2011-06-29

中国の国家と市場に潜むもの 最終回 :中華序列体制と流民の帝国・・・それでも残る共同性!?

このシリーズ最終回です。今回は、中国の国家と市場の構造について、いままでの追求の成果をまとめてみたいと思います。
↓いままでの投稿群です。
中国の国家と市場に潜むもの〜 プロローグ
中国の国家と市場に潜むもの〜(1)戦国時代に始まった市場拡大→貨幣経済と村落共同体の解体〜
中国の国家と市場に潜むもの〜(2)巨大帝国「唐」の形成過程とその背景にあるシルクロード
中国の国家と市場に潜むもの〜(3)朝貢制ってなに?
中国の国家と市場に潜むもの〜(4)朝貢貿易ってなに?
中国の国家と市場に潜むもの〜(5)明代の海禁政策がもたらしたもの
中国の国家と市場に潜むもの〜(6)モンゴル・イスラム勢力に組み込まれたグローバル化時代
●1.諸部族の覇権闘争と中華序列体制の構築
古代から多数の部族が混在し、かつ度々北方遊牧民の南下侵入が繰り返された中国。
彼らは、熾烈な戦争を繰り返して、中国の支配権を巡って争った。
彼らは、元々遊牧部族出身であり、遊牧をやりながら、交易や時には戦争・略奪も生業としていたが、中国の覇権を握ることで、巨大な帝国を握ることができ、かつ周辺競合部族に睨みをきかすことができた。
まずはこの図解を見てください。
%E5%90%8D%E7%A7%B0%E6%9C%AA%E8%A8%AD%E5%AE%9A-2.jpg

にほんブログ村 経済ブログへ


※上記の体制を正当化する思想が、礼・徳や儒教。
※東洋に特徴的な強烈な序列意識と観念は、中華序列体制によって作られたものである。当然その序列意識は、周辺の中小国家に伝播していく。日本の江戸時代の幕藩体制も江戸幕府という小中華体制とも言える。(東洋に特有な家観念や父系観念の強さは、その末端形か?)
※中国の国家体制、とりわけ官僚制が整備されていくにつれ、中国の貴族・地主層もそこに収束し、組み込まれていく。それが中華帝国独特の二重支配体制(王朝は遊牧民、その下の支配層は貴族・地主)ともいうべき体制を作り出している。王朝が変っても官僚制は変らない。
●2.共同体を失った流民の群れが歴史を動かす
上記のように古代から中国で繰り返された戦乱とその結果による農民収奪や飢饉は、多数の死者や流民を生み出し、土地に根付いた共同体や氏族を解体していった。
土地を失い共同体を失った彼らは、都市に流入し、新興宗教や架空観念に収束し、それを結束軸にして、王朝末期になると反乱を起繰り返した。
 
Ex:
・2世紀 後漢末期の黄巾の乱
道教に基づく宗教結社の「太平道」の乱。各地で反乱・掠奪。人口が激減。
・12世紀 南宋の均産教(貧富の差をなくそうという思想)。
農民一揆として暴れまわり、人口が激減。
・14世紀 元末期の紅巾の乱
仏教の白連教の一派の反乱。反乱軍の将軍だった朱元璋が明を建国。
・19世紀 清末期の太平天国の乱(文字通り「太平天国」の実現を目指した反乱)
ここでも人口が激減
ここに見られるように、既に古代の2世紀ごろから既に流民化・共同体の喪失は始まっていたと見られる。彼らは、本来安定を望んでいるはずが、架空観念に収束したがゆえに、扇動され反乱を起し、秩序崩壊を繰り返し起した。
流民性を強くもっているのは農民だけではない。
黄巾の乱と同じ2世紀後漢の末期〜三国史の時代には、人口の8割が死んだという(そんな想像もできない時代が中国には繰り返し起きている)。そんな時代に、血縁に基づかない「幇」が成立している。彼らは“義”の契りで兄弟分となり、固い結束を誇る。
彼らは仲間内では“義”や相互扶助を規範としているが、仲間外に対しては、何をやってもいい規範を持っており、やくざやマフィアに近い感じだろう。
三国史の3人(劉備・関羽・張飛)もこのような「幇」の契りで結ばれていたという。
中国史上度々反乱を起す塩商人の結社や、華僑の幇や青幇・紅幇など、結社は多く存在し、表向き義理兄弟を掲げながら利益を求め結びついていた。
●3.流民化した農・商人の流出によりさらに拡大した中華帝国
古代からこれだけ混乱を極めながらも、中国がなんでこれだけ大きくなっていったのか不思議だった。
しかし、中華の民が共同体を失った流民で構成されていると考えるとすっきりする。彼らはより豊かな土地や商売できる土地を求めてどこにでも行くのだ。そしてそれを後追いする形で、中華帝国の領土が広がっていく。
中華を支配した元や清(女真族)は、彼らの祖地であるモンゴルや満州に漢民族が入植することを禁じていた。それは漢民族が住み農地化して彼ら戻るところがなくなるのを恐れたからだ。それでも、広大な満州にはどんどん漢民族が入植して今では中国になっている。
チベットやウイグルも今では中国に編入されている。
漢民族の流出と中華帝国の拡大・・・・阿吽の呼吸というか、私権を求めて相互に拡大していく感じ。
そう考えると、現在華僑が多く元が流通している東南アジアなどは、すでに準中華帝国の域に入っているのではないだろうか?ロシアはシベリア東部の中国人の増加ににかなりの危機感を持っている。
また、近年日本での中国人は急増している。これは非常に危険な兆候という感じがするのは考えすぎだろうか?(・・・・原発事故で一時いなくなったが今ではほとんど戻っている。)
●4.中国に共同性・集団性を持つ人々は残っているのか?
このシリーズで特に注目したのは、中国江南地方の豊かさ。経済的に繁栄した王朝(唐や宋・元・明)は、いずれも江南地方を手にいれているからです。
中国の特産品である陶磁器や絹織物も江南地方が産地といわれている。精緻な陶磁器を見ていると、江南地方の工業力は、日本人(縄文人)に近いものをもっているのではないだろうか?
交易国家という側面をもっていた中国の王朝は、この豊かで手先の器用な、江南地方を手に入れたことで、絹や陶磁器を輸出品として商品化できたのだ。
唯一の江南地方出身の王朝である明が徹底的な鎖国体制を取り、海禁政策を取ったのも、豊かな産物をわざわざ私貿易に任せたくなかったからだろう。
ほぼ江南地方だけを支配した南宋などは、経済大国だったが軍事的には最弱で、北方部族に相当な貢物をしていた。この事例などは、現代の日本にそっくり(勤勉な国民と再弱の支配層)だとも言える。
中国、特に南方に共同体がどの程度残っているかは、はっきりとは分からない。しかし中国の農民の割合はかなり高いし、流民化した人々以外にも地方には元々の共同体も残っているはずである。
現代の中国といえども、その経済発展は彼らの勤勉性に支えられているのではないだろうか。
★★★まとめ★★★
8回にわたり、中国の国家と市場に潜むものを追求してきました。
何が潜んでいるのか手探り状態できましたが、以上のように大きく3層存在していると考えられます。
①支配層(王朝を形成している層と、国家にたかる官僚・役人層)
②流民・華僑(私権追及のためにどこにでもいく層・根無し草。賄賂を使って①と結託)
③共同体を残す層(特に中国江南から南方の農村地帯)

また、東亜の覇者による序列国家体制という視点からは、大きく中国の近隣諸国(韓国・日本・東南アジア)の支配層も、中華序列体制に組み込まれていると考えられます。
中国は、その方法論を持っているが故に、いまも軍事拡大と元経済圏の拡大に余念はありません。

日本の支配層も中華に対する序列意識(アンチとしての反中も含む)や属国意識(今は中華からアメリカに転じている)に囚われている。(ex日本の支配層は、外国の顔色をうかがってばかりで、なんら柔軟な発想ができていない。)
貧困が真っ先に消滅して、私権や序列意識に囚われなくなった日本人の特に若者、彼らが登場して初めてこの序列意識は、払拭可能になった。それが払拭されて初めて、日本の縄文的勤勉性も、中国に残る共同体も、その力を発揮できるのではないだろうか?時代の大きな転換期にいると思う。

List    投稿者 Hiroshi | 2011-06-29 | Posted in 未分類 | 8 Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2011/06/1644.html/trackback


コメント8件

 日本を守るのに右も左もない | 2012.10.10 22:16

「市場はもうウンザリ」⇒市場からの脱却が始まった

「私たちは騙され続けてきた。しかし今や、洗脳からの脱却が始まっている」で述べた論点は、次の通りです。 【1】近世以降、金貸しは国家を支配するため大衆の共認…

 Oakley | 2013.09.14 22:06

金貸しは、国家を相手に金を貸す | 近代市場の成立過程(20)〜最終回・シリーズまとめ

 MBT | 2013.09.16 19:30

金貸しは、国家を相手に金を貸す | 近代市場の成立過程(20)〜最終回・シリーズまとめ

 フルラ 財布 | 2014.01.08 8:31

金貸しは、国家を相手に金を貸す | 近代市場の成立過程(20)〜最終回・シリーズまとめ

 hermes 2013 | 2014.02.02 1:28

hermes outlet in delhi 金貸しは、国家を相手に金を貸す | 近代市場の成立過程(20)〜最終回・シリーズまとめ

 wholesale bags | 2014.02.09 16:38

金貸しは、国家を相手に金を貸す | 近代市場の成立過程(20)〜最終回・シリーズまとめ

 Cheap Louis Vuitton Handbags UK | 2014.03.12 6:52

金貸しは、国家を相手に金を貸す | 近代市場の成立過程(20)〜最終回・シリーズまとめ

 hermes yellow wallet | 2014.03.13 7:54

hermes bags collection manager 金貸しは、国家を相手に金を貸す | 近代市場の成立過程(20)〜最終回・シリーズまとめ

Comment



Comment