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反グローバリズムの潮流(イタリア新政権は反EU姿勢を強調、ロシアに急接近?)

576px-Manifestazione_Lega_Nord_Torino_2013_51-e1528703389612-550x493 [1]先週、反EU政権が樹立したイタリアですが、どの様な政策を進めようとしているのか調べてみました。その中で見えてきたのが、ドイツ、フランスの2国がEUを牛耳る中で、イタリアだけではなく、それに反発するEU諸国が、ロシアとの関係を強化しつつあることです。今後、EUはどうなっていくのでしょうか。

まず、コンテ首相の所信表明演説のポイントをまとめてみました。

①五つ星の公約である最低所得保障(ユニバーサル・ベーシックインカム、UBI)

②同盟の公約である不法移民の流入阻止(難民が域内で最初に到着した国で保護申請することを義務付けたEUのダブリン規則の根本的な見直し

③ユーロ圏の財政規律は「市民を助けることを目的」にすべきしと主張し、欧州連合(EU)の統治枠組みを変えるために交渉を行う

④ロシアとの軍事的緊張が高まる北大西洋条約機構(NATO)には関与し続けると強調したが、ウクライナ危機に伴うEUの対露制裁の解除を働きかけていく

①最低所得保障②不法移民の流入阻止③ユーロ圏の財政規律見直しは、これまでにも報道されていた内容ですが、④対ロ制裁解除、はあまり報道されていませんでした。ここに来て、イタリアとロシアの関係に注目が集まり始めた背景には、イタリア新政権とドイツ、フランスの対立姿勢が明確になって来ている事があります。

イタリアのサボナEU問題担当大臣は「ユーロから離脱すべきなのは、イタリアではなく、ドイツだ。低金利の恩恵を受け、ますます黒字化するドイツと南欧州諸国との思想は一致しない。」と発言、フランスのマクロン大統領はイタリアが620人余りの移民受け入れを拒否したことに「あざけりと無責任」と批判するなど、関係は確実に悪化しています。

EUの財政政策がドイツ、フランス主導で、EUの中でも経済が弱い国には厳しい枠組みになっていることはある程度分かっていましたが、移民問題もイタリアには不利で、ドイツ、フランスに有利な内容になっています。難民が域内で最初に到着した国で保護申請することを義務付けたEUのダブリン規則がありますが、イタリアは、地中海を経由して欧州を目指す難民の「玄関口」にあたり、国民には不公平な負担への不満が積もるのは当然です。イタリアやギリシャは見直しを迫り、EUは2年近く同規則の見直しの議論を進めているが、実現は遠のいているのです。

イタリアが、EUを変えようと思えば、ドイツ、フランスに対抗す出来る勢力が必要であり、その為にロシアに急接近しているのです。そして、それはイタリアだけではなく、オーストリアに加え、ハンガリー、ポーランド、チェコ、スロバキアの東欧諸国4か国も親ロシア姿勢を鮮明にしています。

今のところ、イタリアは、ユーロやNATOから離脱することは考えていないと言っていますが、このまま、ドイツ、フランスが強硬な姿勢を貫き続ければ、イタリアは脱EU、親ロシアの方向に大きく舵を着て行く可能性が高くなります。

■イタリア新首相、急進的な変革約束 ユーロ離脱「検討せず」2018年6月6日 [2]

首相は「本当のところ、われわれは急激な変化をもたらしており、そのことを誇りに思う」とした上で、五つ星の公約である最低所得保障(ユニバーサル・ベーシックインカム、UBI)や同盟の公約である不法移民の流入阻止が優先課題になると語った。

コンテ氏は所信表明演説で、ポピュリズムと反体制派で構成される政権と指摘されていることに関し、国民の要求に耳を傾けるのがポピュリズムで、古い特権や権力を取り除くのが反体制派なら「そう呼ばれるのにふさわしい」と受け入れる姿勢を示した。

金融市場で懸念がある財政政策については、ユーロ圏の財政規律は「市民を助けることを目的」にすべきと主張し、欧州連合(EU)の統治枠組みを変えるために交渉を行う意向を示した。

■コンテ新政権、発足へ EU揺さぶり2018年6月6日 [3]

コンテ首相は、前日に上院で行った所信表明演説で「欧州は我々の居場所だ」と述べて加盟国の不安払拭(ふっしょく)に努める一方、難民受け入れルールへの注文や対ロシアの経済制裁の緩和などに言及し、EUに揺さぶりをかけた。

難民が域内で最初に到着した国で保護申請することを義務付けたEUのダブリン規則の根本的な見直しを迫り、加盟国に公正な受け入れを強制するシステムの導入を求めた。イタリアは、地中海を経由して欧州を目指す難民の「玄関口」にあたり、国民には不公平な負担への不満が積もる。EUは2年近く同規則の見直しの議論を進めているが、実現は遠のいている。

外交面では親露姿勢が際立った。コンテ氏はロシアとの軍事的緊張が高まる北大西洋条約機構(NATO)には関与し続けると強調したが、ウクライナ危機に伴うEUの対露制裁の解除を働きかけていく方針を示した。

■ドイツ式ユーロにNO!を突きつけるイタリア新政権(松崎 美子氏)2018年6月6日 [4]

週末日曜日、イタリアのサボナEU問題担当大臣は「ユーロから離脱すべきなのは、イタリアではなく、ドイツだ。低金利の恩恵を受け、ますます黒字化するドイツと南欧州諸国との思想は一致しない。」と語り、新しく経済財務相に就任したトリア氏も、この意見を支持していることがわかった。

同じ日曜日、メルケル首相のインタビューが載っていた。イタリア新連立政権が2500億ユーロ規模の債務削減を欧州中銀(ECB)に求める噂についてメルケル首相は、「ユーロ圏統合の深化と結束はとても重要である。しかし、これは加盟国の債務を他の加盟国全体で共有することとは違う。イタリアの債務削減を認めるつもりは、ない。」と一蹴している。

■イタリア新政権 懸念されるEUとの対立激化2018年6月8日 [5]

イタリア新政権はEUの結束を揺るがしかねない。EUに対しては、加盟国に課す財政規律や、難民受け入れ政策の見直しを求める意向を表明した。EUとの連携について不安を抱かせる滑り出しと言えよう。強硬姿勢の背景には、国民の反EU感情の高まりがある。世論調査では、EU加盟国であることを肯定的に評価する回答が39%と、全28か国で最低を記録した。イタリアは、2011年の経済危機によって、EU主導の財政緊縮路線と構造改革を強いられた。国民の「改革疲れ」や不法移民の増加が、ポピュリズム政党の躍進と反EU的な政策の素地となっているのは間違いない。

ユーロ圏で第3の経済規模のイタリアは、1958年の欧州経済共同体の発足以来、地域統合の中核グループに属してきた。統合を主導する独仏は、EU懐疑派の政権が生まれた事態を深刻に受け止めねばなるまい。各国の個別の事情に配慮せず、財政規律を過度に重視するEUの政策が、反発を招く一因になっているのではないか。

■イタリア新政権 問題提起と受け止めよ2018年6月9日 [6]

イタリア新政権がポピュリズムを鮮明にしている。行き過ぎは禁物だが、耳を傾けるべき主張もある。イタリアでは南北間をはじめとする格差が拡大し、EU統計局によると、若者(十五~二十四歳)の失業率は30%以上とドイツの五倍以上に悪化している。難民移民の流入で不満は高まり、EUやドイツが憎しみの標的になった。

EUは内憂外患に直面している。英国の離脱決定に続き、ハンガリーやポーランドなど東欧諸国では強権政治が横行し、人権などの価値観を脅かしている。トランプ米政権は、欧州の安全保障にも直結するイラン核合意からの離脱を表明、鉄鋼とアルミニウムに高関税をかける輸入制限をEUにも適用するとし、欧州との対立姿勢を際立たせる。

米国離れを強いられている欧州には、これまで以上の結束が求められている。EU第三の経済大国イタリアの協力は欠かせない。新政権にはEU離脱の意思まではなさそうだ。ドイツ、フランスと手を組み、より民意をくんだEUづくりを進めてほしい。

■イタリア新政権の財政拡大措置に警告、中銀総裁「崖から転落」2018年6月9日 [7]

イタリア銀行(中央銀行)のビスコ総裁は8日、同国の財政状況について、いかなる政権も国の財政に与える影響が限定的な政策しか取れず、そうでなければ崖から転落するリスクをもたらすだろうと述べた。

イタリアでは大衆迎合主義(ポピュリズム)政党の「五つ星運動」と極右政党「同盟」による連立政権が成立。エコノミストの試算では、その政策に必要な予算は1000億ユーロを超えるとされる。イタリアの公的債務は世界第3位の2兆3000億ユーロ規模。ビスコ総裁は、財政政策について「身の丈に合わない措置を取るべきではない」と警告した。

■ロシアと急接近するイタリアのポピュリズム新政権。EUの行方はどうなる? 2018年06月13日 [8]

EU加盟諸国のリーダー国の一つであるイタリアの首相が、EU委員会やドイツ、フランスと事前の調整もなく、ロシアに科している制裁を解除することを率先して実行することを表明したのはEU加盟国間の均衡を砕くことに繋がるかもしれない。

3月6日にモスクワでサルビニの同盟とプーチンの統一ロシアの間で合意が交わされていたのである。その合意内容とは、両国の安全と防衛における協力、将来の経済協力、不法移民の取り締まり、リビアの和平回復、テロリズムとの戦い、というまではどこでも見当たりそうな合意内容である。ところが、それに加えてロシアへの制裁の解除という内容が盛り込まれているのである。特に、制裁に関してはその影響でイタリアは50億ユーロ(6500億円)の損失、数千人の雇用の喪失に繋がったという苦い経験をしている。

コンテ首相が所信表明の演説をしていた時に、プーチン大統領はオーストリアを訪問していた。クルツ首相は、ウイーンは東と西を繋ぐ架け橋になりたいと望んでいるという。また、ロシアとは政治交流を深めたい意向も表明している。プーチンにとっても、オーストリアが親ロシア派として動いてくれることを望んでいるのである。

更に、プーチンの戦略に加担するかのように、東欧にはヴィシェグラード・グループというのが存在している。このグループに加盟しているのはハンガリー、ポーランド、チェコ、スロバキアの4か国で、どの国も嘗て旧ソ連の影響下にあった国で、今もロシアに親近感を持っている国々である。特に、ハンガリーとポーランドはEU委員会の政治方針に常に異論を唱えている2か国である。

イタリアのポピュリズム2政党の政権が親ロシア色を強めると西欧と東欧のEU加盟国の間で均衡が崩れる可能性は十分にある。

■イタリア新政権 難民・移民の船受け入れ拒否で波紋2018年6月14日 [9]

イタリアと島国マルタの間の地中海では、アフリカなどからの難民や移民620人余りを乗せた、人道団体が運航する船が救助を求めていましたが、今月発足したイタリアの新政権は、11日、「EU=ヨーロッパ連合のほかの加盟国も難民の受け入れを分担すべきだ」などとして、船の入港を拒否しました。

これについて、フランスのマクロン大統領が、「無責任な対応だ」などと厳しく非難したところ、イタリアの新政権は13日、ミラネージ外相が、首都ローマに駐在するフランスの大使を呼び出し、直接抗議したほか、予定していた両国の経済相の会談を急きょ延期しました。

■イタリアとフランス、移民問題めぐり対立激化 閣僚会談を延期2018年6月14日 [10]

イタリアのポピュリスト連立政権は、リビア沖で先週末に救助された620人余りの移民受け入れを拒否。これに対し、フランスのマクロン大統領は「あざけりと無責任」と批判した。イタリア政府は13日、マクロン大統領の発言を「容認できない」とし、フランス大使を呼び出していた。

イタリアの極右政党「同盟」出身のサルビーニ内相は先に、フランスから「正式な謝罪」がなければ、欧州連合(EU)首脳会議を前に15日に予定されるイタリアのコンテ首相とマクロン大統領の首脳会談を中止すべきだとの考えを示している。

■イタリア新政権の財政計画、債務持続性の不透明感増す=格付け会社2018年6月14日 [11]

ドイツの格付け会社スコープは13日、イタリアの新政権が掲げる歳出拡大策や増税撤回計画について、既に懸念されている同国の債務の持続性を巡り不透明感を高めていると指摘した。スコープはイタリアの格付けを「Aマイナス」としている。これはS&Pグローバルやムーディーズ、フィッチの格付けより2段階高い水準。スコープはリポートで「五つ星運動と同盟の連立政権樹立は、マクロ経済と財政政策の見通しに不透明感をもたらす」とした。

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