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エネルギー市場はどうなっている?(10)〜破局後の覇権獲得を狙うエネルギー大国ロシア〜

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「エネルギー市場はどうなっている」シリーズ第十弾です
 
今回のテーマは、エネルギー市場大本命のロシアです。
 
  
豊富なエネルギー資源を武器に、強気の外交を見せたプーチンが、来年には再び大統領に復帰する見込みです。プーチンをトップとするロシアの政財界に、金貸し支配がどのくらい及んでいるのか、いないのかが非常に気になるところです。
 
 
それを明らかにしていくためにも、まずはロシアの歴史的背景からおさえていきます。
 


 


 
■ ソ連成立から冷戦崩壊まで
1904年 日露戦争→敗戦
  14年 第一次大戦開戦
 
☆日露戦争の敗戦と第一次世界大戦への参戦により、ロマノフ朝は疲弊していきます。そしてロスチャイルドの援助を受けたレーニンのロシア革命によって、ついにロマノフ朝は崩壊します。(参考 [1]
 
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 17年 ロシア革命→ロマノフ朝崩壊
 22年 ソ連成立     ・・・世界初の社会主義国家
 45年 ヤルタ会談    ・・・F.ルーズベルト(米)・チャーチル(英)・スターリン(ソ)
     第二次大戦終了
 47年 マーシャルプラン ・・・米ソでドイツの取り合い
 48年 ベルリン封鎖
 49年 ソ連原爆実験成功
 50年 朝鮮戦争
 
☆世界初の社会主義国家となったソ連は、第二次大戦終了後には米国と並ぶ超大国となっていました。ここで第二次大戦の主戦場となって疲弊したロスチャイルドに対し、ロックフェラーは米ソ冷戦を仕掛け、軍需産業での更なる利権拡大を図ります。(参考 [2]
 
 55年 ワルシャワ条約 ・・・対米(NATO)の軍事条約
 59年 中ソ対立    ・・・国交断絶
 62年 キューバ危機
 79年 アフガン侵攻  ・・・ソ連(ロシア)の衰退が顕在化
 
☆冷戦構造によって、莫大な利益を獲得したロックフェラーに対して、ロスチャイルドは冷戦終結→ソ連崩壊(その後のEU→ユーロ設立)を仕掛けて対抗しました。ゴルバチョフ、エリツィンがその実動部隊として動き出します。
ゴルバチョフはその功績からノーベル平和賞(ロスチャイルド傘下)を受賞します。
 
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 85年 ペレストロイカ ・・・ゴルバチョフによる構造改革
 86年 チェルノブイリ事故⇒グラスノスチ(情報公開へ)
 89年 ベルリンの壁崩壊
     マルタ会談(ブッシュ、ゴルバチョフ)⇒連戦終結
 90年 一党独裁の解体
     ゴルバチョフ大統領(ソ連)の誕生⇒ノーベル平和賞受賞
     ヤナーエフ副大統領⇒クーデター
     エリツィン大統領(ロシア)がクーデターを阻止
     ⇒ロシアがソ連脱退し独立国家共同体(CIS)設立
 91年 ソ連崩壊
     ⇒エリツィン大統領による市場経済化

     サプチャークがレニングラード市長に選出
 
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☆ソ連崩壊後のロシアは、市場経済化に失敗し、経済危機に直面。その傍らでは、金融で財を成した新興財閥が登場します。彼らはオリガルヒと呼ばれ、マスコミや資源企業を買収し、政治とも癒着するようになっていました。
 
この危機的状況を打破するために、国民からの大きな期待を受けて登場したのが、プーチン大統領です。彼はまず、国家を揺るがすオリガルヒから企業を奪い返し(国有化)、その後は輸出全体の6割を占めるエネルギー資源を貿易の基軸にすえることで、国家経済の立て直しを図ります。
 
 94年 サプチャークがプーチンを副市長に任命
     オリガルヒ(新興財閥)の台頭⇒エリツィン政権と癒着
 98年 ルーブル危機→インフレ、経済危機
 99年 プーチン大統領就任⇒オリガルヒを次々と排除
     エネルギー企業やマスコミが国営化される
2003年 米との対立姿勢が顕在化
 
☆プーチンの国家再建政策の結果、ロシア人の実質収入は、プーチン登場の2000年以降(前年比)10%以上の伸び率を示し、失業率は1999年の15%から2006年の6%台へと半減しました(参考 [3])。
その後のロシア(プーチン)の動向はご存知の通り、豊富なエネルギー資源を武器に(米国との対立も辞さない)強気の外交を展開しています。
 
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ここまでのロシアの歴史を振り返ると、プーチン登場以前は、ほぼ金貸し(ロスチャイルド、ロックフェラー)の支配下にあったと考えられそうですが、プーチンに関しては、どうも彼らの支配を受けているかどうかがはっきりしないところがあります。
 
プーチンの経歴から、それを明らかにしてみましょう。
 
 


■ KGBを経て大統領まで上り詰めたプーチン
ウラジーミル・プーチンは1952年レニングラードに生まれます。60年代の強いソ連時代に青年期を送り、なんと、中学の時に一度KGBの門をたたいたそうです。その時は断られたものの、その後レニングラード大学法学部時代にKGB(国家保安委員会)にリクルートされ、大学卒業後、KGBに入りました。
 
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KGBでは東ドイツで諜報活動に従事、ドレスデンを拠点に、西ドイツ経済界への食い込みや人脈作りを担当していたともいわれます(西独最大手のドイツ銀行と、業界3位のドレスナー銀行との親密な関係あり)。
 
冷戦崩壊→KGB廃止後は、サンクトペテルブルグ市長の国際問題の顧問団のひとりとして、欧米企業によるサンクト市への投資の誘致で大成功を収めます。その功績から1994年には、サンクトペテルブルグ市長でレニングラード大学の恩師でもあったサプチャークから、副市長に任命されます。
 
その傍らで、「国家鉱業研究所」の研究員を兼務し、「ロシアの豊かな資源を活用すれば、世界的な大国の座を取り戻すことができる」と考え、「ロシア経済発展のための鉱物資源戦略」と題した論文を発表。その中で、石油やガスといった資源産業を再国有化し、その国有企業群の経営を欧米並みに効率化するとともに、金融機関の機能を併設して「金融産業企業群」となることで、世界からロシアの資源開発への投資資金を集めるメカニズムを作ることを提唱しました。
 
そして、KGBの後身であるロシア連邦保安庁(FSB)の長官を経て、1999年にロシア大統領に就任。KGBを中心とした、軍、警察、内務省(通称シロビキ)の軍事力系人材で閣僚を固めました。
 
☆プーチンの幼少からのKGBへの憧れや、その後の経歴、「強いロシア」の標榜からは【並ならぬ愛国精神】が感じられます。
 
 


 
■ 大統領就任後は主要マスコミ、資源企業を国有化
大統領就任後、プーチンは国家権力を行使することによって、財界に巣食うオリガルヒを排除し、国内主要マスコミの国有化と、国家経済の柱となるエネルギー資源企業の国有化を実現します。
 
マスコミをおさえていたグシンスキーとベレゾフスキーに対しては、脱税容疑で刑事訴追→国外逃亡に追いやり、彼らの所有するマスコミを国有化
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グシンスキー(左)とベレゾフスキー(右)
 
石油大手「ユコス」を所有するホドルコフスキーに対しては、脱税などの罪で実刑判決に追い込み「ユコス」は破綻、国営企業「ロスネフチ」がそのユコスを吸収しました。 
アブラモビッチが所有していた石油企業「シブネフチ」は、国営企業「ガスプロム」が買収しました
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ホドルコフスキー(左)とアブラモビッチ(右)
   
 


 
■ 米国(ロックフェラー)への利権流出を徹底阻止
プーチンの思惑(オリガルヒ排除)に対抗するために、オリガルヒたちは主に米国(ロックフェラー)をバックに付けようとする行動に出ましたが、プーチンはこれを徹底的に阻止します。
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D・ロックフェラー
 
オリガルヒの一人であるポタニンが、所有する鉱山会社「ノリリスク・ニッケル」の株式をアメリカの証券市場で売る目的で、情報公開を行おうとしたところ、プーチンは直前にそれを阻止。
同様に若手オリガルヒのデリパスカが、所有するアルミ精錬会社「ルサル」の設備の一部を、アメリカのアルミ会社「アルコア」に売却しようとした際にも、プーチンはそれを阻止する行動に出ています。
 
エクソンモービルやシェブロンテキサコが全体の3分の2を取得していたサハリン3の開発権(1993年に入札)は、プーチンが強権発動で2004年にそれを白紙撤回しました。
 
石油大手「ユコス」と「シブネフチ」を、エクソンモービルに売却しようとしていたホドルコフスキーに対しては、上述の通りです。
 
 


 
■ ロスチャイルドの接触には容認か
一方で、ロスチャイルドと国内企業との接触に対しては容認する姿勢を見せています。
 
前回の記事「エネルギー市場はどうなっている?(9)〜ロスチャイルド家のエネルギー戦略 [4]」では、ナサニエル・ロスチャイルドとデリパスカ(オリガルヒの一人)が、アドバイザリー契約を結んでいること、そして資源商社グレンコア(ロスチャイルド系)が、デリパスカの所有するアルミ精錬会社「ルサル」の株式の14%を取得したことに触れました。
 
これに対してプーチンが阻止する動きは、今のところないようです。
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ナサニエル・ロスチャイルド(左)とデリパスカ(右)
  
また、石油大手「ユコス」が破綻した際には、その株の一部がロスチャイルドにも流れていたようです。(参考 [5]
 
これは、ロシア資源に正面から利権獲得を図ろうとする米国(ロックフェラー)と比較して、ロスチャイルドの手口の旨さも要因にありそうです。
しかし逆にプーチンからしてみれば、すでに天然ガスのパイプラインがロシアから欧州各地に張り巡らされており、ロスチャイルド(欧州)に対しては、いざとなればこのパイプラインを武器に勝負できると考えているようにも思えます。
 
 


 
■ 破局後の覇権戦略が着々と進行中
ここまで見てきた様に、プーチンが金貸し(ロスチャイルド、ロックフェラー)に対して、直接的な支配を受けることなく、強気の政策を実行できるのは、やはり圧倒的なエネルギー資源の保有量がその力の基盤になっていると言えそうです。
 
金融市場崩壊→経済破局が現実になれば、必然的に経済は現物市場に移行することになります(だからこそ金貸しも今になって現物の確保に躍起になっています)。ゆえに金融危機が目前に迫っている現在、すでに大量の資源(現物)を保有するロシアは、金貸し支配に対抗するだけの力を持ち得たのでしょう。
 
 
プーチンは、着々と破局後の覇権獲得の準備を進めています。
 
欧州に対してはドイツへの直結ガスパイプラインが開通予定で、中国へは年間680億立米、1兆ドルに上る天然ガス供給を始める計画を発表しています。他にもイランからパキスタン、インドにつながるパイプラインの建設も計画中。さらには米国や日本へも天然ガス供給を目論んでいるようです。
 
[6]
 
  
また、プーチンは、20年という長期スパンで国家を立て直す計画を打ち出しており、これも破局後を見据えていることを示唆するものと言えるでしょう。(参考:BRICs徹底分析〜ロシア編その5 プーチンの長期国家プラン [7]
  
  
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次の記事では、ここまで追求してきた世界のエネルギー市場の内容を基に、いよいよ「日本のエネルギーをどうする?」の追求に入っていきたいと思います。
 
  
 
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