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反グローバリズムの潮流(オーストリア総選挙、右派と極右で連立協議)

96958A9F889DE0E0E0EBE2E6E4E2E3E4E3E2E0E2E3E5979394E2E2E2-DSXMZO2228852016102017000002-PN1-1 [1]10月15日の行われたオーストリア総選挙で、中道右派の国民党が勝利しました。国民党の党首は31歳のセバスティアン・クルツ氏、世界最年少の首相が誕生することになりそうです。現在、極右派と言われる自由党と連立政権の協議を進めており、国民党と自由党の連立政権が成立する可能性が高そうです。両党とも、移民の制限強化を訴えており、反グローバリズムの潮流の高まりがうかがえます。

自由党はかつてEU離脱に言及するなど「反EU」で知られており、クルツ氏は連立の条件として「明確な親EU志向」を挙げて自由党をけん制しており、直ぐにEU政策に大きな変化は無さそうです。

しかし、今回の総選挙で国民党が勝利した背景には、これまでの政治に対する閉塞感があります。オーストリアは人口900万人で国内需要が少なく、経済成長を進めるためには国外との貿易に頼らざるを得ない側面があり、今はEU反対を強力に推し進めるのは難しい状況ですが、経済的成長は鈍化しており、いずれEUの問題に目が向くと思われます。

オーストリアは大企業が無く、中小企業が技術力で勝負している国ですが、2012年以降のGDP成長率は、0.7%と、国家破綻したギリシャと、その影響を受けたフィンランドが下回るのみという状態です。明らかに、グローバリズムの中で国際資本や人件費の安い東欧諸国に押されています。移民問題が解決しても経済が好転しなければ、EU=グローバリズムが問題の原因である事が明らかになることでしょう。

■若き外相の新しい挑戦が始まった2017年05月21日 [2]

オーストリアの政界が今月に入って激しく動いている。今月10日、国民党党首のラインホルト・ミッテルレーナー副首相が突然辞任表明。14日には国民的人気の高いクルツ外相(国民党)が新党首に選出された。そして16日、社会民主党と国民党の2大政党から構成されたケルン連立政権は任期を1年以上残し、今年10月15日に早期総選挙を実施することで合意した。

クルツ外相は14日の党幹部会で7項目の条件を提示した。党首に人事権を与え、選挙の党候補者の選出権も党首に委ねるという内容だ。その上で「自分の要求が通らなければ、国民党を離脱し、新しい政治運動を始める」と言明し、党幹部会に最後通牒を突き付けた。国民党は過去、州の国民党幹部が強い権限を有し、連邦の党人事にも大きな影響を行使してきたため、連邦レベルの党改革を実施することが難しかった。

国民党は選挙の度に投票率を失い、野党の極右政党「自由党」に抜かれて第3党に後退することが多かった。党の抜本的刷新を実行しなければ国民党は小政党に成り下がってしまうと懸念されてきた。それを救う唯一の道は、クルツ外相を党首に担ぎ出し、選挙戦に打って出ることだという点で国民党内は一致したわけだ。

同外相は難民問題では極右政党の「自由党」もタジタジとなるほど厳格な政策を表明し、国境線の閉鎖・監視の強化を訴える一方、欧州連合(EU)の結束強化、刷新をアピールしてきた。対トルコ政策でも、エルドアン大統領の強権政策をいち早く批判し、トルコのEU加盟交渉でも「トルコの加盟は目下、あり得ない」と強い姿勢を示してきた。

■オーストリア下院選、「反難民」の国民党が第1党2017年10月16日 [3]

オーストリア下院選挙は15日、開票を終えた。暫定結果では、難民の流入阻止を掲げた中道右派の国民党が第1党となり、極右の自由党が第2党に躍進した。今後、両党が連立政権を組む可能性がある。2015年の難民の大量流入をきっかけにしたポピュリズム(大衆迎合主義)の勢いは衰えず、オーストリアでも右傾化が鮮明になった。

「この国を変えるために全力で闘う」。国民党を率いる31歳のクルツ党首は15日夜、集まった支持者を前にこう宣言した。選挙中は「難民支援の非政府組織はカオス(混沌)を生んでいるだけ」「誰を受け入れるかは違法業者ではなく、我々が決める」などと発言。極右のお株を奪うような反難民の姿勢を示し、低迷していた国民党への支持率を一気に高めた

端正な顔立ちでカリスマ的な人気を誇る。公共放送ORFの調査によると、国民党に投票した人の多くが「党首の魅力」を理由に挙げた。今回の勝利で次期首相の最有力候補になった。国民党と自由党は2000年代にも連立政権を組んだことがある。仮に再び自由党が政権入りすれば、独仏などとの対立が強まり、強権的な手法で知られるハンガリーのオルバン首相らに接近するとの指摘もある。独仏を中心とした欧州統合の強化の動きにもブレーキが掛かりかねない。

■セバスティアン・クルツ [4]

一般教育中等部・高等部の教師である母と高等工業専門学校の教師であった父との間に生まれ、現在も在住するウィーン第12区マイトリンクで育った。大学入学資格を取得し2004年から2005年まで、陸軍で兵役に。兵役を終えた後、ウィーン大学法学部に入学し、未だ在学中である。

2003年からオーストリア青年国民党に参加し、2008年から2012年までそのウィーン支部長を務め、2009年には99%の支持を得て総裁に選出された。さらに2012年にはほぼ100%の支持を得て再選された。2009年から2016年まで、オーストリア国民党ウィーン支部州議会代表を務めた。2010年からウィーン州議会議員、2011年7月に内閣改造で内務省に新設された移民統合事務局局長に抜擢。2013年の国民議会選挙の後、27歳にして歴代で最も若い外務大臣として指名された。2014年3月からは連邦欧州国際問題大臣。2017年5月、国民党臨時代表に就任。1か月後の党首選で98.7%の票を獲得し、6月1日、正式な国民党党首に就任した。

■極右政党が連立交渉で「内相」を要求2017年10月20日 [5]

オーストリアで19日、国民議会選挙の最終結果が公表された。郵送分の投票集計の結果、第2党と第3党が入れ替わり、ケルン首相の社会民主党が野党第1党の極右政党「自由党」を抜いて第2党に入った。

自由党のシュトラーヒェ党首は18日、党幹部会後の記者会見で、「連立政権に参加する場合、党としては内相ポストが政権参加の条件となる」と述べた。同党首自身が内相の地位に就く考えだという。同党首はその理由として、「自由党は安全問題を考える政党だ。もちろん犯罪対策もある」と説明した。

内務省は殺到する難民・移民の最初の対応先だ。不法難民の強制送還も担当する。すなわち、自由党は内相を手に入れ、これまで以上の強権を駆使して難民・移民対策に乗り出すために内相ポストを欲しがっていると考えられるわけだ。同国では首相は各省の閣僚の決定を覆す権限を有していない。閣僚が主体的にその権限を発揮できるから、内相が強権を振った場合、それにブレーキをかけることは難しい。

自由党は野党時代、ネオナチ政党、外国人排斥政党、反イスラム政党と受け取られ、時には内務省の監視を受けてきた経緯がある。クルツ党首主導の連立交渉が始まれば、その動向に注意を払う必要があるだろう。

■国民党、極右と連立交渉へ2017年10月25日 [6]

15日のオーストリア国民議会(下院)選で第1党となった中道右派・国民党のクルツ党首は24日、難民らの排斥を訴える極右・自由党と連立交渉を始めることを明らかにした。両党が右派連立政権を組むと、2005年以来12年ぶりとなる。

クルツ氏は記者会見で「(自由党が)国を(国民党と)一緒に変える意思を示した」と説明した。両党は移民流入を防ぐための欧州連合(EU)国境の警備強化、難民を含む外国人への手当削減、減税などの政策で一致。ただ自由党はかつてEU離脱に言及するなど「反EU」で知られており、クルツ氏は連立の条件として「明確な親EU志向」を挙げて自由党をけん制した。

一方、自由党のシュトラッヘ党首は内相ポストなどを要求しており、条件闘争に入る構えだ。クルツ氏は12月下旬までに組閣を終えたい意向だ。

■オーストリアの中小企業を大事にする産業とGDP及び経済状況2017年7月17日 [7]

国民総所得は、2012年に3,173.80 億ユーロを記録し、その後も徐々に増え続けています。2015 年の段階で、3,349.80 億ユーロを記録しています。これは、世界210カ国中の25位の経済規模です。

オーストリアの産業の特徴の一つに、大企業が少ないということが挙げられます。オーストリア経済のメインは、中小企業であり、そして、地方なのです。

オーストリアの人口は、2017 年 1 月 1 日現在で、8.773.686人です。900万人弱となれば、相当な仕事の数が必要となりますが、都市への集中は、日本ほどではありません。結果的に、このことが大企業よりも中小企業を経済のメインにしてきます。様々な企業が、数多く存在し、そして、国内各地の地域に広がっているから、わざわざウィーンのような大都市にでなくても仕事が存在するのです。

しかし、実際の所、2012年以降のGDP成長率は、0.7%と、国家破綻したギリシャと、その影響を受けたフィンランドが下回るのみです。確かに、裕福そうに見えるオーストリアですが、抱えている問題は根が深そうです。

先に掲載した通り、オーストリアの人口は、900万人弱です。東京都の人口が1200万人と言われていますから、それよりも少ない需要しか、国内には存在しません。結果として、何を開発するにしても、何を生産するにしても、最終的には海外への輸出を視野に入れて計画する必要があり、どうしても、隣国のドイツやハンガリーなどを見て、グローバルマインドにならざるをえません。

オーストリアでは、技術以外のいわゆる研究やマーケティングが疎かにされてきた背景が見えます。実は、1998年時点で、ロシアとウクライナを含む中東欧の人の16%が学位を持っていたのに対し、オーストリアでは7%に過ぎませんでした。オーストリアの企業が東欧に投資した際に移転したのは熟練の製造業の仕事だけではありません。価値ある研究を生み出す研究活動の移転が、オーストリアの低成長を齎してしまったのです。

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