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2012年、新興国はどう動く?(1)プロローグ

正月のエントリー [1]でも触れたように、今年は世界が大きく激動する可能性があります。米・欧といった前世紀の覇権国の衰退が明らかになり、ドル・ユーロという国際通貨システムも崩壊の危機に瀕しています。国家関係というレベルでも金貸しの覇権闘争いうレベルでも、世界の勢力図が大きく塗り替わってゆくでしょう。
 
これからの世界の行方を読む上で、欧米など先進国と同等以上に注目されるのが「新興国」の情勢です。先進国を足場にした金融支配体制が崩れ始め、金貸し勢力は新興国市場に生き残りの活路を見出そうとしています。新興国も、これまでの欧米主導の世界からイニシアティブを握るべく動きを強めるでしょう。
 
そこで、本シリーズでは、注目される新興国の最近の情勢から、金貸したちがどのように手を伸ばし始めているのか、新興国の民族派や反金貸し勢力はこれにどう対応しようとしているのか?を探りたいと思います。
 
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さて、実は「新興国」という言葉の意味は曖昧で、時代によっても異なります。
Wikipedia [2]によれば、21世紀以降使われている「新興国」には、近年急速に経済力をつけてきた次のような国々を指す場合が多いそうです。
BRICS [3]
経済発展が著しいブラジル(B)ロシア(R)、インド(I)、チャイナ(C)の4ヶ国。2001年にゴールドマン・サックスのエコノミストによって名づけられた。2011年に5ヶ国目の南アフリカ(S)が加わり、BRICs→BRICとなった。
[4]
 
NEXT11 [5]
BRICsに次ぐ急成長が期待される国として、やはりゴールドマンサックスが2007年に名づけた11ヶ国(イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、メキシコ)。
[6]
 
VISTA(ヴィスタ) [7]
日本人エコノミスト門倉貴史が提唱した、BRICsに続く経済発展が見込まれる5ヶ国(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)
[8]
 
MENA(ミーナ) [9]
MENAは「Middle East(中東)」と「North Africa(北アフリカ)」の頭文字。ポストBRICsとして注目される市場で、具体的には主にサウジアラビア、アラブ首長国連邦 (UAE) 、クウェート、カタール、オマーン、バーレーン、トルコ、イスラエル、ヨルダン、エジプト、モロッコの11カ国を指す。
[10]
 
本シリーズではこの中から、今年の国際政治・経済情勢から見てキャスティングボードを握ると考えられる6地域について、次のポイントに着目して扱ってみたいと思います。
 
■ロシア
なんといっても3月の大統領選が要注目。下院選での不正疑惑、ロシア経済の鈍化が理由と報道される昨年末からの反プーチン運動は、多数の国民の意思なのか?それとも何者かの先導なのか?プーチンは再選を果たし、どのような政策を打ち出すのか?
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■ブラジル
世界7番目の経済規模を誇る南米最大の国家。2014年FIFAワールドカップ、2016年には夏季オリンピックが初開催の予定。反米国家を明言し、近年中東に匹敵するという油田が発見されたブラジルに対する国際金融資本の支配はどの程度進んでいるのか?
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■アフリカ
その豊かな鉱物資源と開発可能性に世界中が注目する“地球最後の市場”。2年前から北部で進んでいる民主化運動はアフリカ大陸の市場拡大を加速させるのか?中国を筆頭とする現在の資源争奪戦の戦況は?
[11]
■中東
現在の焦点はなんといってもイランの核開発疑惑をめぐる経済制裁の行方。アメリカ(欧米金融支配勢力)が仕掛けるイラン締め付けの真の目的は?イスラエル、サウジなど中東諸国、ロシア、中国の対応は?中東戦争勃発の可能性は?
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■インド
30年後にはGDP世界一になるとも言われる“眠れる巨象”インド。華僑同様、在外インド人が成長のカギを握ると言われるインド経済の現在は?インドに対する金貸し支配はどの程度進行しているのか? 
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■中国
ドル=アメリカ崩壊のカギを握る中国の人民元政策はどこまで進んでいるのか?ここ数年騒がれ続けている中国自身のバブル崩壊の可能性は?秋に予測される胡錦濤から習近平への首席交代で、中国経済と国際関係はどこへ向かっていくのか?
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本日14日の台湾総統選で、親中派の国民党(マーインジウ)が独立派の民進党・蔡英文(ツァイインウェン)を抑え再選を決めました。2012年の世界情勢は既に動き始めています。次回は、まず3月大統領選挙を控えたロシア情勢を追求していきます。 

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