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エネルギー市場はどうなっている?(9)〜ロスチャイルド家のエネルギー戦略

「エネルギー市場どうなっている?」シリーズは、これまで資源毎の覇権勢力を解明し、前回の中間整理ではロックフェラーを追いつめたロスチャイルドと新興勢力ロシアの争いになりそうだとまとめました。
今回はエネルギー市場における覇権を拡大中のロスチャイルドの今後の動きを解明する上でキーマンとなる男、「ナサニエル・フィリップ・ロスチャイルド」に焦点を当てていきます。
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ナサニエル・フィリップ・ロスチャイルド(以下ナサニエル)は英ロスチャイルド家、5代目当主になる予定。1971年生まれの40歳とまだまだ若い。
ナサニエルを紹介する前にまず、父の現在の英国ロスチャイルド家当主、ジェイコブ・ロスチャイルド男爵を紹介します。
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1980年以後のファイブ・アローズ証券会長を務める。J・ロスチャイルド・ホールディングス社長。ロスチャイルド投資信託(RIT)キャピタル・パートナーズ会長として、投機家ジョージ・ソロスらの金価格操作やヨーロッパ各国の企業買収、CIAレポートなどに関係してきたと言われている。
しかし、この間の1990年代には、ディビッド・ロックフェラー(シティグループ、エクソン・モービルのオーナー)、ジョン・デビッドソン・ロックフェラー4世(ゴールドマンサックス社のオーナー)からの激しい攻勢にあい、劣勢に立たされて、父祖のドイツのフランクフルトに退避して、再起を図ったこともある。獰猛なディビッド・ロックフェラーと違い、穏健なジョン・デビッドソン・ロックフェラー4世とは、親密な関係を保ってきたものの、ビジネス世界では所詮は、敵同士であった。この意味で米国ロックフェラー財閥には、恨み骨髄という。
 あれから21年を経て、いまや立場は逆転、ロックフェラー財閥のなかでも、とくにディビッド・ロックフェラーは、リーマン・ショックから立ち直れず、苦難にあえいでいる。
 この時期に、ジェイコブ・ロスチォイルドは、長男ナサニエル・フィリップ・ヴィクター・ジェイムス・ロスチャイルドの養成に力を注いでいる。
Kazumoto Igushi’s blog [1]

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さて、ナサニエルはしばらくアメリカの有力ファンド、アティカス・キャピタルの共同会長として200億ドルを超える資産を運用していた。
アティカス・キャピタルは世界中の証券取引所の数%の株を所有していた。さらに投資先はアメリカの石油メジャー、コノコフィリップス(ロックフェラー系)や鉄道会社に投資していた。ナサニエルはここでは主に商品先物市場に投資し、資源業界の人脈を築いていった。
アティカス・キャピタルは2008年のリーマンショックで50億ドルを超える損失を出し、翌年ほとんどのファンドを閉鎖した。

アメリカ民主党系のブルッキングス研究所のthe International Advisory Council のメンバーでもあり、共和党系に近い父親のジェイコブを補完していますね。
 ボリス・ジョンソン、ロンドン市長とデイヴィッド・キャメロン保守党党首のバックにいるのは案外、このナサニエル・フィリップかもしれませんね。
ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報 [2]


◆資源会社バラーを設立
その後、ロンドンに戻り、投資会社バラーを設立。
バラーは、ナサニエル氏とともに英鉱山会社アングロ・アメリカンの石炭・非鉄金属部門で責任者を務めたジェームズ・キャンベル氏が率いる。同社は先月、投資対象には米州やロシア、東欧、オーストラリアの金属や石炭、鉄鉱石に焦点を絞る方針を明らかにしている。
2010年7月にはバラーが、ロンドン証券取引所への上場を前に7億ポンド(約940億円)規模の新規株式公開(IPO)を実施した。バラー以外にも投資会社を持つナサニエルは2011年5月時点での資産が10億ポンド(1320億円)と英国でトップの運用資産額となっている。


◆商品取引最大手グレンコアとナサニエル
グレンコアはこのシリーズ(7) [3]でも登場していますが、スイス最大の売上を誇る非上場企業で、貴金属や石油の商品取引を手がけ、資源大手のエクストラータの株主でもあります。
グレンコアのトレーダーが世界の3%の石油取引を行い、ポンド危機をしかけたジョージ・ソロスの資金源がグレンコアの創設者マーク・リッチだと言われています。
※参考HEATの雑記 [4]
ナサニエルはグレンコアに2011年1月、4000万ドルの転換社債を購入している。グレンコアは非上場企業ゆえそれ以上の関与は不明である。


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プーチンとデリパスカ(右)
◆ロシアとのつながり
グレンコアに触れたのはロシアとの接点でもあるからです。
ジェイコブとナサニエル親子はデリパスカやアブラモビッチといった資源新興財閥と手を組みロシアでの基盤を確保しようとしています。
デリパスカはロシアの世界最大のアルミメーカーRusal社のオーナーで、ナサニエルはアティカス・キャピタル時代から彼とアドバイザー契約を結んでいる。
グレンコアはRusalにアルミ部門を売却し、一方でRusalの株式を14%取得している。


◆ロスチャイルドは勢力拡大中なのか?
エネルギー市場や鉱山に派手に投資を加速させたり、ロシアに接近したりとロスチャイルドの勢力が拡大し追い込まれたロックフェラーと対照的に見えますが、はたしてどうなんでしょう?
そもそも秘密のベールに隠れていたはずのロスチャイルドですが、今回これだけ情報が流出するのはなぜでしょう。ネットの普及だけではなさそうです。
金融市場が拡大し、ロスチャイルドも自前の資金だけでは他の金貸したちに太刀打ちできず、投資会社を作り資金を募らなければ対抗できなくなったのです。投資会社を設立し大規模に投資を募るには財務状況や募集金額を、運用中は投資先や運用益を公開しなければなりません。
これまで一部の金貸しが秘密裏に経済を牛耳っていた時代は終わったのです。新興勢力は市場の透明化を求め、情報開示圧力は共認原理にも則っているので古い金貸したちも抗えません。
ロスチャイルドも例外ではなく現物を持つプーチン・ロシアをコントロールするだけの力も手筈も残っていないのではないのでしょうか。今日はナサニエル・ロスチャイルドも所詮最後の悪あがきに過ぎないという結論で終わります。


次回はプーチンを軸にロシアの力の背後を探ります。

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