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エネルギー市場はどうなっている?(4)〜エネルギー産業をとりまく金貸しの支配構造【原子力技術編】

・エネルギー市場の支配構造を明らかにするこのシリーズ。今回も前回に引き続き、原子力産業を取り上げます。
 原子力発電プラントはロスチャイルド系のアレヴァ−三菱重工、ロックフェラー系の東芝−Westinghouse(ウェスティンハウス・以下WH)とGE−日立の三大プラント連合及びロシアのロスアトム(Rosatom)で占められ、韓国等もこれらの企業と技術提携しながら自国や他国のプラントを受注しています。
 原子力産業は資源だけでなくウランをエネルギーに転換するまでに様々な工程があり、高い技術力を要します。したがって各工程毎にノウハウをもつ企業が存在します。それぞれの工程にどのような企業が存在し、さらにその背後の支配構造に迫っていきます。
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・上の図はウランが採掘されてから発電されるまでの工程です。
参照:東京電力 [1](現在停止中)

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では「転換」から使用済み燃料の再利用を含めた原子燃料サイクルの企業群を工程別に見てみましょう。
データは電気の情報広場 [2](2010年10月現在)を中心に引用しています。
・転換
 転換は、ウラン235の濃度を高める「濃縮」の実施に必要な工程で、粉末状のウラン精鉱(イエローケーキ)をガス状の六フッ化ウランUF6にします。

1位 ロシア ROSATOM 2.40万tU/年
2位 アメリカ ★ConverDyn 1.76万tU/年
3位 フランス ○COMURHEX 1.40万tU/年
4位 カナダ ○CAMECO 1.25万tU/年
5位 イギリス ★Westinghouse(WH) 0.60万tU/年
6位 中国 中国核工業集団公司 0.04万tU/年

ConverDyn社はロックフェラー系のGeneralAtomic社とモルガン系のHoneywell社の共同出資によって作られた会社です。COMURHEX社はアレヴァの子会社、CAMECOもアレヴァと関係の深い会社です。
社名の前の記号は★がロックフェラー系、○がロスチャイルド系の企業です。
上位6社でみればロスチャイルド、ロックフェラー、ロシアがほぼ拮抗し三つ巴の様相です。



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・濃縮
原子力発電所では核分裂しやすいウラン235の割合(濃縮度)が3〜4%程度のウランを燃料として使用しています。天然ウランにはこのウラン235が0.7%しか含まれていないため、この割合を高める工程が濃縮です。

1位 ロシア ROSATOM 1.50万ISWU/年
2位 英蘭独 ○URENCO 1.25万ISWU/年
3位 アメリカ ★USEC 1.13万ISWU/年
4位 フランス ○EURODIF 1.08万ISWU/年
5位 日本 日本原燃 0.11万ISWU/年
6位 中国 中国核工業集団公司 0.10万ISWU/年

濃縮度を70%以上にすると原爆に使えるため、転換〜濃縮の技術は核保有国が押さえているようです。ロシアは冷戦時代核開発で濃縮技術を高度化させ、今や世界をリードする技術力を持ち、欧米の各企業も劣化ウランの再濃縮などの提携を進めています。
EURODIFはアレヴァの子会社、日本の技術もアレヴァ社との提携です。
生産量だけなら合計するとURENCO、EURODIFのロスチャイルド系企業がリードしているように見えますが、ロシアの生産力に頼っている状況ですので制覇しているとはいえません。
なお、日本は独自に濃縮技術を開発しましたが転換設備がなく、たとえ国内でウランが産出されても自力で燃料に転換できないため欧米に頼らざるを得ない状況に封じられています。


・ウラン燃料加工(軽水炉)
粉末状の二酸化ウランを燃料棒のペレットを成型加工する過程。
1位 フランス・FBFC、2位 アメリカ・GE 以下日本にも三菱原子燃料、原子燃料工業などがありますが、アレヴァ社やWH社が筆頭株主になっており、ここではアレヴァ、WH、GEおよびロシア(ROSATOM)の系列毎に合算しています。(※IAEAホームページを元に独自に推計)

1位 ○ALEVA系 4090t/年
2位 ★WH系 3014t/年
3位 ★GE系 2314t/年
4位 ロシア(ROSATOM) 1620t/年

ロスチャイルドとロックフェラーが拮抗しているようです。
ロシアは原子力での発電量が少なく、他社に比して低くなっているのでしょうか。


・再処理
 原子力発電所で使った使用済燃料の中には、核分裂しなかったウランと新しくできたプルトニウムが含まれています。これらのエネルギー資源を回収し、残りの核分裂生成物を廃棄物として処分に適するよう処理することを再処理といいます。
 回収されたウランとプルトニウムは、再び原子燃料に加工して利用します。


・MOX燃料加工
 再処理によって回収されたプルトニウムをウランと混ぜたMOX燃料(混合酸化物燃料)に加工し、現在の原子力発電所(軽水炉)で利用することをプルサーマルといいます。
再処理やMOX燃料加工は今やアレヴァと技術提携している動燃を始めほとんどがアレヴァの系列となっています。


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まとめ
さて、前回、ウランの採掘権は大半がロスチャイルドが支配する構造となっていましたが、改めて歴史を遡り技術の世界を振り返ってみます。
原子力発電の技術は元々原子力潜水艦の開発に始まり、GEとWHの2社が米国内で技術開発を競っていました。GEはGeneral Electricの名の通りエジソンが設立した電気照明会社を起源としています。その後、モルガン商会の支援の元、原子力分野にも力を入れ今や金融、エネルギー、医療など世界最大のコングロマリットへと成長しました。原爆を開発したマンハッタン計画に参画したことも有名です。
一方、WHはロックフェラーが電気分野でGEに対抗し、同様の成長を成し遂げてきました。
戦中、戦後間もない頃ロックフェラー、モルガンともにロスチャイルドの力には遠く及ばずロスチャイルドの戦略に沿って動いていたのではないでしょうか。原料のウランをロスチャイルドが押さえている状況でそれを兵器やエネルギーの主力に据えるような決断は彼らにはできないでしょう。
しかし、その後、ロックフェラーはロスチャイルドが仕掛けた冷戦構造の中で原爆を含めた軍事力を大きく成長させ、軍産複合体でロスチャイルドに対抗するほどの巨大資本を形成しました。おそらくGEやhoneywellなどもこの間にモルガンから買収したのではないでしょうか。
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一方、石油は押さえたものの原子力エネルギーを進めるロスチャイルドに対抗するためにはこの分野にも積極的に関わらなければなりません。先日もWHがアレヴァ=ロスチャイルドのお膝元フランスの原発12基分の蒸気発生器の更新事業を受注(32基分はアレヴァ)したように、WHやGEらがヨーロッパにもしっかり勢力を拡大し、ロックフェラーはロスチャイルドに拮抗するだけの勢力を築いてきました。今や両者の争いは単純に石油VS原子力とは言えない状況です。
また、原子力分野は企業や事業部門の売買が激しく、それぞれの思惑により業界が急激に再編されています。
さらに混沌とさせるのがロシアです。チェルノブイリ事故以来、技術力が劣ると思われていたロシアが、近年ウラン資源だけでなく技術力もあることがわかり、各国も提携を求める時代になりました。
(元々はアメリカから濃縮技術を密かに伝えたのがロスチャイルドだと言われています。※参考:原子力産業のしくみもロスチャイルドが作った [3]
冷戦構造がロックフェラーを台頭させる結果となったため、ロスチャイルドがソ連を崩壊させ冷戦に終止符を打ちました。しかし、その後、プーチン=KGBを中心とした民族派が高い技術力や豊富な資源を背景に自力で勢力を拡大し対抗してきたのではないでしょうか。
ウラン資源を牛耳るロスチャイルドに、技術で対抗してきたロックフェラー、資源と技術を併せ持つ新興勢力として侮れないロシアと三者三様で覇権争いをしているのが原子力エネルギー分野だと思われます。
次回は石油や天然ガスの支配構造に迫ります。

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