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米国はどのように衰退してゆくのか?(11)金融主義の末期・米国ドル崩壊への道 その6.縮小する投機市場

これまで、ドルの覇権通貨確立から近年のドル離れまでの事象を押さえてきました。
・金融主義の末期・米国ドル崩壊への道 その1.ドルはどのようにして覇権通貨となったか(リンク [1]
・金融主義の末期・米国ドル崩壊への道〜ニクソンショック(金兌換停止)後の金融覇権を維持した手練手管〜(リンク [2]
・金融主義の末期・米国ドル崩壊への道 その3.世界をマネー経済に巻き込んでいった’80〜’90年代(リンク [3]
・金融主義の末期・米国ドル崩壊への道 その4.リーマン・ショックとその後の世界(リンク [4]
・金融主義の末期・米国ドル崩壊への道 その5.加速する世界のドル離れ(リンク [5]
今回は、近年の投機市場から、金貸しの資本力がどれほど衰退しているのかを見ていきたいと思います。
金貸し勢力の弱点と自滅の構造 [6]より引用

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中銀にとって、最も警戒すべきは、過剰供給による紙幣価値の暴落。従って、投機市場が回り続けるのに必要な資金以下≒金融勢力の塩漬けetcで減少した資金量以下しか供給できない。
従って、投機市場の総資金量はジリジリと減り続ける。従って、金融商品の価格を維持するために、最終的には国家が買い手となって買い支えに回り、その結果、国家財政に更なる大穴を空けることになる。
従って、このままでは、国家財政の破綻と紙幣の大増刷の必然的な帰結として、国債の暴落は不可避である。

それでは、総投機資金量が減少しているのかどうかをデータベースで検証していきたいと思います。
 
いつも応援ありがとうございます


●株式市場の推移
 
 
まず、株式市場の推移を見ていきたいと思います。

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(画像はこちら [7]から)>

上図から、’08年リーマン・ショック以降、株式売買は、急落していることがわかります。また、’08年〜’12年では、約55兆ドル減となっており、株投資の減少は顕著に表れています。
 
 
 
●債券市場の推移
 
次に債券市場の推移を見ていきたいと思います。
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(画像はこちら [7]から)>

上図から、利回りは、’07年サブプライム問題以降、国債売買代金は、‘08年リーマンショック以降、減少していることがわかります。また、’08年〜’12年では、利回りが約3%減、国債売買代金が約1兆ドル減しており、買い手が増加傾向にあることがわかります。
最近の債券市場では、経済不振からマイナス金利の買い手も出てきているようです。
「最近の欧州金融情勢が物語る‘金融資本主義の終末像’」 [8]より引用

ニュース①ドイツ2年債マイナス利回り 2012.7.18 ブルームバーグ
リンク [9] 
> 17日の欧州債市場では、ドイツ2年債利回りがマイナスにとどまった。ドイツの景況感指数が半年ぶり低水準に落ち込んだほか、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)が追加刺激策を打ち出さなかったことが手掛かり。 ドイツ国債は一時の下げを埋める展開。雇用の改善に向けた動きは「いら立たしいほど遅い」ものになる可能性が高いとしたバーナンキ議長の発言に反応した。比較的安全とされる資産を求める動きから、オーストリア2年債利回りは初めてゼロを下回った。
今やいつ紙屑になるか分からない他国の債権や国家の裏付があるのかないのかわからない人工マネーであるユーロでは信頼が置けず、「金利を払ってでも国家の裏付けのあるドイツ国債が人気」なのである。そして事態はさらに深刻で独自通貨を持つデンマークのクローネの価値が上昇中である。
ニュース②デンマークでマイナス金利 2012.7.12 産経ビズ
リンク [10] 
>デンマーク通貨クローネの魅力が増している。クローネ建ての証券がユーロ崩壊リスクのヘッジ(防衛策)と見なされているためで、この役割はドイツの資産でさえ果たせない。デンマーク国立銀行(中央銀行)が5日に譲渡性預金(CD)の金利をマイナス0.2%に引き下げたにも かかわらず、9日時点で1470億クローネ(約1兆9140億円)の預金を集めている
こうしたマイナス金利はドイツやデンマークにとっては銀行救済にプラスという面もあるのだろうが、それでうまいくほど事態は単純ではない。バブルの原因を作ったペーパーマネーの増刷を続ける‘マイナス金利政策’は銀行の延命にこそなれ、金貸しの基本原則に反する行為であり、結果的には資本主義を自滅に導くことになるのではないか。
ニュース③マイナス金利のパラドックス 2012.7.19 ロイター
リンク [11] 
>かつて奇想天外な概念だったマイナス金利が、欧米市場であっという間に普通になりつつある。マイナス金利は、金融市場のストレスを除く目的で実施された金融緩和が一因だが、消費を促進するどころか、高齢化する人々の貯蓄率を高めるという逆効果を招きかねない。HSBCの資産配分グローバルヘッド、フレドリック・ナーバンド氏は顧客に対し「直観的に考えると、(マイナス金利下では)消費者は明日まで貯蓄して資産が目減りするより、今すぐ支出しようとするため消費を押し上げるはずだ。しかし事はそれほど単純ではない」と説く。ナーバンド氏の主張では、国債利回りと足並みをそろえて投資や年金基金の収益率が低下するため、消費者は不十分な年金を補うため、通常よりも貯蓄を増やさざるを得なくなる可能性がある。「これが節約のパラドックスだ。需要に影響を及ぼす」という。悪循環に陥る可能性ははっきりと見えている。
このような資本主義の自滅を予期してか、(少し旧いが)フランスでは富豪たちが自らへの増税を歓迎というニュースも。
ニュース④ フランスでは富豪層が自らへの増税を歓迎!?2011.8.24 ロイター
リンク [12]
>化粧品大手ロレアル創始者の遺族やエネルギー大手のトタル代表など、フランスの富豪らが23日、国の財政赤字削減を支援するため、高額所得者への増税を政府に要請した。「われわれはフランスの制度と欧州の環境から恩恵を受けていることを理解しており、その維持に一役買いたいと望む」と訴えた。国債の格下げ観測も浮上しているフランスでは、政府が財政赤字の削減目標を達成するため、高所得者向けの増税や住宅関連税制優遇の縮小、企業向け税控除の縮小などを検討している。
金貸しがマイナス金利そして増税すら甘んじて受け入れてでも国家秩序の崩壊だけは避けようとしているのだとしたら・・・それは金貸し支配の終焉に違いない。属国日本の状況だけを見ていては終末資本主義の像は描けない。欧州情勢の今後は引き続き注視が必要だ。

今や、損してでも国債を買う時代に入っていることがよくわかります。
 
 
 
●為替市場の推移
 
 
最後に為替市場の推移を見ていきたいと思います。
 

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(画像はこちら [13]から)>

上図から、‘08年リーマンショックのピーク時から下降するものの、近年は上昇傾向にあることがわかります。この背後には、近年加速するドル離れの影響、自国経済が不安定な投資家達の資金逃避が伺えます。
 
 
 
●まとめ
 
結果、世界金融危機から投機市場の投機資金量は減少傾向にあります。従って、国債の暴落は時間の問題であり、金貸し支配の終焉も刻一刻と迫っていると言えそうです。
次回は、アメリカの産業について見ていきたいと思います

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