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世界を動かす11の原理-3~グルジア革命やリビア戦争も米国傀儡~

グルジア革命 [1] リビア戦争 [2]

あけましておめでとうございます。年明け早々からやや暗い話題。

昨年後半から年末に掛けて、世界的な株価上昇があり、今年は「暴落」の二文字、いや「大」が付いて三文字:「大暴落」が現実のものになりそうです。これまでのその予測はありましたが、今年は相当「危険な」年になりそうです。その動向も押えつつ、シリーズの第3弾から続けていきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 

今回も、『第5の原理:「エネルギー」は「平和」より重要である」からその具体事例を紹介します。

 

今回はグルジア革命(バラ革命)とリビア戦争についてです。石油パイプラインのルートを巡る陣取り合戦や石油利権に纏わる動きが非常にリアルに紹介されています。欧米による傀儡政権樹立がバラ革命やリビアの春ですが、それに黙っていないのが、プーチン。正攻法で切り替えしていきます。

現在は、東欧州も中東もプーチンが押えているところを見ると、武力や傀儡で支配するよりも、各国の置かれた状況を尊重し、それ以外での協働関係を構築しようとするプーチンの考えの方に世界は動いているということが分かる。

 

 

以下、「クレムリン・メソッド」~世界を動かす11の原理~(北野幸伯著) [3]

からの紹介です。

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■グルジア革命は、「石油ルート」をめぐる米ロの争いだった

 

2014年の「ウクライナ革命」とは違い、比較的多くの証拠が揃っているのが03年の「グルジア革命」(通称バラ革命)です。

 

まず革命の概要から説明しましょう。

2003年11月2日、グルジアでは議会選挙が行われました。そして、シェワルナゼ大統領(当時)の与党「新しいグルジア」が勝った。すると、野党は、「選挙に不正があった!」と大々的なデモを開始。結局、野党勢力は11月22日、議会を力で選挙。大統領を辞任に追い込むことに成功しました。

 

シェワルナゼ大統領(当時)は、「革命の背後に世界的投資家ジョージ・ソロスや外国(アメリカ)の情報機関がいた」と断言しています。

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【グルジア政変の影にソロス氏?=シェワルナゼ前大統領が主張】

グルジアのシェワルナゼ前大統領は、11月30日放映のロシア公共テレビの討論番組に参加し、グルジアの政変が米国の著名な投資家、ジョージ・ソロス氏によって仕組まれたと名指しで非難した。

ソロス氏は、旧ソ連諸国各地に民主化支援の財団を設置、シェワルナゼ前政権に対しても批判を繰り返していた(時事通信2003年12月1日)

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【混乱の背景に外国情報機関】シェワルナゼ前大統領と会見

野党勢力の大規模デモで辞任に追い込まれたグルジアのシェワルナゼ前大統領は28日、首都トビリシ市内の私邸で朝日新聞記者らと会見した。大統領は混乱の背景に外国の情報機関が絡んでいたとの見方を示し、グルジア情勢が不安定化を増すことに懸念を表明した。

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外国の情報機関とは、もちろんアメリカの情報機関のことです。では、何故アメリカは、グルジアで革命を起こしたのでしょうか?

 

この政変は、アメリカとロシアの「石油ルート」をめぐる争いだったのです。

 

コーカサスの石油大国アゼルバイジャンの原油は、同国とロシアの黒海沿岸都市ノボロシースクを結ぶパイプラインと通して世界市場に供給されていました。

これが気に食わないアメリカは、「アゼルバイジャンの原油を、ロシアを通さず世界市場に出す」プロジェクトを計画します。具体的には、アゼルバイジャンの首都バクーから、西の隣国グルジアの首都トビリシを経由し、トルコのジェイハンに抜けるパイプライン(BTCパイプライン)をつくる。

 

2003年4月から、建設が開始されました。BTCは、「アゼルバイジャンの原油を、ロシアを通過せず世界市場に出す」ことが目的。これは、ロシアの国益に反しています。「国益に反する」とは、トランジット料(原油通貨料)がロシアに入らなくなること。アゼルバイジャン、グルジア(つまりコーカサス地域)に対するロシアの政治的影響力が減退するなどです。プーチンが、「BTC阻止」に動いたのは当然でした。とはいえ、ロシアはアゼルバイジャンを下手にいじめることができません。いじめれば、さらにアメリカに接近してしまう。

 

そこでプーチンは、アゼルバイジャンの隣国、パイプラインが通過するグルジアに圧力を掛けることにしたのです。

旧ソ連のグルジアは、アゼルバイジャン同様、1991年にソ連から独立しました。既述のように当時の大統領は、シェワルナゼ。

グルジア大統領になっても、ソ連時代同様、親米路線を続けていました。

 

では、ロシアは、どのようにしてグルジアに圧力を掛けたのか?

グルジアには、同国からの独立を目指す、アプハジア、南オセチア共和国という地域があります。ロシアはこれらの共和国を支援することで、グルジアの政情を不安定化させていったのです。「政治リスクが高まれば、出資者が集まらず、BTCプロジェクト実現は困難になっていくだろう」という読みでした。

ロシアのいじめは、BTC構想が実現に近づくほど厳しくなっていきました。グルジアは、ロシアにガス・電力などを依存している。ロシアは同国への供給を制限し、経済に大打撃を与えます。このいじめは、老シェワルナゼに大変なストレスを与えた。そして、「もうロシアに屈服した方が、楽な老後を暮らせそうだ」と悩み始めました。一方アメリカは、「この爺さんはもうダメだ。もう少し若くてエネルギッシュな男(革命の結果、大統領になった当時36歳のサアカシビリ氏)を傀儡大統領にしよう」と決意したのです。

 

こんな背景で、「バラ革命」は起こった。「石油ルートをめぐる米ロの争い」と書いた意味がご理解いただけたことでしょう。

 

この革命が「石油ルートがらみ」であることは、日本の新聞にも出ています。

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国務省のバウチャー報道官は25日の会見で、グルジアへ三百万ドル相当の医療物資を支援し、公正な選挙実施などについて暫定政権と協議するため、代表団を来週にも派遣すると表明。「グルジアの石油パイプラインを巡っては、暫定政権も方針を替えないと見ている」と強調した。報道官が言及したパイプラインとは、カスピ海の石油をトルコ経由で欧州方面に輸出する「BTCライン」と呼ばれるもので、グルジアを通過する。米国が1999年にグルジア、トルコ、アゼルバイジャンとの間で建設に合意し、来年の完成を目指している。カスピ海の石油は、中東の石油に対する依存率を下げたい米国にとってエネルギー戦略上きわめて重要だ。(産経新聞2003年11月27日)

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ちなみに、前述のウクライナは、ロシアと欧州を結ぶ「ガスパイプライン」が通っていることで知られています。ずばり「石油・ガス利権」だけでなく、「ガスルート」も絡んでいるのです。

 

さて、その後、グルジアはどうなったのか?

2003年11月に起こった「バラ革命」直後の2004年1月、大統領選挙でサアカシビリが勝利。ロシアの旧植民地グルジア、アメリカ念願の傀儡政権が誕生しました。この傀儡大統領サアカシビリは2008年8月、ロシアと戦争して大敗。ロシアは、アプはジアと南オセチアを、「独立国家」と承認しました。サアカシビリ次代、グルジアは、事実上二つの共和国を失う結果になったのです。

そして、彼は2013年に任期を終え、現在はギオルギ・マルグヴェラシヴィリが大統領になっています。大統領は代わりましたが、グルジアの親欧米路線は継承されました。新政権も、EU及びNATOへの加盟を目指しています。尚BTCパイプラインは、2006年6月から稼動し始め、今もロシアに打撃を与え続けています。

 

■リビア戦争(2011年)は英仏の「石油利権」確保が原因だった

 

そろそろ、「エネルギー利権」は、しばしば革命、戦争の理由になること、ご理解いただけたでしょうか?

例の最後に、比較的最近の事件、リビア戦争をあげておきましょう。

 

2011年は、「アラブの春」と呼ばれる現象が起こりました。中東や北アフリカの独裁国家で、次々と革命が起こったのです。

まず1月14日、チュニジアを二十三年支配したベンアリ大統領が、革命により失脚。エジプトでは2月11日、当時30年に及んだムバラク政権が打倒されました。ついで、2月15日、42年間カダフィ政権が続くリビアで、反政府デモが始まります。デモは全土に拡大し、どんどん大規模になっていきました。3月3日には、第2の都市ベンガジで、カダフィ政権に変わる暫定政権「国民評議会」が作られます。以降、リビアは二つの政権が並存することになり、「カダフィ政権」と「国民評議会」による「内戦」状態に突入することになります。

 

欧米は、「国民評議会」への支持を明確にします。3月2日には、欧州委員会のバローゾ委員長が、3月3日にはオバマが、カダフィの退陣を求めました。3月11日、フランスのサルコジ大統領が、リビアへの空爆を主張。以後フランスは、イギリスと共に「リビア攻撃」を主導するようになっていきます。なぜ、「アメリカではなくフランス、イギリスなのか?」について、読売新聞。

 

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米国は軍事行動の統合指令を担っているが、自らの役割を「限定的」としている。積極介入する仏英には、リビアの石油利権確保という国益に加え、国際的な復権という思惑がある。(読売新聞2010年3月21日)

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また、「石油利権」。

ちなみに、BP(イギリスのエネルギー関連企業。国際石油資本で、スーパーメジャーと呼ばれる6社のうちの1社)のデータによると、リビアの原油埋蔵量は世界9位。

と言っても、よく分かりませんが、ロシアが8位と言えば少しイメージできますね。リビアは世界9位、「アフリカ最大の」石油大国なのです。

そして、リビアの一人辺りのGDPは2013年、1万1063ドル。世界63位となっています。63位と言ってもぴんと来ないかもしれませんが、中国は同年、6747ドルですから、リビアはそれよりもかなり豊かだということです。そして、同じく2011年に革命が起こったチュニジアは4345ドル、リビアは2.5分の1。エジプトは3223ドルで、リビアの3.4分の1。つまりリビアは、「アラブの春」が起こった他国と比べ、ダントツで豊かだった。確かにカダフィは、40年以上も政権の座にあった独裁者で、問題の多い男でした。一方で国民は、「俺達はアフリカの他国より豊かだ」と知っていた。

 

米英仏が介入しなければ、カダフィが内線に勝利した可能性もあったのです。

さて、国連安保理は3月17日、リビアへの武力行使を容認する決議案を採択し、「リビア攻撃」にお墨付きを与えます。これで、カダフィの敗北は、「時間の問題」になりました。8月24日、カダフィ整形は崩壊。10月20日にはカダフィが群衆にリンチされ、殺害される衝撃的映像が世界に流れました。

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