業や社会の統合様式である共同体的な組織体制の萌芽ではないかと思います。 
 
そしてこれらの事例の大きな特徴は「場」さえ与えられれば、従業員も自らの組織について当事者意識を持って考えるということです。つまり従業員自身も収束不全→秩序崩壊から課題探索が始まっているのです。 
 
そしてその共同体的な組織体制の基盤となるべき力こそが、「女原理」発の充足基調の引力なのだと思います。まさに次代は共同体の時代なのではないでしょうか! 
 
るいネットより引用 [5]

3.出資、経営、労働を一体化した働き方 次代は共同体の時代 
 
訪問介護サービスや子育て支援事業などを展開し、那覇、恩納、名護に事業所を構え、調理や配達の仕事に取り組んでいる「配彩那覇」は、その活動にふさわしい制度を追求しています。 
 
出資、経営、労働が一体となる『労働者協同組合』の法制化です。 
 
働く人が出資し、事業を起こす労働者協同組合(ワーカーズコープ)を法制化する動き

働く人が出資し、事業を起こす労働者協同組合(ワーカーズコープ)を法制化する動きが県内でも進んでいる。10日の県議会で「協同出資・協同経営で働く協同組合法(仮称)」の早期制定を求める意見書案が可決される見通しだ。全国的に福祉や介護事業が広がり、県内も県高齢者協同組合がお年寄り向け配食サービスを展開している。景気後退や非正規雇用の増大が続く中、労働者協同組合の法制化による「雇われない働き方」が受け皿として期待されている。  琉球新報

株主や経営者の権限で運営方針が決まる企業と違い、労働者協同組合は出資、経営、労働が一体で、話し合いの中で運営方針を決めていく。法制化が実現すれば、社会的な信用度の高まりや事業内容の広がりも期待され、今後の動きが注目される。「琉球新報」
労働組合法は雇用されている労働者の立場を守る法ですが、それでは労働者協同組合法とは一体どのような位置付けのものなのか見てみます。 
 
協同組合法:出資・経営・労働を一体化した働き方をしている人たちは10万人を越えている

■どんな法律なのですか 
 
この法律は、協同労働の協同組合、つまり「出資・経営・労働を一体化した協同労働を行う組織」に法人格を与える法律です。 
 
■なぜこの法律が必要なのですか 
 
現在、出資・経営・労働を一体化した働き方をしている人たちは、労働者協同組合、ワーカーズ・コレクティブ、農村女性ワーカーズ、NPO、障がい者団体などに広がり、10万人を越えているとみられていますが、この働き方にふさわしい法律はまだありません。 
 
今の協同組合法をみても、農林水産業等の事業者(農地や山林等の所有者)による協同組合、消費生活協同組合など利用者の協同組合の法律はありますが、そこで労働する主体に焦点があたった法律はありません。生協などで働いている人も雇用労働者であり、一利用者としての組合員になれるだけです。ですから、どうしても、「協同労働」を位置づけた新しい法律が必要なのです。  
 
■この法律のポイントは 
 
「出資・経営・労働」を三位一体にした働き方のための法律で、働く人が組合員です。主体者=組合員となって働く、といった方がいいかもしれません。 
 
しかも、定款で定めれば、利用者や地域の人も組合員になれるようにしました。地域に必要な事業、公的な事業であればあるほど、働く人どうしが協同するのはもちろん、利用者や地域の人々や団体も主体者となり、みんなが協同して取り組むことが大事になります。そこで、利用者、地域の人々や団体も組合員となれる道をひらきました。 
 労働者協同組合(ワーカーズコープ)『ポイント解説 協同出資・協同経営で働く協同組合法』

共同体組織をつくり、自分たちのことは全て自分たちの力で解決していこうとする活動は、今まさに既成の法制度の枠を乗り越えて、新しい制度をつくろうという画期的な取り組みにまで進化しています。
気象情報会社の(株)ウェザーニュースは、社員全員が出資して会社の危機を乗り越えています。 社員全員が会社の問題は、全て自分達の問題であるという意識をもった共同体の一つと言えます。
社員は一緒に闘う仲間 〜㈱ウェザーニュース〜

私の場合は、気象情報会社という、他者のために役立てる事業と巡り会えたことは大きかったですが、起業してみてわかったのは、自分ひとりでは何もできないということ。そういった意味で、いつも“金”儲け、ではなく、“人”儲けを心がけてきました。
これからの経営に多数決のデモクラシーなんか要らない。メリットクラシー=一番大事なことを優先して行なうスピードあるマネジメントじゃないと。
たとえば、以前うちが銀行の貸し渋りにあった時、社員全員から5万円ずつ借りて乗り切ったんですよ。会社という一緒の船に乗って戦う仲間に対して、私が最適だと思える提案をしたら、みんな二つ返事で協力してくれた。
これがメリットクラシーですよ(笑)。いろいろ話しましたが、自己実現の先にあるのは他者実現。起業して目指すべきは大堅企業。そこに自分を含め、つくる人、売る人、数える人の3人をそろえて、挑戦することです。
DREAM GATEより引用 [6]

 
 
これからの企業再生、集団づくりが、経営と労働(生産)を一体化させる『共同体』原理に大きくシフトしていくことは必然です。そして、その事に気づき、具体的に実践していく企業、集団が活力を維持し、勝っていきます。 
 
リーマンショックによる古い市場原理の社会が破局をむかえました。その破局の中から、あるいは大震災という外圧の中から、いま始まっている社会の転換、社会の再構築は、『共同体の構築』を基盤として進んでいくのです。 
 

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