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『なぜ今、TPPなのか?』【4】世界に広がるブロック経済圏の現状(2):北中米、南米

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前回は、ブロック経済圏の現状として、EU(欧州)を調べました。
EUでは、域内での構成国間の産業構造の違いから、経済格差が拡大している状況が分かりました。
EU成立後、北中米で成立したNAFTA、南米で成立したメルコスール。これらのブロック経済圏の現状はどうなっているのでしょうか?引き続き調査しました。
『なぜ今、TPPなのか?』の過去記事については、以下を参照願います。
【1】プロローグ [1]
【2】基礎知識の整理 [2]
【3】貿易自由化交渉の歴史 [3]
【4】世界に広がるブロック経済圏の現状(1):欧州 [4]
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■NAFTA:北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement)
●NAFTAの成立過程
・1989年に米加自由貿易協定(USA‐Canada Free Trade Agreement)
・これにメキシコが加わり、北米貿易協定に1992年12月署名、1994年1月1日に発効
・参加国:アメリカ、カナダ、メキシコ
・域内人口:約4億5751万人(2010年値)
       アメリカ約3億1085万人、カナダ約3433万人、メキシコ約1億1232万人
・GDP:約17兆1,918億ドル(アメリカが約14兆6,241億ドル)
     (参考:EU27か国、域内人口:約5億0210万人、GDP:約16兆1,068億ドル)
北米自由貿易協定とは、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコの3国で結ばれた自由貿易協定である。
米国は、南北アメリカに自由貿易地域を拡大する方針であった。NAFTA成立以降、域内の貿易は拡大し、特にメキシコの発展に伴いアメリカとメキシコの貿易が大幅に拡大している。言い換えると、米国の企業や製品が大量にメキシコ国内に流入し、農業などの国内経済を圧迫している。
・メキシコ国内の生産・販売・輸入などの全農業部門で多国籍企業の支配が強まった。
・メキシコは、トウモロコシ・コメ・大豆の輸入が増大し、さらに牛肉が4倍以上の輸入へ。
参考:リンク [5]
○EU及び東アジア兼の経済発展に焦ったアメリカが、NAFTAを押し進めた。

EU統合の進展、東アジアの経済発展に脅威を感じたクリントン米政権がメキシコ加盟に対する国内の根強い反対を押し切って成立させた。一方、メキシコでは累積債務問題をとりあえず解消させたサリナス大統領(当時)が、対外開放政策によって成長軌道の定着を望んでいた。この協定をきっかけに米国からメキシコへの投資が伸び、またメキシコから米国、カナダへの輸出が伸びた。

○次々と各国と自由貿易協定を進めていくアメリカ。

なお、米国は00年10月にヨルダンと自由貿易協定を締結したのを始め、03年には6カ国目となるチリと合意、さらに04年5月に入って中米6カ国とCAFTA(中米自由貿易協定)を締結したが発効時期は未定。またメキシコは独自に00年7月、EUとの自由貿易協定を発効させた。

以上参考:リンク [6]( 石見徹 東京大学教授 )
●NAFTAの実態
アメリカ、カナダ、メキシコのNAFTAの実態は、どうだったのか?
結局、多国籍大企業は、儲かったが、アメリカ、カナダ、メキシコの庶民はより貧しくなった。日本の農業は 補助金をもらって保護されているという意見があるが、アメリカは、日本より多くの補助金を与え、農業を保護している。 日本のような減反はない。
余剰の作物をダンピング価格で輸出→その結果メキシコの農業が壊滅。
食糧価格は、自由化で、流通を2大企業が独占し利潤を上げているので、安くならない。
一方アメリカでも、メキシコに工場が移ってしまい、失業か、低賃金労働者へ。そのメキシコでも、より安い労働者がいる中国に企業が移りつつあり、農業の失業者を全て吸収できるほどの 雇用は生み出せていない。
NAFTAの自由化で、一般市民は、貧しくなっている。 巨大な多国籍企業が巨大な利益を手に入れているだけ。  だから、アメリカでも NAFTAやTPPに反対が多い。 完全自由化でできあがる世界は、1%の大儲けの巨大企業と 99%の庶民の犠牲。
*参考となる動画サイト他 
NAFTAの実態をアニメで [7]
NAFTAで、メキシコは 農業が壊滅的被害。 日本の農業の将来を占う事ができる [8] 
カナダ農業はNAFTAで巨大アグリ企業に乗っ取られた [9]
TPP参加 無関税化は何をもたらすか/NAFTA発効17年 メキシコにみる/農業壊れ“国の主権失う”/輸入農産物依存45%・離農4割 [10]
メキシコの惨状・・・NAFTAの実体 [11]
■メルコスール:南米南部共同市場(Mercosur)
●メルコスールの成立過程
・1995年に発足した関税同盟。
・現在加盟国:ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチン、ベネズエラ(2005年〜)
 (準加盟国:コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、チリ)
・域内人口約2億5千万人(2010年)
・域内GDP合計約2.5兆ドル(2010年世銀)
 (参考:NAFTA:約17兆1,918億ドル、EU27か国:約16兆1,068億ドル)
南米域内での関税撤廃と貿易自由化を目的として、1995年に発足した関税同盟。
○アメリカ抜きで進められたメルコスール
メルコスールの発足及び発展は、米国抜きで進められている。
以下、外務省「南米南部共同市場(メルコスール)の概要」 [12]より。

1994年12月の第1回米州サミットにおいて、北米、南米及びカリブ(キューバを除く)の34カ国がFTAAの創設に取り組むことで一致。
2005年1月までに協定交渉を完了の上、同年中に右を発効させることを目指していたが、包括的な協定を目指す米国(但し、農業補助金やアンチダンピング等の非関税障壁を含めることには消極的)とサービス・投資・知的所有権等を含めることに消極的なブラジルの両議長国間で意見の相違があり、2005年11月の第4回米州サミット(アルゼンチン、アルデルプラチ)においてメルコスール4か国とベネズエラが交渉再開に反対。FTAA交渉は実質上中断に追いこまれた。なお、FTAAの9つの交渉委員会は2004年以降一度も会合が開かれていない。

その後、ベネズエラはメルコスールに加わり、現在に至っている。
●メルコスールの実態
○大国ブラジルとアルゼンチンが、GDP構成比のほぼ100%を占める。
メルコスールは、発足当初より、大国であるブラジル・アルゼンチンと、小国のウルグアイ・パラグアイとの経済規模の差が著しく、その経済格差も大きいため、メルコスールの目的である共同市場や関税同盟の生成が懸念されていた。
その構造は現在でも同じ。各国GDP・輸出入額のいずれにおいてもブラジル(及びアルゼンチン)と、小国との差は歴然である。
・域内のGDP構成比:ブラジル78%、アルゼンチン20%、パラグアイ0.8%、ウルグアイ1.7%
○ブラジルは、域内より域外貿易が主へ移行
90年代半ば以降は輸入が輸出を上回り、その結果貿易収支も赤字を計上していた。
2001年以降は輸出入が逆転し、02年以降の輸出の伸びが著しく、ブラジルの対メルコスール貿易を見ると、貿易黒字が上昇。
ブラジルの対メルコスール輸出入は、98年をピークに上昇傾向であったが、2000年以降、ブラジルの対メルコスール輸入は下降していく。
特に輸入の参加比率の縮小が著しく、メリットが得られる自由貿易圏でありながら、メルコスールはブラジルにとって全体の10%未満 の市場となった。
ブラジルが共同市場の中よりも域外から物品を求めている動きがわかる。ブラジルの主要輸入相手国は、EU、米国、アルゼンチンであるが、昨今はアルゼンチンに代わり、中国からの製品流入が著しい。
このように、メルコスールはブラジル経済にとっては通商インパクトが極めて小さく、ブロック内での貿易シェアは全貿易の10%にも満たない。こうしたことから、政府にとってメルコスールは優先事項ではなく、ブラジルに通商・経済的な打撃を与えるほどのものでない限り、域内に散在する諸問題へも注意が向けられず、したがって域内の問題解決がお座なりにされ、小国の不満を招いているとの指摘も多い。
参考:揺れ動くメルコスール  −ベネズエラ加盟とブラジルの反応− [13]
■まとめ
○NAFTA
・メキシコの発展に伴いアメリカとメキシコの貿易が大幅に拡大。
・米国の企業や製品が大量にメキシコ国内に流入し、農業などの国内経済を圧迫。
・メキシコの食料主権が深刻に脅かされている。
・カナダ・メキシコ国内の生産・販売・輸入などの全農業部門で多国籍企業の支配が強まっている。
・メキシコのトウモロコシ・コメ・大豆の輸入が増大し、さらに牛肉が4倍以上の輸入
金貸し多国籍企業が儲かり、各国国民が損をする構造が浮き彫りになってきた。
○メルコスール
・米国を排除し、金貸し多国籍企業の影響は少ない。
・ブラジル巨大国家と小国のブロック経済圏のため、EU圏と同様に国家間の格差が拡大していく。
・巨大国家にとって、ブロック経済圏内の貿易比率が下がり、圏外との貿易が主となる。
ブロック経済圏と言えど、EUのドイツ、メルコスールのブラジルと、最もGDP比率の高い国(資本力のある国)の影響力が強くなり、国家間の格差が一段と拡大していく。
ブロック経済圏については、金貸し支配に加え、ブロック経済圏そのものの構造的欠陥があるのではないだろうか?引き続き追求していきます。
次回は、引き続き世界に広がるブロック経済圏の現状(3)として、アジアについて調査して行きます。
お楽しみに・・・・

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