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経済の一般常識を検証する①:「為替介入」は日本にとって本当に必要なの?

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「為替介入」という言葉を新聞やニュースでよく耳にしますが、具体的にどうやっているのかを知っている人は少ないと思います。
 
そこで今日は、「為替介入」の仕組みを理解することで、
為替介入をするとどうなるのか? 本当に日本にとって必要なことなのか?
を検証します。
 
①日本の為替介入の仕組み
②買ったドルはどうするの
③為替介入って効果あるの
④為替介入すればするほど損している
⑤何か良い方法はないの
 
続きの前に ・・・いつもありがとうございます
 
 


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①日本の為替介入の仕組み
為替介入とは、円高になったときに、為替レートを円安に持っていくためのオペレーション(市場操作)のことです。
 
円高抑制の為替介入の際に、具体的に何をやっているのかを、まずは押さえましょう。
まず最初に、日本政府(財務省)が「政府短期証券」を国内の銀行向けに発行し、円を調達します。その日本円で日銀がドルを買います。この、政府が調達した日本円をドルに両替する行為を、為替介入と呼びます。  
先日も財務省から昨年10月〜12月期の為替介入実施状況が発表されましたが、それによると10月31日に8兆722億円、11月1日に2826億円、2日に2279億円、3日に2028億円、4日に3062億円と5日連続で合計9兆917億円もの為替介入をしています。
 
確かに、政府が大々的にドルを買えば、円安に持っていくことができますが、現在では為替を1円円安に動かすために1〜2兆円が必要だといわれています。
実際、10月31日の為替介入では、介入直前に75円台後半だった円ドル相場が、31日の介入直後に79円20銭近辺になりましたので、1円円安に動かすのに約2兆円かかった計算になります。
 
 
②買ったドルはどうするの
日銀は為替介入で買ったドルを、そのまま持っている訳ではなくて、そのドルで米国債を買い、その米国債が日本の外貨準備高として計上されています。
 
政府が為替介入を経て、最終的にアメリカ政府に金を貸しているのですが、そのお金の出所は、民間金融機関からの借金(=つまりは私たち国民の預金)です。私たちの預金で、米国債を買って、米国の赤字を埋め合わせしているというのが為替介入の実態なのです。
 
 
③為替介入って効果あるの
為替を1円円安に動かすために1〜2兆円くらい必要であることを上述しましたが、そもそものファンダメンタルズ(国の経済の総合的状況を決める要因)がデフレ状態ですので、物の価値よりも円の価値が上昇していきます。このような状況では、みんなが円を持ちたがるので、いくら政府が円売り為替介入をしても「焼け石に水」で、中期的にはまったく無駄で、1週間程度は多少円高を抑制できるかもしれませんが、結局すぐに戻ってしまいます。
 
実際、10月〜11月にかけての総額9兆円強にも及ぶ為替介入でも、31日の介入直後に79円20銭になって以降は、連続5日間の介入にもかかわらず、翌1日は78円台前半、最終日の4日も同じような78円台前半のままで、翌週からは77円台に戻ってしまっています。
 
 
④為替介入すればするほど損している
現在の政策を繰り返し、米国債を購入しても、結局は買った時点よりもさらに円高が進むわけですから、為替差損がどんどん膨らんでいきます。実際に過去の為替介入、及びその後の円高で、日本政府は30兆円から40兆円もの為替差損を被っているといわれています。その上、米ドルの雲行きがあやしい現在、米ドルが暴落しようものなら、米国債は紙くず同然となって借金だけが残る状態になります。
 
より本質的には、アメリカが純債務国に転落した’85年、円高協調が合意されプラザ合意にて、円高ドル安は既定路線であって、日本は本気で円高を阻止しようとしていたのではなく、為替介入という名目で米国債購入することによって、アメリカ経済を支える役回りを担わされていたのだと思われます。
 
 
⑤何か良い方法はないの
為替介入ではなくて、日本政府が長期国債を発行し、日銀が通貨を発行してその長期国債を買い取れば良いのです。
 
「日銀が直接政府から国債を買い取ると円の国際的な信用が下がり、インフレになるからヤバイ」といわれていますが、長期的なデフレが問題化している現在の状況では、多少のインフレは問題になりません。むしろ、インフレになれば実質金利が下がり、勝手に円安になりますので、その方が為替介入よりもよほど効果的です。
 
あと、もっと効果的だと思われるのは、国家が政府紙幣を発行することです。
現在は、硬貨は政府が鋳造していますが、紙幣は日銀が発行しています。そのため、政府が資金を必要とするときには、国債発行という形で借金をしなければなりません。
国家紙幣を発行することによって、1千兆円にも届きそうな国家の借金問題も解決の糸口が見つかります。  
 
 
新聞などマスコミの論調に惑わされることなく、いま一度「経済の一般常識」を疑ってみましょう。
○○ってよく耳にするけど、それっていったい何
なんで、○○が必要なの
そうした「何で」と思うことを理解することで、経済がもっと身近なものになると同時に、一般常識のウソにも気付けるようになるはずです。
 
そんな想いを込めて、「経済の一般常識を検証する」をコラム的に不定期配信していきます。
お楽しみに

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