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迫りくる大暴落と戦争刺激経済-20~イングランド銀行の理事がマネー・クリエイションを認め始めた~

グリーンスパン [1]

グリーンスパンFRB議長はヴェルナーの理論:「中央銀行がやっていることは、自分勝手な信用創造であり、かつマネー創造だ。ここに最大の欺瞞、インチキがある」ということを知っており、かつては自身も「やってはいけない」と論文で書いたが、彼はそれを無視して、国家の片棒を担いでいた。正確には金貸しの手先と化していたのだ。

 

その後歴代のFRB議長は金貸しの意のままの政策を取り続けた。

その最大の惨事がリーマン・ショック。FRBの“信用創造”は20兆ドル。2000兆円。これでアメリカは危機を2011年に乗り切った。しかし、さらにその毒は、内部に隠されて広がり、今そのしわ寄せが押し寄せている。

 

2015年になって、イングランド銀行の理事のエコノミストで、本当の金融政策のプロたちが、過剰にお札(紙幣)を作って供給:財務省に裏からこそこそと資金を渡してきたこと。それを恥ずべきことだと告白を始めている。これは一体どういうことだろう。

 

イングランド銀行といえば、信用創造マネーの創始者。無から有を作り出す金貸しのご本家だ。考えられるのは、金貸しの奥の院である金主、イギリスであれば、ヴェルフ、ヘッセン一族の金貸しからの絶縁宣言とも受け止められる。ちょうどイギリスのEU離脱とも符合する。

脱金貸し支配、脱グローバル主義に舵を切ったと見て良いとおもわれる。

 

『迫りくる大暴落と戦争“刺激”経済』(副島隆彦 著) [2]からの紹介です。

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■グリーンスパンFRB議長はヴェルナーを無視した

 

2001年刊の『円の支配者』を出版する6年前。1995年に、ヴェルナーは、英語の論文をどんどん書いて発表している。この論文を読みたい、と各国の中央銀行の幹部や、FRBから要望が殺到した。ヴェルナーは、FRBの一体、誰が自分の論文を読みたいと取り寄せたのかを、機会があって尋ねた、ワシントンDCで、FRBに直接聞きにいった。すると、「論文を請求したのはアラン(グリーンスパン議長その人)だよ」と言われた。グリーンスパンがこの時、FRBの議長だった。彼は、1987年から2005年まで、実に18年間もFRB議長を務めていた。

 

グリーンスパンは、若い頃からリバータリアンであり、リバータリアニズム思想を築いた特異な女性思想家のアイン・ランド女史の若い愛人でもあった人だ。グリーンスパンは、20代で名うての投資家として名を馳せ、優れた論文も書いて「中央銀行による信用創造を国家が悪用してはならない」という論文で有名になった人だったのだ。

 

それから2年後、1997年9月にIMFの総会が香港であったときに、アナリストとして参加したヴェルナーは夕食会の積で、グリーンスパンFRB議長を見つけて近寄って挨拶をした。グリーンスパンは、「君がヴェルナー君か。論文は読んだ。信用創造についての話しだったね」と。そこでヴェルナーが、論文への感想を求めると、グリーンスパンは、「いや、おぼえてないね」と言って立ち去ったという。(中略)

 

グリーンスパンは、自分もまた、歴代FRB議長(中央銀行総裁)と同じく、「やってはいけない」と自分が論文で書いた、政治の道具としての信用創造に手を染めていることに厳しい自覚があった。自分が政府(ビル・クリントン政権)に加担して、本当は政府から中立で独立であるべき中央銀行総裁の役目を放棄して過剰な創造マネーをつくって、アメリカを表面だけの好景気(バブルだ)にしていた。このことをグリーンスパンは、「自分は己に恥ずべきことをやっている」という自覚があった。だがグリーンスパンは、自分もまたこうでもしなければ、国家というものはやっていけないのだ、と居直った。そういう秘密をアメリカの中央銀行であるFRBは抱えている。ヴェルナーの文を載せる。

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冷たく突き放されたのだ。セントラル・バンカーはわたし(リチャード・ヴェルナー)の仕事を快く思っていないらしいと、私は気付いた。私は彼らの秘密を暴露していた。

 

疑問の余地はない。アラン・グリーンスパンは、自分の信用創造理論を今でも信じている。今度はそれを実践しているのだ。何をしているか、彼にはよく分かっている。アメリカで起こっている出来事を、彼ほどよく認識している者はほかにはいないだろう。

 

アラン・グリーンスパンは、バブルのあとに来る経済の大混乱は、戦前の経済危機も色あせるほどのものであることを知っている。個人の預金者は金を失う。アラン・グリーンスパンの(1967年)の言葉を借りれば、「福祉国家の金融政策は、冨の持ち主たちが身を守る術を持たないようにすること」だ。いつかは必ずそうなるはずだが、FRBが(今の緩和の)政策の大転換を実行して、信用創造を急激に引き締めつづければ、アメリカの大半は大損する。大恐慌が起こるだろう。もちろん、適切な政策があれば回避できるが。(『円の支配者』P337)

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ヴェルナーには、このあと何が起きるかがハッキリとわかっていた。どのような激しい金融危機がアメリカを襲い、そしてそれが世界中に波及することを冷酷に予見して知っていた。それが2008年9月にニューヨークを襲ったリーマン・ショックという大きな金融危機だった。この時ほとんどのニューヨークの大銀行が一瞬、破綻した。

 

このリーマン危機をまたしても巨額のFRB信用創造(20兆ドル。2000兆円)で、アメリカは2011年には乗り切った。しかし、さらにその毒は、内部に隠されて広がる。その次の巨大な、それこそ大恐慌(ザ・グレイト・デプレッション)と呼べるものが、アメリカを、そして世界を襲うのである。ヴェルナーはこのことまでも分かっている。

 

■イングランド銀行の理事がマネー・クリエイションを認め始めた

 

リチャード・ヴェルナーは、今はロンドンの南の方にあるサウサンプトン大学というイギリスの二流大学の教授をやっている。ヴェルナーは、中央銀行が政府を助けるために過剰な信用創造を行って、不必要な創造マネーを作る。その事が、バブルを生み出し、それが破綻することで国民が困ることを見事に証明した。なんと、2015年になってイングランド銀行の理事のエコノミストで、本当の金融政策のプロたちが、「ヴェルナー理論は正しい」と言い出した。「私たちは確かに自分達で勝手にお金を作ってきた。」と。

 

バンク・オブ・イングランドは、確かにマネー・クリエイションをする権限を持っている。即ち、通貨発行権者(エクスチェカー)である。だが、政府(財務省。ファイナンサー。国家の財政家)の要求と、脅迫と、なだめすかし、懇願に負けて、過剰にお札(紙幣)を作って供給してきた。財務省に裏からこそこそと資金を渡してきた。恥ずべきことだと認めた。このように英国中央銀行のエコノミスト(主任経済分析官)たちが、今頃になって告白を始めている。このようにしゃべりだしている。だが、この態度には「真実を表に出せばそれでいいんだろう」という居直りが入っている。彼らは傲慢にも居直った。

 

(中略)

 

マネー・メイキングは人間がやっていい。お金をメイクすることは、権限を与えられている人間がやっていい。それを英語で通貨発行権者(エクスチェカー)という。それは国王のわきにいて王の蔵(これをファイナンスという)の番人をやっている財政家(ファイナンサー。日本は大蔵省だ)とは違う。だからだれがお金(通貨)を発行するのかというと中央銀行だ。日本の信用創造の能力の外に、マネー・メイキング(通貨製造発行)をしている。日本は明治のはじめに、伊藤博文がヨーロッパに視察に行ってドイツのライヒスバンク(帝国銀行)よりは、ベルギー型の中央銀行がいいという結論になった。

 

ヴェルナーは、正しくは国民から直接選ばれた代表者たちが、政府とは独立にお金の量を決めて金利も決めて公正にやるべきだ、と書いている。そういう独立委員会にするべきだと書いている。実は、FRBを始め各国の中央銀行は、形上は、独立委員会なのである。だがこのルールが全く守られていない。

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