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【2】TPPって何?:基礎知識の整理

前回から新しくスタートしたシリーズですが、今回はTPPって何?という所から押さえ直し、日本がTPPに加盟したら何が起きるのか、さらにニュースではなかなか表に出てこない事実などを追求していこうと思います。
TPP-1.png
<画像はこちら [1]からお借りしました。>
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■TPPとは
環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership)は、経済連携協定 (EPA) の一つ。加盟国の間で工業品、農業品を含む全品目の関税を撤廃し、政府調達(国や自治体による公共事業や物品・サービスの購入など)、知的財産権、労働規制、金融、医療サービスなどにおけるすべての非関税障壁を撤廃し自由化する協定。<ウィキペディア [2]より>
■加盟国・加盟交渉国
2006年5月にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国が域外への経済的影響力を向上させる(小国同士の戦略的提携によってマーケットにおけるプレゼンスを上げる)ことを目的として発効し、運用しています。現在、加盟国4か国と加盟交渉国5か国が拡大交渉を行っています。
【成り立ち】
この構想は、WTOなどにおいて、十分に自由化の動きが浸透していなかったことを受けて、2000年に現ニュージーランド貿易大臣が提唱しました。元々ニュージーランドとシンガポールの間で締結された協定がベースとなり、それがP4(参加国:チリ、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイ)と呼ばれる環太平洋戦略的経済連携協定が生まれました。その当時のアメリカのブッシュ大統領は、当初は投資並びに金融サービスに関して、交渉に参加したいという表明をしました。その後、協定全体に関しての参加表明に変更。そして、その後オーストラリア、ペルー、ベトナムも交渉に参加しました。すなわち、これらの国々はP4に参加するという流れとなっていますが、実際には新たな協定を協議するということになったと言えます。
ニュージーランドは、初期のTPPを推進した加盟国だが、後から来た米国に滅茶苦茶にされている [3]
【ニュージーランドの現状】
ニュージーランド各地では、TPPに対する反対の署名活動やデモ行動が頻繁に展開されています。そうした反対運動の最前列に立っているのが、「ウェリントンTPP行動グループ」と呼ばれる団体です。特筆すべき問題点として、交渉参加国でありながら、同国政府が現在進行中の協議の中身について、議会に対しても国民に対してもまったく情報の公開を拒んでいることが挙げられます。
建て前上、アメリカ政府はTPPにおいては交渉の透明性を確保すると高らかに宣言していますが、交渉に参加している国々の消費者や影響を受けるであろうと思われる業界団体に対しては、なぜか詳しい説明も情報の提供も拒んでいるのが現状です。そのため、ウェリントンの反対グループは、TPPは秘密交渉なのか。透明性が確保されていない。いわば交渉のプロセスそのものが非民主的と言わざるを得ないと厳しいアンチTPP活動を続けています。
【その他の国の現状】
「P4」の参加国、チリにおいてもこうした問題に関しては懸念を表明する識者や団体が数多いです。さらには、オーストラリアの市民グループや教会、労働組合などもTPP反対の要請文を貿易大臣に届け、デモ活動を展開しています。その理由は、アメリカがオーストラリアの健康、文化、環境政策を貿易障壁とみなし、それらの除去や変更を迫ろうとしているからであり、具体的には薬品価格の規制、遺伝子組み換え食品、映画などのメディア作品の保護を問題視しています。つまりアメリカは、TPPを通じて公共の利益より企業の私益を優先させようとしている、との批判的見方をしているわけです。
「ニュージーランドは、初期のTPPを推進した加盟国だが、後から来た米国に滅茶苦茶にされている-2」 [4]
■加盟したら何が起こるか
【農業(関税率)】
・マスコミは米と蒟蒻芋だけの税率に焦点を当てて、日本の農産物関税率の低さを隠している。農産物関税は、日本はたった11.7%。アルゼンチンは33%。スイスは51%。ノルウェーは123%。インド130%を超えている。
【農業(農薬基準)】
・アメリカの甘い農薬基準により農産物は農薬汚染される。アメリカの農薬:殺虫剤(クロルピリホス)=日本の80倍、殺菌剤(キャプタン)=日本の60倍。
【農業(GMO食品)】
・現在のGMO食品に対する国内の規制が撤回される。
・巨大アグリ企業モンサントやシンジェンタが、特許権を持つGMO種子を国内にばら撒こうとしている。
・GMO種子はモンサントが製造する最強の除草剤ラウンドアップ(元はベトナム戦争の枯葉剤)とセットで、世界中で販売されている。F1種と呼ばれる種子は収穫した翌年に蒔いても実をつけない1代のみ。このGMO種子とラウンドアップをいっしょに投入した場合、農家は従来種の作付はできなくなり、モンサントから毎年種子を購入しなければならないという、無間地獄に陥ることになる。
インドでは、収穫が倍増すると言われたこのGMO種子を、たくさんの農家が借金をして購入。しかし期待した収穫は得られず、12万5千人の農民が自殺に追い込まれた
【農業(BSE)】
・日本では現在、米国産牛肉で月齢20ケ月未満の肉は輸入禁止だが、これが解除される。将来日本人の中からBSE患者が激増する
【公共事業・サービス(水道)】
・欧米企業の参入が進む。過去フィリピンで実施された世界最大の民間水道事業参入で、料金が跳ね上がった
【公共事業・サービス(土木)】
・落札した外資が手配した海外の労働者が、国内の土木事業労働者として大挙流入し、国内の日雇い労働者はホームレス化する。地方の小規模土木会社は壊滅する。
【公共事業・サービス(医療)】
・外資による病院の買収が進む。
・その結果収益性の高い保険外診療が増大、利益率の低い保険診療が蔑にされる
・病院の営利企業化が進めば不採算部門の整理廃止が進み、僻地などの赤字医療機関は閉鎖が続出する。
【郵貯・簡保の国民資産】
・インチキデリバティブ商品に運用させられ収奪される。
・郵貯・簡保が国債の買い手から撤退すれば、日本破綻の引き金になりかねない
・学校法人の買収や設立も進んで英語化が推進され、児童・生徒の国家国民教育が破壊される。
国破れてTPP在り [5]
【建設業界】
(何故建設業を例に引くかと云うと他の産業でも基本的には同じ事が起こりうる。)
・「極安賃金の労働者」を海外から大量に連れてきて公共工事を搔っ攫う外国企業が多数受注していく。
・一級施工管理技士や現場代理人の現場常駐義務は「非関税障壁」とされ撤廃要求がでる。
・工事現場では英語でしゃべれ、そうでなければ「非関税障壁」。
・そして、円高ドル安の上にTPPルールの下で内需拡大策を要求され、そして応じた結果は安かろう悪かろうの泡沫建設会社が日本に進出し日本の世界に誇るべき建設技術は崩壊する。
・特に地方の中小建設会社は壊滅し建設労働者は外国人に奪われる
・そして品質の極端な低下と手抜き工事の横行である。
TPPのウソの基礎】一般産業から建設業まで [6]
■TPP推進/反対の業界構造分析
【経団連米倉会長】
TPP推進の経団連米倉会長は住友化学(国内最大の農薬メーカー)の会長。住友化学は米国モンサント社(遺伝子組換え種子の大手)と提携。遺伝子組換え種子と大量の農薬はセット。遺伝子組換え食品が広まるとモンサント社が儲かり、住友化学もボロ儲け
TPP推進の経団連米倉会長に米企業とのボロ儲けのカラクリ疑惑 [7]
【米自動車業界団体】
米自動車大手3社でつくる業界団体「米自動車通商政策評議会」は
11日、日本が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加することに反対する声明を発表した。 同評議会のマット・ブラント代表は、米国の対日貿易赤字の7割は自動車関連が占める、と指摘。 その上で、「日本の自動車市場は先進国の中でも最も閉鎖的だ」と主張し、日本のTPP交渉参加は、「日本に都合の良い通商慣行を正当化し、重要な通商合意の進展を妨げる」と批判した。
日本のTPP参加に反対声明 [8]
【日本自動車工業会】
日本自動車工業会(自工会)の志賀俊之会長(日産自動車最高執行責任者)は10日の野田首相の政治決断を受け、「アジア・太平洋地域におけるビジネス環境の整備と、自由貿易の進展が期待される」と歓迎するコメントを発表した。
アングル:TPP交渉参加表明に自動車業界から歓迎の声 [9]
【JA全中会長】
我々は、わが国の食と暮らし、いのちを守るため、各界各層と連携し、交渉参加阻止に向け、引き続き徹底して行動していく決意である。
TPP交渉参加に関する抗議声明 [10]
【日医など3師会】
日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は、11月2日に合同記者会見を開き、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加に向けて見解を発表。日本医師会会長の原中勝征氏は「国民皆保険を守ることを表明し、国民の医療の安全と安心を約束しない限り、TPP交渉への参加は認められない」と述べた。
「皆保険堅持の確約なくばTPP参加には反対」 [11]
【全労連】
TPP参加を求める一部大企業・財界の要望ではなく、悪影響を懸念する労働者、国民の声にこそ耳を傾けるべきである。農林漁業や地域経済の存在を危機に追いやり、地域での雇用喪失をより深刻化させるTPPへの交渉参加を断念するよう強く求める
【談話】「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」への参加決定に反対する [12]
上記のように、メディアでは工業vs農業と扱われることが多いTPPへ加盟の是非ですが、それだけを考えていては全体が見えません。もっと大きな問題が潜んでいることに気づかないといけないようです。その中身をよく見てみると、加盟することは日本にとって危険が多いのではないでしょうか。
次回は世界の自由貿易の歴史を振り返ってみたいと思います。

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