- 金貸しは、国家を相手に金を貸す - http://www.kanekashi.com/blog -

2012年、新興国はどう動く?(4)〜「最後の市場」アフリカを狙うのは?目を見張る中国の進出

この10年間で、世界で最も急速に成長した上位10ヵ国のうち、6ヵ国がアフリカの国だという。2000年までは、トップ10の9ヵ国はアジア勢が占めていた。北半球の経済減速の波及効果を考慮しても、アフリカの成長率は2012年も6%近くになると国際通貨基金(IMF)は予想している。また、IMFは今後5年間はトップ10のうちの7カ国をアフリカ勢が占めるとも言及した。
アフリカの成長の鍵となっているのは、まず何よりその豊富な資源。他国の進出も近年凄まじく、露骨な資源争奪戦が繰り広げられている。
しかしそれだけではない。過去4年間のアフリカのGDP成長の3分の2を規定したのは、モノやサービスに対する民間消費の急増であると言われている。2010年、南アフリカでのFIFAワールドカップ開催に象徴されるように、世界もアフリカ市場に注目しており、アフリカに市場化の波が押し寄せている。
%E3%81%8A%E3%81%A9%E3%82%8B%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB.jpg(画像はこちら [1]より)
「アフリカ連合の本部ビル完成を祝う人」 このビルを「贈り主」は…
(エチオピア首都 アディスアベバ)

また、隣接する中東での民主化の気運の高まり(アラブの春)を受け、2011年はアフリカにおいてもチュニジア(ベンアリ大統領がサウジアラビアに亡命)、エジプト(ムバラク大統領が辞任)、リビア(カダフィ大佐が死亡)と国家体制に大きな動きがあった。
内からも外からも何だか騒がしくなってきたアフリカ。「最後の市場」が動き出している。
今回は、新興国はどう動く?シリーズの”アフリカ”、第1回目です
いつも応援ありがとうございます


■アフリカ概要
アフリカ大陸の面積は世界の大陸面積の約22%。アフリカには54の国が存在し、人口は約10億人。
[2](画像はこちら [3]より)
過去にアフリカ分割という歴史をもつ。1880年代から、ヨーロッパの帝国主義列強によって激しくその支配権が争われ、1912年にたった2か国を除くアフリカ全土がヨーロッパのわずか7か国によって分割支配された。
「アフリカの年」と呼ばれる1960年頃から、各国は脱植民地化、独立を果たしていく。2002年にはアフリカ全体の中心組織として、アフリカ連合が成立。
アフリカの特徴として、資源の豊かさがある。原油、天然ガス、レアメタルを含む鉱物から、ダイアモンドまで、あらゆる資源がアフリカ大陸には眠っている。石油・天然ガスで言えば、世界の化石燃料埋蔵量の9%がアフリカにあるとされている。
■経済成長を遂げるアフリカ諸国
アフリカ全体のGDP成長率↓
[4](画像はこちら [5]より)
2010〜11年のGDP成長率が9%を超える国もある。


参考:アフリカの名目GDP順位 (2010年)
        (100万ドル)
1 南アフリカ   354,414
2 エジプト    216,830
3 ナイジェリア  206,664
4 アルジェリア 158,969
5 モロッコ     91,702
6 アンゴラ     85,808
7 リビア       77,912
8 スーダン     65,930
9 チュニジア    43,863
10 ケニア     32,417
(Wiki [6])
以下のグラフは、アフリカ主要国の実質GDP成長率の推移。
[7](画像はこちら [8]より)
  
高いGDP成長率を維持しているアフリカ、その「成長」の中身は???
[9](画像はこちら [10]より)
上記の図は、アフリカの主要諸国を、GDPの拡大が何に規定されているかを明示している。豊富な資源か、それとも内需の拡大か。アフリカには、今大きくその2つの成長の仕組みが存在する。
ナイジェリア・アルジェリア・アンゴラ・リビアはOPECにも加盟している、アフリカの中でも特筆の産油国。これらの国は、アフリカの中でGDPトップ10に入る。これにコンゴ共和国(まだ開発はあまり進んでいない)を加えた5か国は、輸出の8、9割が原油を占めている資源国家。これらの国は、豊富な資源をもとに外貨を獲得し、市場を拡大させていった。

店内では商品が2メートルもの高さに積み上がり、表の街路は客であふれ、店員は汗だくで押し寄せる客をさばいている。といっても、これは先進国の大通りで見られるクリスマスの買い物シーズンのひとコマではない。実はナイジェリア南部のオニチャにある市場の様子で、しかも、年中毎日こんな光景が繰り広げられているのだ。ここを世界最大の市場と評する人は多い。毎日300万人もの人が、コメや石鹸、コンピューターや建設機器を買うためにこの市場を訪れる。(JPpress [11]

一方で、南アフリカをはじめとする、エチオピア、ザンビアなどの国々は、資源も一定あるものの、そのGDP成長を規定している大きな要素は、消費=内需の拡大と思われる。
■アフリカの「成長」を裏支えするのは?
アフリカは、外国からの直接投資額(FDI)が、特に2005年頃から急な上昇を見せている
[12](画像はこちら [8]より)
アフリカは、植民地時代の名残もあり、もともと西側諸国とのつながりが強い。欧米勢は、アフリカの豊富な資源の開発にも参戦している。近年では、そこに新興国であるインドやブラジルも加わり、対アフリカの貿易額も大幅に増やして、アフリカ争奪戦にに食い込もうとしてきている。
しかし、これらの国以上に目立って、アフリカに露骨な進出を展開している国がある。それが中国。(以下の棒グラフを参照)上の直接投資額(FDI)の推移になぞらう形で、中国の対アフリカFDIが膨らんできているのがはっきりとわかる。
[13](画像はこちら [14]より)
 
 
中国は、アフリカの可能性に、ここまで入れ込んでいる。
 
  
■中国のアフリカ攻略

世界有数の銅産出国であるザンビア。資源獲得を狙う中国企業が大挙進出を続けている。中国の投資は2007年以後の累計で61億ドル(約4670億円)に達した。ザンビアのGDP(2010年)、3分の1に相当する規模となる。中国の投資に牽引され、銅採掘業は大きく成長。2010年、ザンビアは7.6%という高成長を達成した。(KINBRICKS NOW [15]

これはひとつの、アフリカ「成長」の事例である。

本気かどうかは別にしてアフリカ諸国で特に関係の深いザンビアを中国の省にしようとの声が挙がっており、実際にザンビアの大統領候補が選挙時「ザンビアは中国の省になりつつある」と発言するほどで、警戒心は年々強くなっている。ザンビアは代表的な例だが、こういった事件は中国が進出するアフリカ諸国では大なり小なり起きている。(EMeye [16]

中国は、資源を獲得するだけにとどまらず、インフラ整備も引っ提げてその国の市場に着実に入り込んでいく。
中国が、アフリカ諸国のどこに進出しているかだが、アフリカ54か国ほとんどの国に手をつけていることは確かだ。
 
 

中国は、過去2年間で、アフリカ連合加盟国54ヵ国中、中華民国(台湾)と国交を持つ5ヵ国を除く49ヵ国すべてに、副首相級以上の国家首脳を派遣している。さらに情報収集という観点から、ほとんどの国に中国国営新華社通信の特派員を常駐させている。(現代ビジネス [17]

今や中国は、石油消費量の31%がアフリカ頼り。石油輸入相手国は アルジェリア・アンゴラ・カメルーン・カボン・コンゴ共和国・スーダン・赤道ギニア・チャド・ナイジェリア・ニジェール・南アフリカ・モーリタニア・リビア…と13か国にものぼる。(日本は7か国)
中国の資源獲得になりふり構わない姿勢は、既に1995年頃からあらわれていた。中国の政府系エネルギー資源会社:中国石油天然ガスは1995年スーダンに進出しているが、このときスーダンは激しい内戦状態で、他国は進出を控えていた。その中で、中国だけは油田権益にまっしぐらに突き進んだのだ。この強硬な姿勢で勝ち得た権益は、日量約26万バレル(2011年実績)の石油という形で、中国に貢献している。(現在は、南スーダン独立により、スーダンの対中国原油輸出の先行きが混沌とした状態。)
 
最近では、中国のアフリカでの動きをピックアップする記事も多く、そのトピックを追っていくだけでも、中国の激しい進出ぶりが伺える。
 
 

米エコノミストによるアフリカ開発銀行元役員への取材によると、過去10年間にアフリカに来た中国人の数は、過去400年間に来たヨーロッパ人の数よりも多いという。(大紀元 [18]

54か国が加盟するアフリカ連合(=AU)の本部ビルが完成し、エチオピアの首都・アディスアベバで29日、落成式が行われた。建設費約153億円(2億ドル)は、中国政府が全て寄付した。
AU%E9%80%A3%E5%90%88%E3%83%93%E3%83%AB%E5%AE%8C%E6%88%90.jpgAU%E9%80%A3%E5%90%88%E3%83%93%E3%83%AB.jpg

(画像はこちら [19]こちら [20]より)

本部ビルの会議場では早速、首脳会合が開かれ、中国共産党ナンバー4・賈慶林氏が「本部ビルは中国政府と人民からの贈り物だ」と挨拶し、盛大な拍手を受けた。また、AUに今後3年で新たに73億円の援助を約束した。」(現代ビジネス) [21]

2012年1月30日、中国とアフリカの2011年の貿易総額は1600億ドル(約12兆2000億円)を超え、中国はアフリカにとって最大の貿易パートナーとなった。」(Yahooニュース) [22]

中国のアフリカ覇権は、知らぬ間にこんなにも広がっている。欧米も、公式の場での発言で何度か中国に牽制をかけてはいるが、中国の勢いは留まるところを知らない。
中国はアフリカの何を狙っているのか?

まず、国連の一国一票制度。アフリカには53の国がある。どんな国であっても一票は一票だ。台湾問題あるいは環境保護規制など、中国はこの一国一票制度を使い、自国に有利な票固めを行うことができる。
次に、資源の確保である。ガボンのポワントノワールの沖合赤道ギニア、ナイジェリアなど西アフリカは石油資源の宝庫だ。そして中国がすでにスーダンで石油開発を行っていることはよく知られている。さらに、アフリカの森林資源。カメルーン、コンゴの木材資源だ。そして南部アフリカの希少鉱物資源の安定確保である。
最後が輸出市場としてのアフリカだ。南アフリカでは、雨後のタケノコのように中国人運営のスーパーが設立され、広東省などからコンテナで安価な衣料品、靴、家電製品が輸出されているという。(三学経営科学研究所 [23]

 
アフリカには、中国のほしいものがそろっているのだ。
 
欧米のように、企業進出だけでないのが、中国のやり方。「ビジネス」の名のもとにモラルも飛び越え、とことん金も人も「総動員」して大陸に流入してくる。そこかしこに、文字通りの「チャイナタウン」をつくりあげる。

アフリカに流入する中国人は大きく分けて3種類ある。第一が外交官および国有企業の幹部、第二に中国からの借款で進められた建設プロジェクトを請け負う国有企業の従業員。第三が、個人の起業家だ。
中国のアフリカ進出は、援助の形をとらず、借款の形をとるのが最も一般的だという。ある国のプロジェクトに対し中国輸出入銀行が長期のファイナンスを提供する。プロジェクトは入札制だが、価格の安い中国企業がほぼ100%の確立で落札する。
そして落札した中国企業は、プロジェクトの実施に必要なものを従業員まで含め、丸ごと一式現地に持ち込む。
「ひも付き援助」というのは、日本政府もやっていたが、これほどまでにあからさまなものではなかっただろう。
なんのことはない、中国政府のお金で中国企業がアフリカでプロジェクトをやっているわけだ。お金が現地に落ちることはおとんどないという。
もちろん、プロジェクトを落札するため、裏金やコミッションが動く。 
アフリカを語るとき、その観点は旧宗主国との関係ではなく、中国との関係が主軸になるということを強く思い知らされた。
もはやアフリカにおいて中国は「点景」などではなく、旧宗主国をもしのぐ圧倒的な存在となりつつあるようだ。(三学経営科学研究所 [23]


ところで、これだけ露骨な覇権拡大の動きを見せる中国に対し、金貸し勢は何も手を打たずなのか?資源が開発段階にあり、市場が急速に拡大しつつあるアフリカ、そうもいかないはず。今シリーズ、アフリカ第2回目の記事では、そのサイドに注目して、改めてアフリカという国の今を明らかにしていきたい。
読んでいただき、ありがとうございます!
次の記事では、新興国「ブラジル」をクローズアップします。 お楽しみに♪

[24] [25] [26]