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反グローバリズムの潮流(チェコ総選挙では、反EU勢力が躍進、チェコのトランプ率いるANOが第1党に)

0171020at22_t [1]前回はオーストリアで、反移民を政策に掲げる右派政党が第一党になり、反EUを掲げる極右政党との連立政権が樹立されたことを紹介しましたが、オーストリア総選挙の1週間後に行われた、チェコ総選挙ではEU懐疑派の政党ANOが第一党になり、他にも反移民、反EUを掲げる政党が躍進しました。連立政権協議が難航しているようですが、ついに反EU政権がヨーロッパで誕生する見込みです。

世界的に反グローバリズムの流れが加速している事は間違いないようですが、チェコの経済状況を調べてみると、なぜ反EU勢力がここまで躍進したのか不思議でもあります。

チェコは自動車産業をはじめとする機械工業が盛んで、EUとの貿易が経済の中心です。そして経済成長も安定的に推移しており、イスラム人の比率は0.1%以下と移民問題も全く深刻ではありません。労働力不足から人件費が上昇し、投資がルーマニア等の東欧諸国に流れ始めていると言う傾向はあるようですが、失業率は3%台で安定しています。

これまで反グローバリズムが台頭してきた背景には、自由競争の中で貧富の格差が拡大し、一部の富裕層に富が集中し、一般大衆の多くが貧困になり不満が高まると言う現象がありましたが、前回紹介したオーストリアや今回紹介するチェコは少し違うようです。

大衆発と言うよりも、マスコミ発で政権交代が行われた印象が強く、マスコミを支配している経済界の中で、権力争いが行われ、支配勢力が変わりつつあるのかもしれません。

 

■ゼマン大統領、10月20日の総選挙実施を決定2017年4月10日 [2]

チェコのゼマン大統領は6日、下院(定数200)の選挙を10月20~21日に行うと発表した。現政権は4年の任期を満了する格好だ。2013年に実施された前回選挙では、当時最大野党の社会民主党(CSSD)が第1党の座を確保。だが、獲得議席数が50議席にとどまったことから、中道右派の新党「ANO2011」およびキリスト教民主連合と共に3党連立政権を樹立した。

ただ、直近の世論調査では、バビシュ財務相率いるANOの支持率がソボトカ首相率いるCSSDを上回っており勢力が反転する可能性が高い。ANOは、反汚職キャンペーンの推進やポピュリスト的なアプローチで支持を獲得。バビシュ財務相はかねて、ユーロ導入に対する否定的な見解を明らかにしている。これに対し、CSSDは北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)と足並みをそろえる方針を強調している。

■「チェコのトランプ」率いる政党、総選挙で第1党に2017年10月22日 [3]

チェコ総選挙(下院、定数200)は21日に開票され、既存政党や欧州連合(EU)に対する有権者の不満を背景に、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領になぞらえた「チェコのトランプ」の異名を取る富豪アンドレイ・バビシュ(Andrej Babis)氏の新興政党「ANO2011」が第1党となった。

チェコ経済は堅調だが、専門家の間では、重い債務を抱えていたり、低賃金で長時間働いていたりする国民の多くが取り残されたと感じ、不満のはけ口を求めてポピュリズム(大衆迎合主義)政党やEU懐疑派政党、極右・反EU政党に傾いているとの見方が出ている。

選挙の勝利後にテレビで放送された演説の中でバビシュ氏は、ANOは「親欧州派」で「民主主義を脅かさない」と述べた半面、欧州統合に積極的なEU加盟国グループが先に緊密な連合を形成し、それ以外の加盟国が後で加わる「ツースピード・ヨーロッパ」の案への不満を表明し、議会の全政党に連立交渉への参加を呼び掛けた。

■“チェコのトランプ”総選挙で圧勝!反EU・反難民政権誕生へ。2017年10月25日 [4]

◆チェコ総選挙の結果発表。得票率上位の主要政党はご覧の通り。

得票率29.8%(ANO2011) → 「チェコのトランプ」と呼ばれる人が党首。反難民。

得票率11.2%(市民民主党) → EU懐疑派。経済自由主義。中道右派

得票率10.7%(自由直接民主主義) → 日系人オカムラ氏が率いる右翼政党。

現首相が率いる政権与党(社会民主党)は得票率7.3%と惨敗。

上述の3つの政党は、主張の強弱はあるものの、難民の積極的な受け入れなどのEUのこれまでの政策に反発していて、ドイツやフランスなど大国中心のEUの運営方法にも批判的であり、多くのチェコ国民の不満の受け皿となりました。

チェコは現在、EU(欧州連合)に加盟していますが、単一通貨ユーロはまだ採用しておらず、従来のチェコ・コルナが流通しています。経済規模はあまり大きくなくて、日本経済の20分の1から30分の1程度。ドイツを中心とする欧州諸国との貿易などで経済が成り立っています。

欧州では、EUに批判的だったり、移民・難民に反発したり、従来からそこに住んでいる市民(民族)を重視するようなナショナリズムが台頭しています。具体的には、9月下旬、ドイツの総選挙において、反移民・反EUの右派政党が0議席だったのが94議席の第3政党へと大躍進しました。さらに10月中旬、オーストリアで反移民・反難民を主張する政党が第1党になり、もっと強いオーストリア人第1主義を掲げる右派政党が第2党になりました。

いま、欧州は全体的に経済がましな状態なので、各国がEUの下でまとまっていますが、この先、景気が下り坂になりますと、EUの空洞化や、さらに言えば、EU分裂危機など混乱を招くような火種は、すでに欧州の多くの国が抱えているとみてよいでしょう。

■チェコ下院選挙、前財務相率いる「不満を抱く市民の運動(ANO)」が圧勝2017年10月31日 [5]

チェコで20、21日実施された下院選挙(定数:200)は、富豪のアンドレイ・バビシュ前財務相(63)率いるポピュリスト政党「不満を抱く市民の運動(ANO)」が29.6%の得票を確保し、他党に大差をつけて勝利した。 改選前の第1党、社会党(CSSD)は7.3%まで票を減らした。ANOは今後、安定した政権を樹立するため他党との連立交渉に臨むが、詐欺疑惑のさなかにあるバビシュ氏と手を組もうとする政党が少ないことから組閣は難航が予想される。排外主義の極右政党と連立する可能性もある。

チェコは景気が好調で、失業率も欧州連合(EU)内で最低水準にある。このため、選挙戦では経済や社会保障よりもEUに対するスタンスが争点となった。ANOはEU離脱こそ目指してはいないが、難民強制受け入れ決議に激しく抗議し、ユーロ導入にも懐疑的な姿勢だ。

伝統的政党への不満も表面化した。収賄などのスキャンダルが無くならないためだが、それでも、詐欺疑惑の渦中にあるバビシュ氏が大勝した背景には「候補者(党首)個人を好意的にみているかどうか」が有権者の判断の大きな理由になったからとみられている。また、大企業を経営してきたバビシュ氏の経歴を評価し、「任せれば国をうまく運営してくれる」という期待も集めたもようだ。

■日系議員オカムラがチェコの右傾化をあおる2017年11月2日 [6]

総選挙で、反イスラムと反EUを公約に掲げる極右の新党「自由と直接民主主義(SPD)」が3位に付ける躍進を遂げた。SPDを率いる日系の上院議員トミオ・オカムラ(45)は日本人の父とチェコ人の母を持ち、幼少期を日本で過ごした人物だ。「チェコのイスラム化を食い止めたい。移民を全く容認しない姿勢を推し進めたい」と、オカムラは選挙後に語った。

ただし、チェコではイスラム教徒は人口のわずか0.1%で、深刻な難民問題も発生していない。それでもオカムラの主張が国民の共感を得る背景には、国家消滅の脅威に怯えてきたチェコの歴史的な経緯と、欧州各国で相次ぐテロへの恐怖心があるとみられる。

■堅調に成長するチェコ経済の現状2017年04月06日 [7]

チェコは2004年のEU加盟以降、海外からの直接投資を積極的に受け入れ、自動車産業を中心に輸出主導の発展を遂げた。チェコに外国投資が流入した背景には、伝統的に発展した製造業の存在やドイツに近い立地条件が挙げられるが、これに加え、財政の健全化や物価・為替の安定にある。チェコは東欧諸国随一の自動車産業の製造・輸出拠点としての地位を築いたが、近年の労働市場の需給のタイトさや近隣の東欧諸国の成長も相まって、投資動向に変化が生じ始めている。

チェコは1989年に民主革命(ビロード革命)で民主化を果たし、93年にスロバキアと平和的に分離、独立した。95年に市場経済移行国としてOECDに加盟し、製造業を柱に成長を遂げた。2004年のEU加盟以降は自動車分野への外国直接投資をテコに輸出主導の成長を遂げた。チェコでは伝統的に機械産業が発達しており、欧州有数の工業国として発展してきた。ドイツと陸続きであることから、2000年代には多くのドイツ自動車メーカーや自動車関連会社が製造拠点をチェコに移管した。これに伴い、チェコからドイツや欧州向けに輸出が拡大した。チェコはドイツの製造・輸出拠点としての地位を確立し、ドイツの裏庭と称されるようになった。また、日本、韓国などの自動車メーカーの進出も進み、東欧諸国随一の自動車生産・輸出拠点となった。

チェコは人口が約1,000万人と少ないうえ、現在の労働市場は完全雇用に近い状態となっており、近年、労働者不足と賃金上昇が顕在化している。金融危機の影響から失業率は10年に7.8%となったが、それ以降低下傾向にある。17年1月の失業率は3.5%まで低下し、EUの中で最も低い水準となっている。また、実質賃金も14年以降、3~4%の幅で上昇している。労働者不足と賃金の上昇により、企業の投資規模は大規模なものから小規模なものへと変わる傾向がある。また、より賃金の安いルーマニアなどに投資先が移行している。

チェコはユーロを導入していない。コルナはこれまでユーロに対して安定的に推移してきたため、輸入インフレや共通の金融政策運営のリスクを伴うユーロ導入については国民の多くは懐疑的である。政府はユーロ導入に慎重な姿勢を示しており、早期のユーロ導入はないと見込まれる。

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