- 金貸しは、国家を相手に金を貸す - http://www.kanekashi.com/blog -

米国債務問題の今後を読み解く 2.ティーパーティ(茶会)派の動向〜

slide_37369_317153_large%5B1%5D.jpg

 
8月上旬に起こった米債発行上限引上げ問題で、財政削減を強行に主張し、議会を膠着させた共和党の一派:ティーパーティ(茶会)派

 
‘08年リーマンショック後の全米各地で広がったティーパーティ運動から勢力を拡大してきた、この“茶会派”とはどんな勢力なのでしょうか?
今回は“茶会派”に迫りたいと思います

 
続きを読む前に、ポチッとお願いします


●ティーパーティ(茶会)運動の発生と展開
 
ティーパーティ(茶会)運動は、リーマンショック後2009年2月から拡がっていったようです。
 

最初のティーパーティの集会は2009年2月17日にシアトルで開かれた。二〇代の女性教師がツイッターを通してオバマ政権を批判する集会を呼びかけたところ、お互いにまったく無関係の約120名が集まった。さらに2月19日にテレビ局CNBCのコメンテーターが、オバマ政権の金融機関救済や史上最大の景気刺激策、サブプライム救済策は政府の肥大化と権限の拡大を招くと危機感を抱き、集会を呼びかけた。それがボストン・ティーパーティの設立へとつながった。ツイッターなどITを駆使して集会を呼びかけることで多くの人を集めている。オバマ大統領が選挙でインターネットやユーチューブを駆使して運動を展開したのを逆手に取って、ティーパーティ運動は拡大していく。

syukai.jpg
集会の様子

Bloggers Today「ティーパーティ運動とは何か:その発生と展開、政策を明らかにする」 [1]

また、2010年のこの事象を発端にティーパーティに注目が集まっていきました。

ティーパーティーが注目を浴びたのは、2010年1月に行われたマサチューセッツ州の補欠選挙である。E.ケネディ上院議員の死去に伴う補選は、大方の予想をくつがえし、ティーパーティーが支持する共和党ブラウン候補が勝利した。60年以上も守り続けてきた民主党ケネディ王国の牙城が、発足1年にも満たない「草の根保守勢力」によって崩されたのである。
kotobank > ティーパーティーとは [2]

ティーパーティ運動は、自然発生的に広がった運動に見られていますが、実は、共和党の戦略を担当する人たちにより創られたもので、その中心的役割を担っているのは、フリーダムワークスという元下院院内総務のリチャード・アーミーによって運営されている組織で、FOXニュースによって大々的に宣伝されているところも大く、「人工芝(草の根を装った政治イベント)」という声もあります。
ソーシャルメディアで広がって行った辺りは、最近の中東やイギリスの暴動とも似た始まり方なのが、気になりますね★
 
 
●名称の由来:「ボストン茶会事件」とは?
 
ティーパーティ(茶会)の名前の由来は、18世紀に起きた「ボストン茶会事件」からきているそうです。どんな事件だったのでしょうか?

1773年、英国政府の植民地政策に反発するボストンの急進派が、停泊していた東インド会社の船を襲撃し、茶箱を海に投げ捨てた事件で、印紙税法やタウンゼンド諸法の制定とともにアメリカ独立戦争の契機となった。

tumblr_lg6de2NsaU1qz5ug2o1_400%5B1%5D.jpg

kotobank > ティーパーティーとは [2]

アメリカが自由を勝ち取る独立戦争の契機となった事件としてプラスのイメージがあり、今回のティーパーティの主張とも重なり合うことからこう呼ばれることになったのでしょうか☆
 
 
●茶会派の思想と主張
 

ティーパーティーの公式ホームページによると、ティーパーティーの基本理念・政治思想として、
・財政責任(Fiscal Responsibility)
・合憲的な小さな政府(Constitutionaly Limited Government)
・市場主義経済(Free Market)

の3点が謳われています。そして運動の目的は、これらの思想を市民に広め、教育し、民意を動かすことで、これらの理念を政策に反映させていくこととしています。
Ocean & Love「アメリカに急拡大する「ティーパーティー運動」 その(2)」 [3]

茶会派は、オバマ政権の大型景気対策や医療保険制度改革などを批判し、増税なき「小さな政府」を掲げています。また、リバタリアニズム(自由至上主義:個人の自由を最大限尊重すべきとする政治思想)の傾向を持つようです。また、白人至上主義(8割を白人が占める)、キリスト教原理主義の傾向も見られます。中絶反対などの倫理問題の主張もありますが、対立を避けて、上記3つを結集軸にしています。
 
 
●茶会派を構成する人々(勢力)
 
各地のティーパーティ組織は2000〜3000あると言われています。統一組織はないけれど、運動が拡大するにつれて「ティーパーティ・ネーション」「ティーパーティ・エクスプレス」「ティーパーティ・パトリオット」「フリーダムワークス」といった大きなネットワークを持つ団体も登場しています。

・ティーパーティー・パトリオット(愛国者)(http://teapartypatriots.ning.com/)
は、1000を超える支部と、13万人の会員を擁する全国組織です。2010年4月15日の「税の日」には全国で560に及ぶさまざまなイベントを展開しました。共和党の前院内総務(Majority Leader)ディック・アーミーが率いる保守派の非営利団体「フリーダム・ワークス」と連携し、早くも11月の中間選挙に照準を合わせ、民主党議員を落選させるための選挙キャンペーンを展開しています。
・ティーーパーティー・エクスプレス(http://www.teapartyexpress.org/ )
は、オバマ政権の赤字財政や増税、巨大化する連邦政府に抗議しながら、全国30〜40都市を回るバスツアーを行っています。このツアーは保守系組織「Our Country Deserves Better」によって運営されていますが、この組織は、サクラメントの共和党系コンサルタント会社Russo, Marsh, and Associatesによって創設され、バックアップを受けているといわれています。
・ティーパーティー・ネイション(http://www.teapartynation.com/)
は、自身のホームページに次のように書かれています。「建国の父によって書かれている『神によって個人の自由が与えられている』という考え方に賛同する人々の集まりです。私たちは、小さな政府、言論の自由、憲法修正第2条(市民の武器の所持の権利)、アメリカ軍、そして国家と国境の安全保障を信条としています」。2010年2月に開催された全国大会では、2008年大統領選挙の副大統領候補だったサラ・ペイリンがメインスピーカーでした。大会の参加費用は549ドルと高額で、ペイリンは10万ドルという報酬を受け取ったことで批判の対象となりましたが、その後、受け取った金は保守派の活動のために寄付すると発表しています。
Ocean & Love「アメリカに急拡大する「ティーパーティー運動」 その(2)」 [3]

上下院では、米国議会での茶会派は全て共和党に属し、上下院535名のうち60名の議席を占めています。これら茶会派議員たちの63%はテキサス、フロリダ、ルイジアナ、ジョージア州などの南部出身で、地元で家族が農場、牧場、小さなビジネスを経営している議員が多いようです。
 
次に、茶会派の主要人物を見ていきたいと想います☆
 
ロイター通信「情報BOX:2012年米大統領選、共和党候補者の横顔」 [4]より引用します。
 

<ロン・ポール氏> 
テキサス州選出の下院議員で、反戦共和党員。2008年大統領選では、共和党候補者指名争いに出馬した。「ティーパーティー」の知的ゴッドファーザーとして知られる。
同氏が主張する大幅な赤字削減や小さな政府は、下院で共和党が多数派を奪還した昨年11月の中間選挙の争点となった。 

Rand_Paul2.jpg

リバリタリアンの代表的政治家で、FRB廃止論者でもあります。ポールのニックネームは“ドクター・ノー”。彼の医学博士としての肩書きと、それから『提案された法案が、明確に、合衆国憲法に沿ったものでない限り、決して法案に賛成票を投じない』という彼の強固な態度に由来しているようです。
 

<サラ・ペイリン氏> 
大統領候補に出馬するかどうかはまだ表明していないが、インタビューでは8月か9月に決断をすると述べている。
2008年大統領選で副大統領候補だったことから知名度が高く、出馬表明が遅くてもさほど不利にならないとみられている。
「ティーパーティー」系議員を代表する存在で、保守系議員からは強く支持されているものの、全般的な有権者の支持率は低く、最終的にオバマ大統領に対抗できないとの指摘が、党内の一部から出ている。 

palin.jpg

ペイリンは、国際事情に疎く「アフリカを大陸ではなく国名だと思っていた」との発言が暴露されたり、対露政策を問われて「アラスカからはロシアが見える」「プーチン氏が渡米するときはまずアラスカを通る」などの当を得ない応答をするなど、様々な暴言(!?)が話題になっているようです。

<ミシェル・バックマン氏>
保守派の草の根運動「ティーパーティー(茶会)」系議員の中心的存在。6月13日にニューハンプシャー州で行われた討論会で、正式に出馬表明をした。
元税務弁護士。2006年にミネソタ州からの初の女性下院議員となる。 
財政規律を重視し、宗教的に保守の立場をとる同氏は、政策が類似しているサラ・ペイリン前アラスカ州知事が出馬しないと表明した場合、ペイリン氏の支持票を獲得できる 
最近の世論調査では、保守派色の濃いアイオワ州でトップの支持率を獲得した。一方、ニューハンプシャーやフロリダ州では、同氏の強い宗教観や財政問題に対する考え方がより中道派の共和党には支持されない可能性がある。

Michel_Backmann.jpg

バックマンもペイリンと同じく、失言を繰り返しているようです。インタビューで自分の出身地について触れたバックマンは、映画俳優のジョン・ウェインと、同名の連続殺人犯を間違えて「ジョン・ウェインも私も米アイオワ州ウォータールーの出身であることを有権者に知ってほしい。彼と私は同じ精神を共有しているのです」と話したそう。。。
 
— – 
どの人物も人気取りに走っていたり、主張が偏っていたりと、大きな影響力を持つ程幅広い支持を得るまでには至らないと見られていましたが、今年に入ってこうした過激派主張が米際をデフォルト寸前まで追い詰めるほど力を持ってきたのでしょうか?
 
 
●次期大統領選への動き
 
現在、米国議会は、このように急速に勢力を強めてきている茶会派。その勢いに乗って、来年の大統領選にも続々と立候補を始めています。
 
2010年中間選挙で共和党が下院の過半を奪還し(上院は民主のねじれ議会)、共和党が巻き返している段階です。
 
現在、共和党の大統領指名候補は、
リック・ペリー(テキサス州知事)、ミット・ロムニー(08年も出馬)、ミッシェル・バックマン(★茶会派)、ジョン・ハンツマン、サラ・ペイリン(★茶会派、未表明)ロン・ポール(★茶会派)、ニュート・ギングリッチ、リック・サントラム、ハーマン・ケイン
で、3名の茶会派が立候補する可能性があります。現在はリック・ペリーが最有力と見られています。
 
次期米大統領選は、年前半に共和党・民主党の指名争いがあって、11月に共和党民主党代表の一騎打ちとなります。
 
この茶会派候補が勝ち、大統領になったら、どうなるのでしょうか?米経済は?ドル米債は?FRBは?2012年が楽しみです。

[5] [6] [7]