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反グローバリズムの潮流(カタルーニャ独立問題は膠着状態、EU推進派は対話路線に転換か)

BBM9yZL [1]前回は、反グローバリズムの潮流(カタルーニャは自治を回復、スペイン首相も交代したが親EU反独立派) [2]で、カタルーニャ州、スペインでそれぞれ新政権が成立したところまでお伝えしました。政権が交代したスペインでカタルーニャ独立問題に進展はあったのか調べてみました。

7月10日に、スペインのサンチェス新首相とカタルーニャ州のトーラ新首相の会談が行われましたが、互いに独立は認めない、独立はあきらめないと主張し合うにとどまり、特に進展は無かったようです。但し、互いに話し合いを続けることは合意しており、ここしばらくは過激な抗争に突き進むことは無さそうです。

ドイツがプチデモン前州首相を反逆罪の容疑で送還することを認めなかったため、スペインの最高裁はプチデモン前州首相ら独立派指導者に対する欧州逮捕状と国際逮捕状を取り下げました。これでプチデモン氏はスペインに戻らない限り、逮捕される恐れはなくなり緊迫した状態では無くなってきました。

独立派の今後の活動目標は、まずプチデモン氏らスペインを追われている独立派の政治家たちが、スペインに帰国できるようにすることになりそうです。スペインは独立派が過激な独立運動を行わないことを条件にして、いずれ帰国を認める可能性が高そうです。

この間の動きは、独立派に有利に事が運んでいるように見えて、反EU派の勢力が力を付けてきたようにも見えましたが、ドイツの裁判所が反逆罪での送還を認めず、スペインの最高裁が欧州・国際逮捕状を取り下げた流れを見ると、EU推進派があえてカタルーニャ独立派への対応を変えて来ている感じもします。

イタリアで反EU政権が成立した事もあり、EU推進派も従来のような強硬路線を続けるのは危険であり、多少のことなら妥協する事で反EU派の勢いを削ぐ戦略に転じたのかもしれません。

 

■ペドロ・サンチェス中央政府首相とカタルーニャ州キム・トーラ首相が会談 両政府間委員会出席を約束2018年7月10日 [3]

カタルーニャ州政府は先週金曜日に、アルトゥール・マス政権時代の2015年11月9日に行われたカタルーニャ州の分離独立を問う違法な住民投票及び一方的な独立宣言を有効であるとの法案を可決、中央政府は憲法裁判所に対し違憲であると訴え出る構えを示していた中での会談だった。

サンチェス首相はキム・トーラ州首相に対し、「民族自決権」を認めないと明言。しかしながら、2011年から行われていなかった、両政府間の政治的問題を解決するための両政府間委員会の再開およびこれに出席する意向を示したことを発表した。

トーラ州首相は、ペドロ・サンチェス首相に対し「(州)選挙で勝利したカルラス・プッチダモンもこの会談に出席するべきである。」と、(中央政府およびアムネスティが存在を否定している)政治犯の解放を求めるとともに、カタルーニャ州は独立のため如何なる方法を行使することを止めないと明言した。

■カタルーニャ前州首相送還を容認 スペインに、ドイツの上級地裁 2018年7月12日 [4]

ドイツ北部シュレスウィヒ・ホルシュタイン州の上級地裁は12日、スペイン北東部カタルーニャ自治州の独立問題に絡み反逆と公金横領の容疑で国際手配され、ドイツ当局が一時拘束したプチデモン前州首相について、公金横領容疑でのスペイン送還を容認すると発表した。ただ、反逆容疑での送還は認めなかった。

スペイン当局はプチデモン氏の送還を受けた場合、公金横領罪でしか立件できなくなる。最高刑禁錮30年の反逆罪に問うことで独立運動を抑え込もうとしていただけに、打撃となりそうだ。

■スペイン最高裁、カタルーニャ前首相らの国際逮捕状取り下げ2018年7月20日 [5]

スペイン最高裁判所は19日、北東部カタルーニャ自治州から国外に逃れたカルレス・プチデモン前州首相ら独立派指導者に対する欧州逮捕状と国際逮捕状を取り下げた。これにより、プチデモン氏らが他国で拘束され、送還されることはなくなった。

ヤレーナ判事は今回の判決文で、ドイツの裁判所が今月、プチデモン氏の送還に同意したものの、公金不正使用の容疑のみが対象で、反逆容疑での送還は対象外だったことから、逮捕状の取り下げを決定したと説明した。ただし、スペインでの逮捕状は引き続き有効なため、帰国すれば拘束されることになる。

■スペイン前与党が新党首に党内右派の37歳の下院議員を選出 右旋回で党立て直しへ2018年7月22日 [6]

スペイン最大野党で保守系の国民党は21日、新党首に下院議員パブロ・カサド氏(37)を選出した。カサド氏は、カタルーニャ自治州の独立運動に対して強硬姿勢を示す党内右派。サンチェス首相(46)の社会労働党政権への対立色を鮮明にしている。カサド氏は演説で、カタルーニャ州を念頭に「分離・独立主義に対抗するため、刑法改正を目指す」と述べ、締め付け強化の方針を示した。

■カタルーニャ自治州前首相、ベルギーを拠点に独立運動継続2018年7月29日 [7]

プチデモン氏は28日ベルギーに入り、ベルギー首都ブリュッセルのカタルーニャ代表部で記者会見を開き、「これは私の旅路の終わりではない。私はカタルーニャ人の大義名分を擁護するため、欧州大陸の端まで旅する」と述べた。記者会見にはプチデモン氏が後継指名したキム・トラカタルーニャ自治州首相も同席した。トラ首相はプチデモン氏をカタルーニャの「正統な大統領」とみなしており、同自治州でのプチデモン氏の影響力は今もなお強い。

プチデモン氏はスペイン国内では依然として反逆容疑(有罪になれば25年以下の禁錮刑が科される)と公金不正使用容疑で逮捕状が出ているが、今やベルギーからスペイン以外のどこにでも好きな場所に行けるようになった。理論上は、スペインの法律で反逆罪の時効とされている20年間を外国で過ごすことも考えられる。

■カタルーニャ連続テロから1年、犠牲者追悼=スペイン首相「社会の結束を」2018年8月17日 [8]

スペイン北東部カタルーニャ自治州の州都バルセロナの連続車両突入テロ事件から1年を迎えた17日、現場の一つとなった市中心部ランブラス通り近くのカタルーニャ広場で追悼式が行われた。追悼式にはサンチェス首相やカタルーニャのトラ州首相、スペイン国王フェリペ6世が出席した。サンチェス首相はツイッターを通じ「全てのスペイン社会の結束」の必要性を強調した。

ただ、カタルーニャ州の独立に批判的なフェリペ6世に対する独立派の反発は強い。式典に先立ち、広場には「カタルーニャはスペイン国王を歓迎しない」と書かれた垂れ幕が掲げられた。

■カタルーニャ州多発テロ前内務大臣表彰式でキム・トーラ州首相「不公平なスペイン国を攻撃しよう」2018年8月18日 [9]

キム・トーラ州首相は17日、「不公平なスペイン国を攻撃し、カタルーニャ共和国を実現しよう。」と語ったことが分かった。現在反乱・扇動・公的資金横領等の容疑で逮捕収監されているホアキン・フォルン前州内務大臣や国外に逃亡している「政治犯」(中央政府は認めていない)を指して、中央政府を非難。また、追悼式には国王とペドロ・サンチェス新首相も参加、州首相は「国王の隣に座りたくなかった。」と発言している。

国籍、宗教などを問わず、カタルーニャ州市民を真二つに分けている独立問題は今後収束する気配を見せていない。 今月発表された国が行った世論調査ではカタルーニャ独立問題に関する国民の関心は全体の6.1%と、全国的にはあまり関心がない。

■カタルーニャ州独立問題 ペドロ・サンチェス首相「パブロ・ヤレナ判事に対する訴訟は個人的な問題ではなく国家の問題である」2018年8月28日 [10]

2018年6月5日カルラス・プッチダモン前州首相被告人を含む前州政府大臣ら5人は、逃亡先であるベルギーで、カタルーニャ州独立問題を扱っているパブロ・ヤレナ最高裁判事を相手取り、「公平で公正な裁判を受ける権利を侵害した」として民事訴訟を起こした。

これに対しパブロ・ヤレナ最高裁判事はスペイン国に対し弁護士を雇うよう要請。しかし24日、国はこの要請を「ヤレナ裁判官個人のために弁護士を雇うことはない」とし退けた。ヤレナ裁判官はラジオのインタビューで「国に見放された」と遺憾の意を表明。

27日、南米を訪問中のペドロ・サンチェス首相が「初めからこれは個人的な問題ではなく、国家の問題であると考えていた。」と発言、ヤレナ裁判官を弁護する弁護団をベルギーで雇うことを決定した。

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