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エネルギー市場はどうなっている?(13)〜エネルギー消費ダウンサイジングの可能性①−エネルギー消費俯瞰

前回記事では、エネルギー戦略の課題の一つとして、エネルギー資源の自給可能性を検討しました。エネルギー獲得という視点では、新エネルギー開発を含めたエネルギー自給と、他国からのエネルギー資源の輸入という方針が考えられますが、今後の日本の存続を考えるにあたっては、それだけでは不十分です。
 
金融リセットは日本にとって、金貸し支配の構造から脱却する大きなチャンス「エネルギー市場はどうなっている?(12)エネルギー自給の可能性とそれを阻む壁は何か?」 [1]より)
 
そのチャンスを前に、わたしたちが想定しておかなければならないこと。それは、わたしたちの絶対的なエネルギー消費量を減らすということです。
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ということで、今回のテーマは「エネルギー消費量はどこまで縮小できるのか?」☆+゜
その可能性を探るため、まずは日本のエネルギー消費を俯瞰してみましょう。
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■エネルギー消費俯瞰☆ (グラフは全てエネルギー白書2010 [3]より)
エネルギー消費の削減を考えるには、まず現状の把握から。今のわたしたちの生活で消費しているエネルギーの状況を、ざっくりと概観してみましょう。
          【エネルギー最終消費構成】
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上のグラフは1973年からのエネルギー最終消費構成を表しています。エネルギーの消費先から、産業部門、民生部門、運輸部門にわけることができます。民生部門は、そこからさらに業務家庭の二部門にわけることができ、また運輸部門には貨物・旅客の両方が含まれています。
※業務部門というのは、企業の管理部門等の事務所・ビル、ホテルや百貨店、サービス業等の第三次産業のことを言い、産業部門は製造業、農林水産業、鉱業、建設業等のことを指します。
以上の分類に則って、それぞれがどんなエネルギー消費状況なのか確認していきましょう♪
まずは、3つの部門の中で1973年からの拡大が一番大きい(2.5倍)民生部門から☆


<民生部門>
【民生部門を構成する業務部門と家庭部門の割合】        【業務部門の内訳】
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民生部門はエネルギー消費全体の33.8%を占めていたので、そのうち41.3%の家庭部門は、エネルギー消費全体では約14%、58.7%の業務部門は全体消費の約20%を占めています。1965年からの伸びを見ると、特に業務部門の膨らみ方が大きいですね。
右のグラフを見ると、必要性の高い学校や病院を合算した消費エネルギーより、娯楽産業のエネルギー消費の方が大きくなっているのがわかります。
また、わたしたちに身近なオフィスの中のエネルギー(業務部門全体の20%程)を覗いてみると、エアコンなどの空調設備で43.1%、それから照明やコンセント(PCもここ)で42.4%消費しているそうです。両者とも1960年にはまだ全然普及していなかった設備ですが(PCは登場さえしていない)、もう既に日常で欠かせないものになっています。
[7]【オフィスのエネルギー】
同じく民生部門に属する家庭エネルギーの消費内訳はどうなっているでしょうか。
世帯ごとのエネルギー消費は、65年と比べて約2.2倍に増えています。世帯人数は減少しているはずですので、個人単位の消費で見ればもっと膨らんでいるのは明らかで、下のグラフから約4.6倍であることがわかります。
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また、このグラフから、エネルギー消費増大のもう1つの要因がはっきり浮かび上がってきます。それが「世帯数の増加」です。
経済産業省の「民生部門のエネルギー消費動向について」 [10]によると、例えば、90〜98年の家庭でのエネルギー消費の増加について100の増加があるとするなら、72.6が世帯数の増加によって規定されているとのこと。
また同調査では、業務部門におけるエネルギー消費増大の要因についても言及しており、同じく90〜98年の増加を100とするなら、93.1が「床面積の増加」に因ると特定しています。


続いて、運輸部門を覗いてみましょう♪
<運輸部門>
1965年と比較して、エネルギー消費量は貨物部門では4.4倍、旅客部門では6.5倍に増大しています。しかし、その中身に関して言えば、実は、公共交通の鉄道は65年からたった1、2割増えただけで、バスでもせいぜい1.7倍です。圧倒的に増えているのは、「乗用車」。旅客部門でエネルギー消費の大半を占めています。
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乗用車の燃費は65年当時から確実によくなっているはずですが、総エネルギー量は12倍近くに増大。ちなみに65年の人口は1億弱。台数も交通量も格段に増えています。


最後に、3つの部門の中で唯一、総エネルギー量を73年比90%に減らしている産業部門を見てみましょう☆
<産業部門>
産業部門は65年から高度経済成長に向かって拡大しますが、70年代以降大きな変化を見せず、むしろ2008年度、GDPと共に沈んでいます。
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エネルギー消費量を増やすことなく横ばいにしながら、それでもGDPがあがり続けたのは、日本のエネルギー効率が常に向上していったからでしょう。
上記の図を見れば一目瞭然ですが、産業部門を占めるのは、そのほとんどが「製造業」です。ものづくり大国であった日本の軌跡が見えてきます。


いかがでしたか?
エネルギー消費がここまで膨らんできたのは、個人単位での消費増加にプラスして、世帯数の増加やオフィス面積が増えたこと、それから娯楽・余暇産業が盛んになったことなどが要因として浮かび上がってきました。
続きの次回は、現在のエネルギー実情の背景を捉えた上で、エネルギー消費を削減するためにわたしたちはどんな方針が採れるのか、考えてみたいと思います。

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