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『なぜ今、TPPなのか?』【6】世界に広がるブロック経済圏の現状③:アジア

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<画像はこちら [1]からお借りしました。>

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
さて、『なぜ今、TPPなのか?』シリーズですが、前回は北中米・南米のブロック経済圏について追究しました。
そこで今回は、【6】世界に広がるブロック経済圏の現状③:アジア ということで、アジアのブロック経済圏に焦点を当てます。
ブログ応援よろしくお願いします。


今回はアジアのブロック経済圏として ■ASEAN ■日本と東南アジアのFTA ■米韓FTA という3つのブロック経済圏について追究します。
■ASEAN(Association of South‐East Asian Nations)
●成立過程
・1961年に設立された東南アジア連合 (ASA) が前身であり、タイ、フィリピン、マラヤ連邦(現マレーシア)の3か国が結成した。
・1967年8月、タイのバンコクでASAを発展的に解消する形でASEANが設立された。
・原加盟国はタイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシアの5か国で、いずれも反共主義の立場を取る国であった。
・1995年、共産党一党独裁のベトナムを受け入れ、反共から東アジア地域共同体へ。
・現在の加盟国は、インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイ、ミャンマー、マレーシア、カンボジア、ラオス、シンガポール、ブルネイの10カ国。
参考:リンク
●概要
・本部:インドネシア ジャカルタ
・人口:5億8100万人(2009年)。欧州連合 (EU) や北米自由貿易協定 (NAFTA) より多い。
・GDP(購買力平価): 3兆800億米ドル(2010年:推定)
参考:リンク [2]
●日本とASEAN

2003年は日本ASEAN交流年とされた。記念切手の発行や人的交流、文化紹介の催しなど交流年を記念したイベントの開催や事業の実施が日本、ASEAN諸国各国で見られた。12月11日、12日には日本が各国首脳を招いて日・ASEAN特別首脳会議を開催した。また、2008年には日本・ASEAN包括的経済連携協定が締結され、2002年発効の日本・シンガポール新時代経済連携協定による自由貿易協定(FTA)をASEAN全域へ拡大するステップとなった。

参考:リンク [2]
●アメリカとASEAN

現在でもASEAN諸国(東南アジア)はアメリカにとって重要な市場かつ原料供給地である。また、中国による南沙諸島(スプラトリー諸島)支配などの南シナ海進出に対しては、これに反発し警戒するASEAN諸国の立場をアメリカが支持している。しかし、マレーシアのマハティール政権が「ルックイースト政策」でアメリカではなく日本を経済発展のモデルとし、国民車構想で自動車産業の自立を進めるなど、経済面ではASEANとアメリカとの間にさざ波が立つ事がある。アジア全体の経済や国際世論をリードしようとするASEANの狙いは1996年にASEM開催として結実したが、自国抜きで多国間協調が深化する構図に対してアメリカは警戒感を隠さず、東アジア共同体提唱に対するアメリカの反発などに繋がっている。

参考:リンク [2]
●実態
・他の地域経済統合体との比較(2010)

[3]

ASEANは人口規模において他の地域経済統合体を上回るものの、経済規模ではEU及びNAFTAを大きく下回る。
参考:リンク [4]
・ASEANの貿易
[5]

ASEANの貿易収支は1998年以降黒字を記録している。
参考:リンク [4]
・ASEANの域内貿易状況
[6]

域内での貿易量(輸出量・輸入量)は年々増えている。
参考:リンク [7]
・東アジアの総貿易額の推移
[8]

東アジアにおいて国境を越えた部品調達が行われる等、高度な分業体制が構築されている。
参考:リンク [9]
■米韓FTA
●成立過程
・交渉は2006年2月2日に開始され、2007年4月1日に締結され、米国で2011年10月12日に批准された。その後韓国の批准待ちの状態にある。2011年10月28日に米韓FTAに反対するデモ隊が国会に乱入し、67人が逮捕された。
・両国の議会によって批准されると、条約に沿って5年以内に95%の品目への関税を撤廃する。
●実態

(1)サービス市場開放のNegative list
サービス市場を全面的に開放する。例外的に禁止する品目だけを明記する。
(2)Ratchet条項
一度規制を緩和するとどんなことがあっても元に戻せない、狂牛病が発生しても牛肉の輸入を中断できない。
(3)Future most-favored-nation treatment
未来最恵国待遇:今後、韓国が他の国とFTAを締結した場合、その条件が米国に対する条件よりも有利な場合は、米にも同じ条件を適用する。
(4)Snap-back
自動車分野で韓国が協定に違反した場合、または米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと米企業が判断した場合、米の自動車輸入関税2.5%撤廃を無効にする。
(5)ISD:Investor-State Dispute Settlement
韓国に投資した企業が、韓国の政策によって損害を被った場合、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴できる。韓国で裁判は行わない。韓国にだけ適用。
(6)Non-Violation Complaint
米国企業が期待した利益を得られなかった場合、韓国がFTAに違反していなくても、米国政府が米国企業の代わりに、国際機関に対して韓国を提訴できる。例えば米の民間医療保険会社が「韓国の公共制度である国民医療保険のせいで営業がうまくいかない」として、米国政府に対し韓国を提訴するよう求める可能性がある。韓米FTAに反対する人たちはこれが乱用されるのではないかと恐れている。
(7)市場開放の追加措置
韓国政府が規制の必要性を立証できない場合は、市場開放のための追加措置を取る必要が生じる。
(8)米韓FTAの優先適用
米企業・米国人に対しては、韓国の法律より韓米FTAを優先適用  例えば牛肉の場合、韓国では食用にできない部位を、米国法は加工用食肉として認めている。FTAが優先されると、そういった部位も輸入しなければならなくなる。また韓国法は、公共企業や放送局といった基幹となる企業において、外国人の持分を制限している。FTAが優先されると、韓国の全企業が外国人持分制限を撤廃する必要がある。外国人または外国企業の持分制限率は事業分野ごとに異なる。
(9)知的財産権を米が直接規制
例えば米国企業が、韓国のWEBサイトを閉鎖することができるようになる。韓国では現在、非営利目的で映画のレビューを書くためであれば、映画シーンのキャプチャー画像を1〜2枚載せても、誰も文句を言わない。しかし、米国から見るとこれは著作権違反。このため、その掲示物い対して訴訟が始まれば、サイト閉鎖に追い込まれることが十分ありえる。非営利目的のBlogやSNSであっても、転載などで訴訟が多発する可能性あり。
(10)公企業の民営化

参考:リンク [10]
参考:リンク [11]
参考:リンク [12]
米韓FTAで、韓国が得たものは米国での関税の撤廃。しかし、韓国が輸出できそうな工業製品についての米国の関税は、既に充分低いと言えます。例えば、自動車はわずか2.5%、テレビは5%程度しかありません。そもそも韓国は、自動車も電気電子製品も既に、米国における現地生産を進めているので、関税の存在は企業競争力とは殆ど関係がありません。これは、言うまでもなく日本も同じです。グローバル化によって海外生産が進んだ現在、製造業の競争力は、関税ではなく通貨の価値で決まっています。
■日本と東南アジアのFTA
●日本のEPA
世界のFTAネットワークが拡大する中、長い間GATT/WTOの多国間貿易体制を支持してきた日本でもFTAを求める声が高まり、2001年1月に開始されたシンガポールとのEPA交渉の開始により日本のFTAの歴史が幕を開けることとなった。シンガポールとの交渉を経て、2002年11月に日本にとって初めてのEPAが発効した。
日本は、シンガポールとのEPAを弾みとして、一気にEPA戦略を推し進めることになります。2005年4月にメキシコ、2006年7月にマレーシア、2007年9月にチリ、同年11月にタイ、2008年7月にインドネシアとブルネイ、2008年12月にはフィリピンとの間で次々とEPAを発効させていきます。
●日本とFTA/EPAを結んでいる国
【締結国】
・シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、フィリピン、ASEAN、スイス、ベトナム
【交渉段階の国】
・モンゴル、GCC、インド、豪州、ペルー
参考:リンク [13]
以上のように、日本は2001年以降アジアの国々を中心に二国間FTAを進めており、既に11カ国とEPAを結んでいる。
■まとめ
●ASEAN
1998年以降貿易収支は黒字を維持し、域内での貿易量も年々増え続け、それぞれの国ごとに高度な分業体制を構築しています。経済規模では、EU及びNAFTAに及ばないものの順調に成長し続けていると考えられます。
●米韓FTA
結果として、米韓FTAは韓国にとって極めて不利な結果に終わったと言えます。更に現在韓国では、対外債務がどんどん膨れ上がり、7行の銀行(トマト貯蓄銀行、第一貯蓄銀行、第一2貯蓄銀行、プライム貯蓄銀行、エース貯蓄銀行、テヨン貯蓄銀行、バランセ貯蓄銀行)では負債が資産を上回り、営業停止となったりしているなど経済破綻に陥る直前の状況のようです。(参考:リンク [14]
●日本とアジアのFTA
日本は、2001年以降アジアの国々を中心に二国間でのFTA締結を進めていて、お互いにメリットが生まれるようなFTAを結んでいるようです。今後の動向に注目です。
日本がTPPに加盟する場合、交渉参加国の経済規模のシェアが日米で9割を占めることから、多国間協定とは名ばかりで、実質的には“日米FTA”とみなすことができます。
TPPと米韓FTAは前提や条件が似通っており、韓国が飲んだ不利益をみればTPPで被るであろう日本のデメリットは明らかであり、TPP加盟によって日本は韓国の二の舞になる可能性が高いと考えられるのではないでしょうか。
次回は、【7】中国はどう見ているか?を探っていきます。お楽しみに!

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