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高齢ドライバー事故報道の裏側

高齢ドライバー事故 [1]最近、高齢ドライバーの事故報道がやたら増えており、この裏にはいったい何があるのかと思っていたましたが、先週のNHKの朝のニュースで、高齢ドライバーの事故報道から、いきなり自動運転技術の報道につながり、自動ブレーキ装置などの紹介になっていました。報道の目的はこれだったのかと納得。

この間の高齢ドライバーの事故報道で気になっていたのが、統計的にどのぐらい増えているのかの報道が殆どされていなかった事。報道件数の増加だけを意識すると、なんだか爆発的に増えているような気がしますが実はそうでもありません

ちょうど同じころに、朝日新聞で「高齢ドライバーの事故 統計と報道イメージに差 [2] 神里達博」という記事が出ていました。

無料登録で内容を見れますので、詳しくは登録して記事を見ていただければと思いますが、ポイントは、「高齢者人口が増えているので事故件数は増えているが、原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり事故件数を見ると高齢者の事故は減少傾向にある」ということです。(※「第1当事者」とは、当該事故において最も過失が重い者)

神里さんは、「マスコミには議題(アジェンダ)設定機能というものがあり、アジェンダが「高齢ドライバー」に設定され、それに適合する報道が増えたと推測」されておられます。マスコミにはこのような傾向もあると思いますが、それより自動車の自動運転技術を次世代産業の中心に据えたい政府や産業界の意向が反映された結果と考えた方がすっきりします。

ちなみに、警察庁発表の「平成27年における交通事故の発生状況 [3]」の原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり事故件数は、65歳以上の全年代で(80歳以上も)過去10年間減少し続けています。つまり、65歳以上の高齢者に主要に責任のある事故は、10万人当たりでみるとどの年代も減っているのです。

10万人当たり年齢別事故件数 [4]

10万人当たり事故件数は実数ではありませんが、事故の実数を見ても、高齢者人口が増えているにもかかわらず、65歳以上全体の第1当事者事故も減少を続けています。細かく見ると、65歳以上で26年度から27年度で事故が増えているのは、65歳から69歳が38,589人から38,851人で262人の、80歳から85歳が10,609人から10,654人で45人、85歳以上が4,092人から4,241人で149人の増加で、増加の幅は少なく、これ以外の高齢者世代は減少し、65歳以上トータルは減少しているのです。

年齢別事故件数 [5]

自動運転の技術も進歩しているのでしょうが、まだまだ不安を感じる人が多いのではないでしょうか。実用化にはこのような世論の壁があり、これを突破し自動運転技術を早く商品化するために、高齢者の事故を実態以上にクローズアップしているのではと考えるのは、考えすぎでしょうか。

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