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エネルギー市場はどうなっている?(5)〜石油利権を支配したロックフェラーと、それを入口、出口両方から切り崩したロスチャイルド

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エネルギー市場の支配構造を明らかにするこのシリーズ。
 
今回のテーマは石油です。
 
エネルギー市場はどうなってる?2 エネルギー資源の生産地・生産量・埋蔵量 [1]」では、国別の石油資源の生産量や埋蔵量を押さえました。
さらに今回は、石油の支配構造の変遷を明らかにしていきたいと思います。
 
 
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■ セブンシスターズによる石油支配の確立
オイルショック前の1970年頃まで、世界の石油市場を支配していたのがセブンシスターズと呼ばれる7社の石油メジャーでした。
 
☆セブンシスターズ
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こちら [2]からお借りしました 
  
このセブン・シスターズのうち、5社(モービル、テキサコ、シェブロン、ガルフ、エクソン)がアメリカ資本で、残りの2社が、イギリス資本系のBP(ブリティッシュ・ペトロリアム)と、イギリスとオランダ資本系のロイヤル・ダッチ・シェルです。
また、エクソン、モービル、シェブロンは、ロックフェラーが創業し、1911年に34社に分割されたスタンダード・オイルが母体でした。
 
つまりセブンシスターズにおいては、アメリカ(ロックフェラー)の支配力が圧倒的に大きかったことがわかります。
 
 
ロックフェラーがここまでの支配力を持つに至った背景を追ってみると、、、
 
ロックフェラーはまず、アメリカでの石油事業(スタンダードオイル)によって、米国筆頭の一大財閥にのし上がりました。
 
その後、第一次世界大戦(武器の輸出)によって資本力を大きく拡大。その資本力を基盤に、まずは1928年に赤線協定(旧トルコとイラク領内の油田権益の独占と、油田の単独開発の禁止を取り決めたカルテル)を締結し、それまでロスチャイルド系のBP、シェル、CFP(後のトタル、フランス系)が握っていた中東石油利権の中に入り込みます
 
さらに第二次世界大戦でロスチャイルドが疲弊したところで1948年にこの赤線協定を廃止し、1954年に国際石油資本8社(セブンシスターズ+CFP)からなるイラン国際企業連合(通称コンソーシアム)を発足させ、中東全体の石油利権の分配をロックフェラー有利な条件で固定します。
 
 
このようにロックフェラーは、独占禁止カルテルを使って欧州ロスチャイルドが独占していた中東石油利権に食い込み、そしてロスチャイルドの力が弱まったところでカルテルを廃止し、コンソーシアムによって自らの利権の寡占化を図るという、実に巧妙な手口を使って、石油の流通を含めた中東中心の世界的な石油支配体制を確立しました。
 
 
☆以下が当時の石油利権の分配構造です。 
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こちら [2]からお借りしました
  
生産量世界第一位のサウジアラビアを100%押さえるなど、米ロックフェラーが圧倒的な支配力をもっていたことがわかります。
 


 
■ OPECによってセブンシスターズの締め出しに成功!
米ロックフェラーの石油支配に対抗するべく、1960年、イラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラの5カ国の原加盟によってOPEC(石油輸出機構)が発足、その後、他の中東諸国も次々にOPECに加盟します。
そして1973年のオイルショック前後で、OPECの力を基盤に中東諸国が一気に石油企業の国有化を計りました。
 
以下、当時の国有化の状況です。
 
・イラク
シェル、CFP、エクソンによって設立された「イラク石油」を、1972年に全資産と経営権を国有化。
 
・クウェート
BPとガルフによって設立された「クウェート石油」を、1974年に60%を国有化、1975年に残りの利権40%を取得し100%国営化。
 
・ベネズエラ
ベネズエラ国営石油会社「ペトロレス・デ・ベネズエラ(PDVSA)」を設立し、1976年に国有化を実施。
 
・サウジアラビア
シェブロン、エクソン、モービルによって設立された「アラムコ」を、1976年、サウジ国営石油会社「サウジ・アラムコ」によって国有化。
 
☆このようにして1972年からの数年で、自国にある欧米の石油企業を一気に国営化し、セブンシスターズを中東から締め出すことに成功します。 
 


 
■ 国営石油企業(新セブンシスターズ)の台頭
上記の流れを受けて1970年以降、石油企業の国営化が進行し、国営企業のシェアが急拡大していきます。その生産量はセブンシスターズを凌ぐほどになり、現在、ロシアや中国などの主な国営企業7社の原油生産シェアが合わせて30%、保有する油田の埋蔵量でも30%にまで増加しました。(これら国営企業7社は、新・セブンシスターズとも呼ばれています)
 
☆新セブンシスターズ
 1 サウジアラムコ(サウジアラビア)
 2 ペトロナス(マレーシア)
 3 ペトロブラス(ブラジル)
 4 ガスプロム(ロシア)
 5 中国石油天然気集団公司(CNPC)(中国)略称:“中石油”(ペトロチャイナ)
 6 イラン国営石油(NIOC)(イラン)
 7 ベネズエラ国営石油(PDVSA)(ベネズエラ)  
 
 
対するかつてのセブンシスターズは、生き残りをかけて統廃合(7社→4社)を進めるものの、そのシェアは縮小し続け、2000年には、その大手4社の世界における原油生産シェアは10%程度、保有する油田の埋蔵量シェアは3%にまで減少しました。
 
☆埋蔵量ベースでシェアをみると以下のようになります
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こちら [3]からお借りしました
 
☆セブンシスターズの統廃合の変遷
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こちら [4]からお借りしました 
 


 
■ ここまでを整理してみると、金貸し支配の攻防が浮かび上がってきます
以下の年表の流れと下記<参考>のなんでや劇場レポートを合わせて俯瞰すると、☆はロックフェラー、★はロスチャイルドによる仕掛けと考えると、スッキリ繋がってくるように思います。
  
1956 ☆イラン国際企業連合の設立→ロックフェラーの石油支配確立
1960 ★OPEC設立
1966 ★日本初の原発建設に着手(→1971年に完成)
1970 ★ローマクラブ → ピークオイル説の発表
1971 ☆ニクソンショック ⇒ 石油貿易をドル決済に固定(サウジアラビア)
1972 ★イラク石油国有化(→クウェート、ベネズエラ、サウジ等が続いて国有化)
     ★日本でLNG(液化天然ガス)を輸入開始
1973 ★第一次オイルショック
1978 ★第二次オイルショック
     ★イラン革命(→ホメイニー政権誕生)
1979 ☆スリーマイル島原発事故
     ☆イラクでフセイン政権誕生
1980 ☆★イラン・イラク戦争
 
 
つまり、この間の大きな流れとしては、1950年代に確立されたロックフェラーの石油支配体制に対して、ロスチャイルドは、OPEC設立→石油利権の国有化によって中東諸国の石油利権からロックフェラーを締め出し(入口からの切り崩し)、さらにピークオイル説→オイルショックによって石油から天然ガス(LNG)や原発へのエネルギー資源の転換(出口からの切り崩し)を推進することによって、入口・出口両方からロックフェラーの石油利権弱体化を図ったという構図になっていたと考えられます。
 
第一次オイルショック直前に、それを知っていたかのように日本で原発やLNGの導入が進められたあたりは、(ロスチャイルドによる仕掛けとして)いかにも暗示的ですね。
 
 
<参考>
’10年夏なんで屋劇場ノート1〜世界経済を「金貸し支配」という視点から読み直す(ドルショック→オイルショック) [5]
’10年夏なんで屋劇場ノート2〜劣勢のロックフェラー勢は日本篭城計画を進めるしかなくなった [6]
 


 
■ 追い込まれたロックフェラーが打った次の手は何か
このようにして、ロスチャイルドの策略と国営石油企業の台頭によって、ロックフェラーの確固たる権力基盤であった石油利権は相当弱体化しました。
 
追い込まれたロックフェラーは、次にどのような手を打ったのでしょうか。
 
原子力(ウラン)は「エネルギー市場はどうなっている?(3)〜エネルギー産業をとりまく金貸しの支配構造【原子力資源(ウラン)編】 [7]」の通りほぼロスチャイルドが押さえていたため、ロックフェラーは開発途上段階だった天然ガス市場(主にパイプライン系)に新たな活路を見出します。
 
 
その結果、現在ではエクソンモービルやシェブロンの資源開発に占める天然ガスの割合が大きく増加しました。
下のグラフは2010年の石油・天然ガス生産量の企業別ランキングで、緑が石油生産量、赤が天然ガス生産量です。エクソンモービルでは石油と天然ガスがほぼ半々になっていることがわかります。
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先行して天然ガスのLNG技術を開発し、日本へのLNG輸入を実現したロスチャイルドが、これにどう対抗したのかが気になるところです。
 
よって次の記事では、天然ガス市場の支配構造を明らかにしてみたいと思います。
 

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