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「ユーロ統合」どうなる?〜第5回 EU首脳会議〜

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写真はこちら [1]からお借りしました。
「ユーロ統合」どうなる?を扱っています。
第一回〜ユーロ統合したのはなんで? [2]
第二回〜ユーロ統合の構造的欠陥 [3]
第三回〜ユーロ国の現状〜 [4]
第四回〜ユーロ共同債・財政統合は可能か〜 [5]
■12月9日のEU首脳会議が行われました。
EU首脳会議、財政規律強化で合意も全加盟国の条約改正は断念 [6]より

欧州連合(EU)首脳会議は9日、ユーロ圏の財政規律強化で基本合意した。ただEU加盟27カ国による基本条約改正では合意できず、ユーロ圏17カ国と参加を希望する国のみで政府間条約を目指すことを決めた。
会議は8日夜から10時間にわたって行われたが、具体的な成果には乏しく、財政規律強化のための「財政協定」への決意を示すにとどまった。
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、この日の決定について「財政協定」に向けて一歩前進したと指摘。「ユーロ圏加盟国の経済政策の規律強化と財政協定の良い基盤となる。今後さらに肉付けが必要だ」と述べた。総裁は債務危機の克服には財政協定が必要だと主張している。
独仏首脳は当初、EU全加盟国による条約改正を通じた財政規律の強化を望んでいたが、英国とハンガリーが反対したため、ユーロ圏17カ国と参加を希望する国のみで政府間条約を目指す方針に転換した。両首脳は最大で25カ国が政府間条約に参加する可能性があるとしている。
サルコジ仏大統領は「27カ国による基本条約改正が望ましかったが、友人である英国の立場を踏まえ、実現に至らなかった。17カ国の政府間条約を通じて実施することになるが、他の国も参加可能だ」と発言。
EUのファンロンパイ大統領は「現在よりも自動的な制裁の発動を通じて、過剰赤字の是正手続きを強化することになる。加盟国は予算案を欧州委員会に提出する必要が生じる」と指摘。「政府間条約は、本格的な条約改正に比べてはるかに迅速に承認・批准が可能だ。信認の回復にはスピードも非常に重要と考えている」と述べた。
<ESM、IMF>
欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の後継となる欧州安定メカニズム(ESM)については、発足を2012年7月に前倒しすることを決定。資金力の上限を5000億ユーロに制限し、銀行免許も付与しないことも決めた。
首脳会議では、国際通貨基金(IMF)の債務危機対応を支援するため、EU加盟国が相対融資を通じて最大2000億ユーロをIMFに拠出することも決定。うち1500億ユーロはユーロ圏加盟国が拠出する。
金融市場は、首脳会議の結果を好感する展開とはなっていない。株価や商品価格は会議の結果発表前から下落。ユーロも引き続き軟調に推移している。

この首脳会議によってユーロはどうなるのでしょう? 🙄
いつも読んでいただきありがとうございます。


記事から読みとれるのは
1.財政規律の強化≒財政統合を目論んだが、財政規律強化に含まれる金融規制を嫌った英国とハンガリーが反対した。
2.欧州安定メカニズム(ESM)発足を2012年7月に前倒しする。ただし、銀行免許は付与しない。
3.最大2000億ユーロをIMFに拠出する。→IMFにより債務国を救済する。
ということです。
■ここで、これまでの流れの概要を押さえると、
(欧州貴族&ロスチャイルドは)
①欧州の覇権を取り戻そうと、市場拡大(市場の自由化)を目論んだ。

②市場拡大は、貿易障壁の撤廃→ユーロ(統一通貨)の導入で実現した。

③市場拡大はその圏内で国力(生産力)による格差を拡大した。
 一役買ったのは、国力に見合わぬ貨幣価値を得ることになった国力の小さな国への資金流入→債務の拡大。
 (米英=ロックフェラーの画策?)

④格付け会社(米)による債務国の国債格付け▼=ユーロ価値▼の煽り
 さらに、CDS債による金融攻撃?
 ギリシャの経済危機にも関与していたゴールドマンサックス [7]参照

⑤ユーロ債務危機
という流れだと思います。
時系列で最近の動きを押さえてくれているサイトがありました。
ギリシャ危機を中心に欧州危機を時系列で振り返る [8]より



















































  日付  事件
2009年10月ギリシャ政権交代後の新政府が財政赤字の対GDP比が12.7%であることを発表(それまでは3.7%としていた)し、粉飾(企業で言うところの粉飾決算)が明るみになり、国としての信用を落とし、国債発行等による資金調達の道が閉ざされ資金繰りが悪化する
12/16スタンダード&プアーズ(S&P)がギリシャの国債格付けを「A−」から「BBB+」に1段階引き下げる
2010年1/29ギリシャのCDSスプレッド(5年物)が4.00%に
 4月ハンガリー政権交代・新首相就任
 4/22欧州連合(EU)統計局 Eurostatがギリシャの財政赤字は13.6%であると発表
 4/27スタンダード&プアーズ(S&P)がギリシャの国債格付けを「BBB+」から「BB+」に3段階引き下げ
 5/2欧州連合(EU)が緊急財務相会合で国際通貨基金(IMF)と共に、財政危機に陥っているギリシャに対して今後3年間で1100億ユーロ(約11兆7千億円)の融資を実施することで合意
 5/9欧州金融安定基金(EFSF)を設立
 5/12国際通貨基金(IMF)が55億ユーロ(約5800億円)の融資を実施することで合意
 5/19ギリシャは85億ユーロの10年物国債の償還を完了(デフォルトを回避)
 6/3ハンガリー政府 財政赤字の粉飾の可能性を発表
 6/14ムーディーズがギリシャの国債格付けを「A3」から「Ba1」に4段階引き下げ
 6/24ギリシャのCDSスプレッド(5年物)が10.85%と過去最高水準を更新
11/15EU統計局はギリシャの対GDP赤字比率を2009年は15.4%(前回13.6%)、2008年は9.4%(同7.7%)と拡大修正
2011年2/11欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)が150億ユーロ(約1兆6千億円)の第3弾融資を承認(2010年5月の合意に基づく)
 2/27アイルランド 政権交代
 3/7ムーディーズがギリシャの国債格付けを「Ba1」から「B1」に3段階引き下げ
 3/29スタンダード&プアーズ(S&P)がギリシャの国債格付けを「BB+」から「BB−」に2段階引き下げ
 5/9スタンダード&プアーズ(S&P)がギリシャの国債格付けを「BB−」から「B」に2段階引き下げ
 6/1ムーディーズがギリシャの国債格付けを「B1」から「Caa1」に3段階引き下げ
 6/13スタンダード&プアーズ(S&P)がギリシャの国債格付けを「B」から「CCC」に3段階引き下げ
 6月ポルトガル 政権交代・新首相就任
 7/8欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)が32億ユーロ(約3400億円)の第4弾融資を承認(2010年5月の合意に基づく
 7/25ムーディーズがギリシャの国債格付けを「Caa1」から「Ca」に3段階引き下げ
 7/27スタンダード&プアーズ(S&P)がギリシャの国債格付けを「CCC」から「CC」に2段階引き下げ
10/4ムーディーズがイタリアの国債の格付けを3段階引き下げ
10/10フランス・ベルギーの大手銀行デクシア破綻
10/11欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)が80億ユーロ(約8500億円)の第5弾融資を承認(2010年5月の合意に基づく)
10/13S&P(スタンダード&プアーズ)がスペイン国債の格付けを「AA(ダブルA)」から「AA−(ダブルAマイナス)」に1段階引き下げ
10/18ムーディーズがスペイン国債の格付けを「Aa(ダブルA)2」から「A1」に2段階引き下げ
10/27欧州諸国は債務危機に対応するために、ギリシャ債務の民間投資家の損失負担を50%とし、欧州金融安定ファシリティの融資能力を拡充するほか、2012年6月30日まで銀行の資本増強を決定。ギリシャ向けの80億ユーロの融資も承認し、ギリシャのデフォルト(債務不履行)はひとまず回避される。 またアイルランド向けの次回融資として、EU・IMFが来年1月に85億ユーロを実行することも承認した。
11/1パパンドレウ ギリシャ首相が第2次支援策の受け入れについて国民投票を実施すると発言したために、金融市場は再び不安定化、内外での反発が強まった
11/2メルケル、サルコジの独仏首脳がパパンドレウ首相に対し、支援凍結とユーロ離脱をちらつかせながら圧力をかけ事態収拾に動いた
11/4パパンドレウ首相が国民投票を撤回
11/5パパンドレウ内閣の信任投票で僅差ながらも信任された
11/10ギリシャ首相にルーカス・パパデモスが就任
11/11全ギリシア社会主義運動(PASOK)と新民主主義党(ND)が合意し組閣、二大政党による大連立内閣が発足した。大連立内閣は、緊縮策を前提とする支援策を受け入れ、来年2月19日に総選挙を実施する
11/11アイルランド 新大統領就任
11/12イタリア ベルルスコーニ首相辞任
11/16イタリア マリオ・モンティ首相就任
11/18ハンガリー IMFに支援要請
11/20スペイン 政権交代
11/23ドイツ国債 大幅札割れ
11/25ムーディーズがハンガリー国債の格付けを「Baa3」からジャンク級の「Ba1」に1段階引き下げ
11/25S&P(スタンダード&プアーズ)はは25日、ベルギー国債の格付けを「AA+(ダブルAプラス)」から「AA(ダブルA)」に1段階引き下げ
11/29EUユーロ圏財務相会合でEFSFの規模拡大策を正式決定。(現在の融資能力は4400億ユーロ) また、ギリシャ向け80億ユーロの融資も承認し、ギリシャのデフォルト(債務不履行)はひとまず回避される。アイルランド向け85億ユーロの融資も承認
11/30ベルギー 連立政権樹立合意で530日間以上も正式な政府が不在となっていた状況を解消へ

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■今後のユーロの行方は?
EU首脳会議前に考えられていた、
・ECBがお札を刷る。
・ユーロ債を発行する。
・財政統合する。
などの方針の内、財政統合のみが話し合われ、その結論も「先送り」と言った感が強い。
この結果をもたらした駆け引きが、上記年表に現れているように思います。
A.EU各国の政権交代、首相交代が頻発。
イタリア マリオ・モンティ首相は欧州委員であるし、ギリシャ ルーカス・パパデモス首相は2002年から2010年まで欧州中央銀行の副総裁を勤めていたことから考えると、今回のEU首脳会議も上記の伏線として、欧州貴族&ロスチャイルドの巻き返し策の様にも感じるのです。
欧州統合に向けて各国の政権の押さえを進めてきたと言えるのではないでしょうか。
B.格付け会社によるユーロ圏各国の国債格付けの評価の落とし込みや、CDS債(金融商品)による格付け▼の追い込み。
ユーロの信用失墜や金融規制に対抗しつつ、ドル相対評価の回復やEU経済圏の崩壊をねらった英米の金融攻撃がしっかり見て取れます。イギリス発のユーロ崩壊説のプロパガンダなどもありました。
また、IMFを通しての財政危機への介入というのも気になるところです。ユーロの信用が失墜する中、資金を集めるにはドル建てのIMFという選択もわからなくはありませんが、IMFはアメリカの意向が強い機関なので、どの様な政策を押しつけてくるかもわかりません。おまけに、IMFを通すと言うことは何%かの利ザヤをIMFに提供するようなものです。そもそも、IMFに供出する資金などいまのEU各国にあるとは思えません。
崩壊への道(ヨーロッパ) [9]
ただ、少しかいま見えたのはA・B両勢力の対峙している構造のように思います。
脱市場とまでは行きませんが金融経済に対する懸念から実体経済へと舵を切り出そうとしている欧州勢力と相変わらず金融経済のうまみを追い求めているかのような英米勢力という構造です。
しかし既に、イングランド銀行を始め、ECBそのものからしてユーロ崩壊に備えて危機管理対策に入っているとのニュース(欧州中銀当局がユーロ圏分裂を想定、システム保護を優先へ [10])もあり、ユーロ崩壊のへの状況は、予断を許さない(先送りも怪しい)状況となっています。
いずれにせよ、経済崩壊の根本には実体経済とかけ離れた架空経済の問題=市場拡大の幻想のツケが横たわっています。
欧州貴族&ロスチャイルドVSロックフェラーという見方、若しく、はドイツを中心としたEU各国VS英米という見方ができると思いますが、この決着はどの様に着くのか?
既に死に体のアメリカのドル崩壊との関連は?
そして、日本への影響は?
とまだまだ気になることだらけですが、経済崩壊のタイミングがどうなるか?ということに行き着くのではないでしょうか。
そのタイミングはユーロ圏だけでなく中東、ロシア、中国などの動きとともにウォッチしていきたいと思います。

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