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脱金貸し支配・脱市場原理の経済理論家たち(1)プロローグ

現在、世界経済は崩壊の淵に立たされています。実体経済から遊離し、国境を越えて膨れ上がったマネー経済は、21世紀に入ってその膨張限界を迎えて崩壊。何千兆円の損失は国家に押し付けられ、挙句の果てに米欧をはじめ全ての先進国で国債と通貨の暴落危機を招いています。国債経済とグローバル金融資本主義の終焉です。
 
しかし過去を遡れば、現在の危機的状況は、’80年代の日本のバブル、’70年代ニクソンショック、さらには戦後ブレトンウッズ体制の必然的な帰結でもあり、金融資本(金貸し)を頂点とし、市場原理によって動いてきた近代以来の経済システム全体が終焉を迎えているのだと考えられます。
 
こうした中、このような現代の経済システムに異議を唱えてきた過去〜現代の経済理論家たちの存在感が次第に増してきています。彼らはこれまで経済の世界では異端・傍流でしかありませんでしたが、世界経済が混迷の度を強める中で、その指摘の正しさが改めて見直されているのだと考えられます。
 
今回のシリーズでは、こうした脱金貸し・脱市場原理の経済理論家たちの思想や学説から、次代の経済システムのヒントを見つけてみたいと思います。
 
いつも応援ありがとうございます。


今回のシリーズで扱いたいと考えているのは、次の9名です。

①カール・ポランニー(Karl Polanyi、1886年10月21日 – 1964年4月23日)
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人間の経済原理の一部が肥大化したものが市場経済だとする。市場経済の世界規模での拡大は、人類史において普遍的な状況ではなく、複合的な経済へ戻ると考えた。
(中略)市場経済は人間(労働)、自然(土地)、貨幣を商品を見なすことにより多くの人間を破局へ追い込んだと指摘した。イギリスの事例として、囲い込みやスピーナムランドを取り上げた。さらに、市場経済化による欧米の破局は、欧米以外の地域における文化接触による破局と同質であると指摘し、インドの村落共同体の破壊、アメリカでのインディアン居留地などを例にあげる。
(Wikipediaカール・ポランニーより) [1]

②ミヒャエル・エンデ(Michael Ende, 1929年11月12日 – 1995年8月28日)
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エンデは1994年に、NHKに新しい番組の企画を提案した。それは現代の貨幣システムを扱ったもので、環境・貧困・戦争・精神の荒廃など、現代のさまざまな問題にお金の問題が絡んでいる、という。「そこで私が考えるのは、もう一度貨幣を実際になされた仕事や物の実態に対応する価値として位置づけるべきだということです。そのためには現在の貨幣システムの何が問題で何を変えなければならないかを皆が真剣に考えなければならないでしょう。人間がこの惑星上で今後も生存できるかどうかを決める決定的な問いだと私は思っています。重要なポイントはたとえばパン屋でパンを買う購入代金としてのお金と株式取引所で扱われる資本としてのお金は2つの全く異なった種類のお金であるという認識です」とエンデは語り、お金の問題を明らかにする。
(Miguelの雑学広場より) [2]

③シルビオ・ゲゼル(Silvio Gesell, 1862年3月17日 – 1930年3月11日)
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彼の主著「自然的経済秩序」では、あらゆるものが減価するのに通貨だけが減価しないために金利が正当化され、ある程度以上の資産家が金利生活者としてのらりくらり生きている現状を問題視し、これを解決するために自由貨幣、具体的にはスタンプ貨幣という仕組みを提案した。これは一定の期間ごと(1週間あるいは1月)に紙幣に一定額のスタンプを貼ることを使用の条件とすることで通貨の退蔵を防ぎ、流通を促進させ貸出金利を下げるのが目的である。他に、男性に経済的に依存することなく女性が子育てに専念できるようにするための、自由土地の思想に基づいた母親年金も提唱している。
作家のミヒャエル・エンデはゲゼルの影響を受けており、代表作の『モモ』は彼の思想から着想を得ていると述べている。
(Wikipediaシルビオ・ゲゼルより) [3]

④エルンスト・フリードリヒ・シューマッハ(Ernst Friedrich “Fritz” Schumacher、1911年8月16日 – 1977年9月4日)
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長年の石炭公社の勤務経験と経済学者としての分析から、石炭及び、その代替燃料としての石油の枯渇を予測し、原子力の利用についても警鐘を鳴らした。
1973年に刊行された『スモール イズ ビューティフル』は、その中でエネルギー危機を予言し、第一次石油危機として的中したことで世間の注目を浴び各国語に翻訳された。
(中略)著者は、来るエネルギー危機を本書で予言し、それは第一次石油危機として現実化した。また、大量消費を幸福度の指標とする現代経済学と、科学万能主義に疑問を投げかけ、自由主義経済下での完全雇用を提唱した。経済顧問として招かれたビルマで見た仏教徒の生き方に感銘を受け、仏教経済学を提唱した。
(Wikipediaエルンスト・フリードリッヒ・シューマッハーより) [4]

⑤サティシュ・クマール(Satish Kumar, 1936年 – )
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イギリスの思想家。インド西部ラージャスターン州の町シュリー・ドゥンガルガルで生まれ、9歳で出家しジャイナ教の修行僧となる。18歳のとき還俗。マハトマ・ガンディーの非暴力と自立の思想に共鳴し、2年半かけて、核大国の首脳に核兵器の放棄を説く1万4000キロの平和巡礼を行う。1973年から英国に定住。E.F.シューマッハー(イギリスの経済学者、『スモール・イズ・ビューティフル』の著者)とガンジーの思想を引き継ぎ、イギリス南西部にスモール・スクールとシューマッハー・カレッジを創設。エコロジー&スピリチュアル雑誌「リサージェンス(再生)」編集長。
(Wikipediaサティシュ・クマールより) [5]

⑥ヴァンダナ・シヴァ(Vandana Shiva、1952年11月5日 – )
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世界的に著名な思想家にして環境運動家。インドの首都ニュー・デリーを拠点に、科学・技術とエコロジー研究財団、ナヴダーニャ、多様性のための多様な女性、等の運動を主宰。1993年に「もう一つのノーベル賞」として知られるライト・ライブリーフッド賞を受賞。
(中略)ヴァンダナ・シヴァの名を世界的に一躍有名にしたのが、『緑の革命とその暴力』など、60年代に「緑の革命」として、北インド、パンジャブ地方を皮切りに導入された高収量品種が逆に環境を破壊し、人々を貧困に追い込んでいるという事実を暴いた一連の著作である。
(こちらのブログより) [6]

⑦ムハマド・ユヌス(Muhammad Yunus、1940年6月28日 – )
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バングラデシュにあるグラミン銀行 元総裁、経済学者である。マイクロクレジットの創始者。ユヌスは、現在の資本主義が、人間について利益の最大化のみを目指す一次元的な存在であると見なしているとする。これに対して人間は多元的な存在であり、ビジネスは利益の最大化のみを目的とするわけではないとユヌスは主張する。
(中略)ユヌスは、利益の最大化を目指すビジネス(PMB)とは異なるビジネスモデルとして、「ソーシャル・ビジネス」を提唱した。ソーシャル・ビジネスとは、特定の社会的目標を追求するために行なわれ、その目標を達成する間に総費用の回収を目指すと定義している。また、ユヌスは2種類のソーシャル・ビジネスの可能性をあげている。一つ目は社会的利益を追求する企業であり、二つ目は貧しい人々により所有され、最大限の利益を追求して彼らの貧困を軽減するビジネスである。
(Wikipediaムハマド・ユヌスより) [7]

⑧宇沢弘文(うざわ ひろぶみ、昭和3年(1928年)7月21日 – )
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東大理学部数学科を卒業後に経済学に転向し、近代経済学者として東大名誉教授となり、現在は同志社大学社会的共通資本研究センター長。
ジョセフ・E・スティグリッツ教授は宇沢教授の門下生の一人。
宇沢教授のいう社会的共通資本とは「市民一人一人が人間的尊厳をまもり、魂の自立をはかり、市民的自由が最大限に保たれるような生活を営むために重要な役割を果たすような財」のこと。
このような性質を持つため、これらの財は、私有や私的管理が認められず、社会の共通の財産として、社会的な基準にしたがって管理・維持されるものとしている。
(本ブログ記事より要約) [8]

⑨ロン・ポール(Ronald Ernest “Ron” Paul, 1935年8月20日 – )
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ポールはオーストリア学派の経済哲学を信奉している。これは、中でも特に、貨幣供給に対する政府の統制は、結果的に経済的非効率と通貨不安を引き起こす、という学説を持つ。
(中略)内国歳入庁、教育省、エネルギー省、国土安全保障省、連邦緊急事態管理庁、州際通商委員会といった連邦政府機関を、必要のない役所仕事だと言って、これらの大部分の廃止を主張している。また彼は、銀本位制や金本位制といった兌換紙幣に賛成している。また、自由貿易が金利と貨幣供給を決定した時経済の不安定さは減少するのであり、また、国債は政府の支出に応じて発行されていて、連邦準備制度は、抑制のない膨張した貨幣供給を政府が行うのを許可してしまっている、といった理由から、連邦準備制度中央銀行の段階的廃止を提唱している。
(Wikipediaロン・ポールより) [9]

さらに、上に挙げた経済理論家の思想以外に、「利息を取らない」金融システムとしてここ数年注目が高まっているイスラム金融、そして、200年前には世界最大の都市を維持してた江戸の経済システムについて追求し、その中から次代の経済システムのヒントを探ってみたいと思います。
 
次回はまず、自由市場経済批判の大御所と言える、カール・ポランニーを紹介していきます。お楽しみに!

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