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『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【11】まとめ(2)日本との関係?

前回、中東民主化の原因についての構造化を試みましたが、今回は、このシリーズのまとめとして、一連の調査・分析から日本は何を学ぶことができるか?を考えてみたいと思います。
>前回記事:『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【10】まとめ(1)金貸し支配との関係はどうなっているのか? [1]
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<エジプト民主化デモ:画像はこちら [2]からお借りしました>
まとめということで、やや長文になりますが、お付き合いください。
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●これまでの分析の視点

・直接的には、長期独裁政権に対する反発が民主化運動の発端になっていますが、それはきっかけにしかすぎません。その背景にはリーマンショック以降の経済情勢の悪化(格差の拡大、若者の失業率の悪化等)があり、さらにその背景には、欧州と米国との覇権争いに翻弄されてきた歴史があります。
・歴史的には長期独裁政権は欧州の植民地からの独立運動が出発点でしたが、独立後は米国の方が覇権を握っていき、中東の多くの国が米国の傀儡となっていきました。その間、民族意識が抑圧されてきたわけですが、近年では米国傀儡への反米感情が蓄積されていたという要因も見逃すことができません。
・今回の中東民主化の分析にあたっては、ニュースで伝えられる事象の背後にある欧州VS米国の金貸しの覇権争いの視点が不可欠です。

●分析の要点と日本が学ぶべき点

①米国覇権の終焉と欧州の攻勢

・今回の中東民主化は、追い詰められた米国(ロックフェラー)が、悪あがきとして仕掛けた可能性が高いと考えられます。
>『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【7】:米国主導説 [3]
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<デビッド・ロックフェラー>
・なぜ悪あがきしているか?の理由は、米国覇権が終焉してきているからです。米国は基軸通貨の特権(割高のドルで世界中から安く買い物ができる)を武器に経済的覇権を握ってきましたが、その特権ゆえに、国内生産力が衰弱し、3つ子の赤字をかかえて世界一の借金国になってしまいました。
・経済的覇権を失っていった米国(ロックフェラー)は、軍事力にモノを言わせて、覇権を握り続けようとしましたが、先進国では豊かさが実現されてしまったために、力の原理でゴリ押しをしようとすればするほど、世界中から反発を招くようになりました。
・すでに力の原理は通用しなくなった(それを押し通すだけの国力もない)にもかかわらず、見せ掛けの軍事力で支配しようとする姿勢はもはや張子の虎と言っていいでしょう。
>アメリカはもはや張子の虎でしかない [4]
・オバマ(民主党)になって、軍縮路線に転換したわけですが、米国が力づくの支配から、民主化という共認支配へと路線転換せざるを得なかったのも、米国覇権の終焉とそれに伴う世界の人々の意識潮流の変化(世界的な反米感情の高まり)の圧力があったからでです。

・一方、欧州(欧州貴族、ロスチャ)は米国崩壊後の多極化※の戦略を進めています。欧州(→オバマ)はもはや力の原理(戦争)では世界の人々を支配することはできず、共認原理(世論)に立脚する必要があることはわかっていると思われます。(欧州の方が大人。)
※多極化とは、米国による一極支配に代わって、欧州圏、北米圏、南米圏、アジア圏、中東圏など、多様な経済圏が共存する方向に向けての動き。
・反米感情から民族意識が高まっている動きは、多極化戦略をとる欧州にとっては、折り込み済みのシナリオであり、結局、米国が仕掛けた中東民主化は、欧州に主導権を奪われる可能性もあると予想されます。(欧州は金融とマスコミの主導権を握り、トルコ型(政教分離)の民主主義がお手本などと共認支配を強めていくでしょう。)
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<ジェイコブ・ロスチャイルド>
・日本の民主党政権は、あいかわらず米国の言いなりになっていますが、上記の構造を見抜けば、世界の潮流がわかっていないと言わざるを得ません。
・属米路線を続けても可能性はありません。日本の取るべき進路は、いち早く脱米路線に転換することであることを学ぶ必要があります。


②資本主義(金貸し支配)の終焉
・さらに言えば、米国覇権が終焉しているというだけではなく、近代の資本主義全体が終焉しつつあるという問題があります。
・現状は欧州優勢>米国劣勢の状況にありますが、大きく見ればどちらも支配力は衰弱していると見るべきです。従来表に出なかった、金貸しの動きの裏情報が表に出てきたのも、金貸しどうしのリーク合戦の影響があります。お互いが覇権争いを続ける一方で、後進国が台頭しつつあり、欧米の影響力は相対的に低下しつつあります。
>10/30なんでや劇場6 影に隠れて暴走してきた金貸しの支配が明るみになった [5]

・欧米の影響力が低下している理由は、先進国での豊かさの実現、世界的な情報メディアの発達などによって、そもそも近代化を推し進めてきた力の原理(戦争)や騙し(金融、マスコミ)では、世界の人々を支配できなくなってきたからであり、根本的には資本主義が終焉を迎えているからです。
・資本主義とは、資本を持っている者が会社や社会を支配するという考え方ですが、資本を持つ者の頂点にいる金貸しの統合原理では支配ができなくなったということは資本主義の終焉を意味します。
>9/18なんでや劇場1 「資本主義の終焉」「市場の崩壊」とはどういうことか? [6]

・資本主義は終焉しているという状況認識から言えば、日本も近代以来欧米に支配され、欧米をモデルとしてきた社会のあり方が問われているのだということを学ぶ必要があります。

③イスラム社会に学ぶ(イスラム型民主主義とは?)
・今回の中東民主化の根底には、近代以来、欧米によって支配されてきたイスラム諸国の人々の民族意識の高まりがあます。
>『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【8】説の紹介:民族意識主導説 [7]
・今後中東の新政権がどうなっていくかが注目されますが、民族主義の勢力が台頭していけば、脱米化の路線をとり、アラブ諸国どうしの連帯を強めていく可能性があります。
・旧政権崩壊後の選挙では、イスラム主義の政党が勢力を伸ばしている状況からみて、そうなる可能性は高いと予想されますが、イスラム教の国々は、日本と同じく共同体的体質を残しており、資本主義が終焉しても生き残る可能性が高いのではないか?という議論に注目する必要があります。
>イスラムの可能性を探る [8]
>イスラムと日本の共通点 [9]
>イスラムに学ぶ [10]
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<エジプトのアスワンにあるモスク:画像はこちら [11]からお借りしました>
・そもそも、イスラム教の教えには、独裁であれ民主主義であれ、人が人を支配するのは神の教えに反するという考え方があり、神(コーラン)の教えに従って国を治めるのが正しいと考えられています。ここで言うイスラムの神は、キリスト教的な絶対的な一神教ではなく、どちらかと言えばみんなが守るべき規範観念に近いと思われます。欧州と違って、共同体がバラバラに解体されてしまったのではなく、共同体がかなり残存していることがそのような違いに影響しているものと考えられます。
・日本は近代国家建設にあたって、欧米の民主主義をモデルとしてきましたが、近代民主主義とは何であったのか?その根本的な欺瞞性が問われています。
>実現論:序3(下) 民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である [12]
・日本人の可能性は縄文以来受け継がれてきた共同体体質にあります。共同体体質を色濃く残存させている民族にとって、近代民主主義にかわる社会統合を考えるうえで、イスラム社会に学ぶべき点は多いと思います。

④世界的な共認収束の潮流
・今回の中東民主化運動が、一気に中東諸国に広がった大きな要因として、ソーシャルメディアの発達があったことは注目されます。
>『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【9】コラム:ソーシャルメディアって何? [13]
・注目点は、中東のみならず、世界中にものすごいスピードで普及しているという点です。
・この点は、単に通信手段として便利だからというだけではなく、世界の人々の事実探索の意識が高まっていることが大きな要因になっていると考えられます。現代の政治や経済は世界相互に連関しており、その国の社会のことを知ろうとすれば、必然的にその背後の世界で起こっていることを知る必要が出てきます。しかし、金貸しに支配されたマスコミはそのような意識に応えることはできません。
・おそらく、事実探索の意識潮流が進み、今まで知られていなかった裏情報が明らかになっていくにつれて、金貸し支配の構造も明らかになり、反マスコミ⇒反金貸しの共認収束も進んでいくでしょう。
・ソーシャルメディアの発達はそのような可能性を秘めているということを今回の中東民主化から学ぶ必要があります。


※今後民主化された中東諸国の新政権がどうなっていくかが注目されます。本シリーズはいったんこれで終わりですが、状況によっては続編をお伝えします。乞うご期待。

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