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『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【8】説の紹介:民族意識主導説

チュニジアでは27日の選挙でイスラム政党が第一党となったようです。
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チュニジア、エジプト、リビアなど長期独裁政権が崩壊し、民主化を実現できた原動力は何か?
今回の民主化は欧州とアメリカの主導権争いや利権闘争の産物なのか?という分析を2回に分けて欧州主導説、及び米国主導説で分析してきました。
分析編の今回は3回目:「中東の春」の民族主導説をお送りいたします。
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民主化の「原動力」と言う意味では、複雑に利害関係が絡む欧州と米国、そして彼らの支援をうけて長期独裁を続けてきた政権に対し、明確に反対する国民の意思と決意が根底にはあると思います。
彼らの「イスラム民族としての誇り」が独裁政権を終焉させた原動力といっても過言ではありません。
特にチュニジアやエジプトはイスラム政党やムスリム同胞団は政治への参加が許されず、外国人の優遇と裏腹に国民への圧政が続き、特に貧困層に不満が溜まっていたようです。リビアでは社会主義的国家を標榜するカダフィはアメリカなどと裏で手を組む形で、長期独裁政権を維持してきたともいわれています。
このような各国独裁者の欧米勢力との結託や、近代化するなかで欧米化に対し、イスラム諸国では深い反発意識があるのだとおもいます。
例えばイスラム諸国での反米意識は、アメリカが同時多発テロの報復として、大量破壊兵器を持つとされたイラクに対し攻撃を開始した2003年ごろから、各国(エジプト、イエメン、シリア、バーレーン)で始まったデモにまでさかのぼります。
当時、同時多発テロの首謀者されたビンラディンはイスラム過激派とされたとこもあり、イスラム原理主義やムスリム同胞団に対するなんとなくの否定意識が世界に蔓延していたと思います。
しかしそもそものイスラム原理主義という考え方や、ムスリム同胞団などの活動は実態とは異なるようです。

■イスラム原理主義
イスラム世界で近代化・欧米化が進むとともに、ウンマ(イスラム共同体)の伝統が崩れていくのに反発し、聖典コーランの精神に立ち返って、シャリーア(イスラム法) に基づく本来のイスラム社会への復帰を求める思想および運動がおこりました。

■ムスリム同胞団
1928年、エジプトで結成されたスンナ派のイスラム教社会運動の団体。非合法だが、同国の事実上の最大野党。コーランを憲法とする国家の建設を主張。エジプト最大の政治団体となったが、ナセル狙撃事件を機に54年に解体。その後、70年代に組織を再建し、アラブ諸国で活動を続けています。

例えばイスラム原理主義では、そもそも
欧米の基本的考え方である人民主権とは異なる考え方を持っています。
欧米のいう人民主権では立法権は人民にあり、たとえ宗教的倫理的観点からみて誤まっていたとしても、法を制定することができます。
しかしイスラームでは、こうした考えはとりません。すべてを所有しているのは神であり、主権も神にあります。
人間は代理職(ヒラーファ)だと考えるのだそうです。
このような考えに基づくと、そもそも独裁と言うこと自体がイスラムの社会において違和感を覚えます。これが実現できる基盤としては、独裁者やそれを支持する強大な裏権力であり、本来のイスラム国家を目指す人々は弾圧されたり抑圧されたりしてきたと見るほうが自然です。

エジプトの夜明け〜新たな一頁へ [1]※エジプト人の女性芸能人(フィフィさん)のブログ
>そもそもこの革命、エジプトの民主化運動なんて言葉で軽く繰られても、それでは深いところは読めませんよ。
>しかし、それはアメリカの作った親米政権による独裁であるわけで、国民はその親米による独裁に憤慨しているのです。
>エジプトは対外的に良い面をしていますが、本当に外国人ばかりが優遇されていて、国民は虫けらのように扱う国です。極端な話、外国人の方が仕事に就きやすくてエジプト人はあぶれてるなんてこと、ほんとに過言ではないくらい。
>だからそれに不満を持ち度々旅行客を狙ったテロも起きたんです。エジプト政府に、海外ではなく、国民に目を向けて欲しい、または今の外国に媚び売る政権にダメージを与えるためにテロが起きていたわけです。
>野党であるムスリム同胞団の事が度々メディアで紹介される際に、この同胞団を過激派とイコールに誤解して解説する人がいますが、ちゃんと勉強した上で話をしていただきたい。
>ムスリム同胞団は孤児院や病院などを設立し古くから民衆をサポートしてきた団体、組織であって、過激派とは全く異なる。むしろムスリム同胞団をアルカイダなどのように扱って世界にその誤解を広めたのはアメリカ。

今回の民主化は、様々な要因があると思いますが、イスラム諸国の根底には、長期独裁政権下で、優遇される外国人や政権周辺の近親者と抑圧される貧困層との格差が、「民主化」というカタチで爆発したともいえます。
欧州主導にせよ米国主導にせよ、本来のイスラムの教えとは異なる、独裁という支配に対する明確な否定が源流にあった言えます。
チュニジアでは27日の選挙によりイスラム政党が圧勝したようです。エジプトやリビアでも今後欧米型の選挙が行なわれますが、裏では石油利権などを巡り欧米諸国の熾烈な戦いが繰り広げられていると聞きます。
中東の全てのイスラム教徒にとって本当の「春が訪れる」のは、「民主化」という欧米支配すら及ばない、イスラム共同体が実現したときなのかもしれません。

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