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反グローバリズムの潮流(オーストリアの自由党)

96958A9F889DE3E2E3E7E3E6EBE2E2E3E3E0E0E2E3E4E2E2E2E2E2E2-DSXMZO1015480001122016000001-PN1-5 [1]2016年6月にイギリスの国民投票でEU離脱派が勝利する前の4月に、オーストリアでは、いわゆるポピュリズム政党である自由党の候補が大統領選挙で一位になりました。決選投票で逆転負けはしましたが、得票率は49.7%対50.3%と本当の僅差。それも、票の集計が不適切だったとの憲法裁判所の判断で投票がやり直しになり、結果的に自由党は票を減らしましたが、僅差での敗北でした。

オーストリアは主要な言語がドイツ語で民族的にもゲルマン人が主流で、第二次大戦中はドイツの占領下でナチズムが広がった歴史もあり、民族主義を主張するとナチズムのイメージと重なり、極右勢力とみなされやすいこともあり、反対勢力が結集して自由党政権は実現しませんでしたが、そのような状況の中で、ここまで極右勢力と言われる自由党が勢力を伸ばしているのは注目に値します。なぜ、オーストリアでは極右勢力がここまで支持を増やしているのでしょうか。

オーストリアは、オーストリアは東欧と国境を接する位置にあり、東欧や中東からの移民のヨーロッパの入り口にあたり、移民の影響をEUの中でも強く受けるという特殊性はありますが、年間の一人当たり国民総生産は世界第10位で、EUの中でも豊かな国の一つです。移民問題だけで、国民の半数が極右勢力と言われる政党を支持するでしょうか

やはりオーストリアも移民問題だけではなく、経済の低迷にもあえいでいます。経済成長率は低下し失業率が上昇、政府は減税などの対策を行っていますが、効果はあまり出ていません。経済低迷の原因はEU内での東欧諸国との競争の敗北です。東欧諸国は低賃金のわりに優秀な研究者、技術者も多く、開発生産拠点が東欧に移って行き国内産業の空洞化が進みました。

オーストリアで極右勢力が支持を集めているのは、人種差別的な民族主義といったイデオロギーの問題ではなく、このままではオーストリアという国の生産基盤が失われ、国民の生活が立ちいかなるという切実な問題があるからなのです。

 

■オーストリア自由党 [2]

・2011年新綱領において、「我々の故郷オーストリア」への郷土愛が明白に語られ、ドイツ語を話す民族と文化共同体への帰属が読み取ることが出来る。

・欧州懐疑主義を支持していると見なされており、補完性原理(≒地方分権)も支持している。条約改正時における国民投票の実施に賛成し、欧州連合加盟国により大きな自己決定権を与えることを求めている。これに関連して、多文化主義とグローバリゼーションの無理強いと移民の大規模流入によって、多様な欧州の言語と文化を人為的に均質化してしまうことを強く拒んでいる

・郷土であるオーストリアの守護者と自任しており、移民流入の停止、並びに犯罪を行った外国人の無条件国外退去処分を求めている。

■ノルベルト・ホーファー [3]

・1971年生まれ45歳。アイゼンシュタット高等工科専門学校(ドイツ語版)で航空工学を修める。1990年から1991年まで2年間兵役に服し満了する。1991年から1994年、ラウダ航空の航空技術士として働く。

・オーストリア自由党の中で徐々に地位を築き上げ、2005年に党首となったハインツ=クリスティアン・シュトラーヒェのもとでアドバイザーを務めるようになる。2013年よりオーストリア国民議会の第3議長を務めている。2016年7月8日、第11代大統領ハインツ・フィッシャーの任期切れによる退任後、大統領職を代行している国民議会議員3人のうちの一人である。

2016年4月の大統領選挙第1回投票では35%の得票を獲得し、緑の党元党首アレクサンダー・ファン・デア・ベレンの得票率21%を上回った。5月決戦投票ではその差は49.7%対50.3%と大きく縮まったが逆転負け。しかし、オーストリア憲法裁判所によって78,000票近くの疑わしい集計があったとして選挙の無効が宣言されたため、再投票が行われることになり、同年の12月4日にリベンジの意気をみせて臨んだが、前回の選挙よりも大きく下回って、敗北した

■【三橋貴明】オーストリア自由党は「極右」なのか!? [4]

産経新聞を含めた日本のマスコミは、オーストリア自由党を「極右」と表現し、レッテル貼りに勤しんでいますが、「移民制限」の主張が極右というならば、このブログも極右になってしまいます。結論ありきのレッテル貼りによる印象操作は、いい加減にやめるべきだと思います。日本で言えば、年間に70万人、100万人の中国人労働者が流入してきたとして、「中国移民を制限しろ!」と主張することが極右、という話になってしまいます。

■オーストリア [5]

年の一人当たりGDPは世界第10位に位置し、経済的に豊かな国である。主要産業としては、シュタイアーマルク州の自動車産業、オーバーエスターライヒ州の鉄鋼業などがある。大企業はないものの、ドイツ企業の下請け的な役割の中小企業がオーストリア経済の中心を担っている。

■経済動向|オーストリア [6]

・2017年1月5日 1.5%と緩やかな成長も、失業率が上昇

・2016年1月1日から新税制が施行される。政府は低迷する経済を活性化させるために、思い切った所得減税を実施する一方で、軽減税率の対象の一部(10%から13%)や資本収益税(25%から27.5%)を引き上げる。

・2015年10月13日 GDP成長率、2015年は0.7%と予測。輸出の相対的低調と、設備投資の低迷により、2015年の成長は4年連続で1%未満にとどまるものの、2016年には税制改革により民間最終消費支出が拡大し、成長が緩やかに加速する見通しだ。ただし、景気回復は力強さに欠け、失業率の改善にはつながらないとしている。

■オーストリア経済の蹉跌をオーストリア学派はいかに解決するか? [7]

・かつてオーストリアは、ドイツよりも成功した隣国、欧州で最も高い成長を遂げている国の一つ、と称えられた。しかし2012年以降その経済は軋んでおり、昨年のGDPはわずか0.7%しか増えなかった。それを下回ったのはギリシャとフィンランドだけである。そしてオーストリアの失業率は2010年の5%から今日の10%まで大きく上昇している。

・こうした展開は、共産主義の崩壊後にオーストリアが中東欧とどのように関わってきたかに淵源がある。オーストリアの企業が東欧に投資した時、移転したのは低熟練の製造業の仕事だけに留まらなかった。特別な技能を必要とするような価値ある研究を生み出すバリューチェーンの一部も移転したのである。

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