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スウェーデンのコロナ対策:国内は意外と平穏、海外のバッシングも下火に

 

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前回の投稿「スウェーデンのコロナ対策:科学的事実を無視してスウェーデン方式が圧殺されつつある。 [2]」で、マスコミ報道が科学的事実を無視してスウェーデンのコロナ対策を圧殺しようとしているとお伝えしました。その後、スウェーデンはマスコミが言うように医療崩壊し、コロナ対策に失敗したのか調べてみました。

まず驚いたのが、報道の少なさです。1月以降にスウェーデンのコロナ対策の報道は、あまり見つけることができませんでした。多分、叩くところが見つからないので、報道が少なくなっているのだろうと予測しましたが、概ねそのようです。

まず見つかったのが経済的な分析、マスコミが盛んにスウェーデンを叩いてた12月の間も、スウェーデンの緩いコロナ対策のおかげで、経済は緩やかに改善に向かっているそうです。

そして、懸念されていた医療崩壊ですが、現地在住の日本人医師の証言では、病院ごと地域ごとの役割分担や、医者の給与に200%を超えインセンティブを付けるなどの対応で病院も問題なく回っているようです。治療方法の確立で第一派の時よりも入院期間は半分で済んでいると報告されています。スウェーデンも規制は強化されていますが、強制力はなくマスクを着けている人は今も数%にとどまっている状態だそうです。

ちなみに、国王がスウェーデンのコロナ対策は失敗したと言う発言について、こう評価しています。『この発言は、インタビュアーの「今年は何が一番ストレスでしたか。」という質問に対して、「我々は失敗した。多くの犠牲者を出した」に始まる回答の冒頭であった。もっとも、国王の失言や失態は今回に始まったことではないため、国民の多くは、あまり気にしていないようであり、国内での反応はそれほど強いものではなかったが、国外での反応は非常に大きなものとなった。国王の発言の一部が切り取られ、プロパガンダ的に報道されることになったのは残念であった。』

なお、2021年2月8日の人口100万にあたりの死者数は、スウェーデンが51.9人で世界で第7位。ポーランド、ドイツ、イタリア、フランスもほぼ同水準。日本は一桁少ない5.3人です。文書 2 [3]

■感染対策と経済運営のバランスを模索するスウェーデン202117 [3]

2020年後半のスウェーデン景気は好調な製造業がけん引する形で順調に回復した。また失業率が低下するなど、雇用情勢も製造業を中心に緩やかに改善している。12月の製造業の購買担当者景気指数(PMI)は64.9と、2017年2月(65.2)以来となる高水準を記録した。サービス業のPMIもドイツなど他の欧州諸国のサービス業PMIは冬場にかけて再び中立水準を下回ったが、11月は58.6と、再び改善した。

○他方で、新型コロナウイルスの感染拡大が依然として続いており、スウェーデンでも11月以降に行動制限が強化されている。感染の動向次第では1~3月期に景気が二番底に陥る可能性がある。

緩やかな行動制限という戦略そのものが有権者に支持されていることから、ロベーン政権は商店の営業規制の強化など戦術のチューニングを通じて、感染対策と経済運営のバランスをとると考えられる。 

■第二波真っ只中のスウェーデンから 現地日本人医師による実態証言202117 [4]

宮川博士は、スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務の医師で日本泌尿器科学会専門医であり、スウェーデン泌尿器科専門医(スウェーデン移住は2007年)だ。宮川博士に「スウェーデンの『第二波』」についてご寄稿いただいた。

10月下旬から少しずつ新規陽性者が増加し始め、11月には指数関数的に感染が爆発、「第二波」という言葉を使いたがらなかった国家疫学者のテグネル氏も、とうとう第二波到来を認めざるを得ない状況に陥った。最近の感染状況は指数関数的な新規陽性者の増加は落ち着いたものの、1日あたり7000人前後、週あたり4万人程度の新規感染者が発生している。

入院患者総数は春の第一波を超え、全国で現在、3000人程度が入院している。そのうち、ICUは約350人である。ICU入院者数は第一波よりも少なく、また、ICUでの治療期間も第一波に比べて半分に短縮されるとともに治療成績も向上している。

しかし、残念ながら、一日60人前後の死亡者を出している。人口10万人あたりの死亡者数は、近隣の北欧諸国に比べれば高いが、ロックダウンなど厳しい規制を繰り返してきた他のヨーロッパ諸国と比べれば高くない(図515日現在)

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私の勤務するカロリンスカ大学病院では、第一波では、スウェーデンで最も被害の大きかったストックホルムにおける感染者の入院治療の40%を担い、ピーク時には500名近い感染者の入院患者を抱えた。病院のベッド数は約1600床であるから、ベッド数の3分の1近くが感染者であった。そのうち、ICU入院患者は約150名。ICUベッドを通常時の40床から増床し、最大200床程度までにキャパシテイーを拡大した。

ICU治療にあたるスタッフは、医師や看護師の配置換え、他の地方自体からの応援、医学部生のボランテイアが看護師として勤務するなどで増員した。ストックホルム県が緊急事態宣言をしたことにより、配置換えに応じたスタッフには220%の給与をインセンテイブとしてつけることができたし、緊急の超過勤務では最大250%の時間給とすることにより、より多くの勤務希望者を集めることができた。

スウェーデンがこの1カ月、次々と規制を強めたことに伴い、海外のメデイアは、「スウェーデンが路線変更した」と報道するようになった。現在の主な規制は、14人を超える集会の禁止、2)高齢者施設訪問禁止、3)できる限りのリモートワーク、4)有症状時の自宅待機とPCR検査、5)飲食店での20時以降のアルコール販売禁止、6)中学、高校、大学の遠隔授業、7)公共のジム、プール、美術館の閉鎖、8)ショッピングセンターなど、店あたりの最大入場人数を定め、それを遵守できなければ閉鎖措置など。

また、202117日より、通勤時間帯の公共交通機関内でのマスク着用を推奨することになった(あくまでも強制ではない)。スウェーデンでは現在でもマスク着用率は数%であり、これまでマスク着用が推奨されたことはなく、その点で世界中から注目されるとともに批判を浴びてきた。

スウェーデンでは、「国民の人権」を守ることは非常に重要視されている。国が強権を発動し、国民の行動に制限を加えるなどの「人権侵害に当たるとも考えられる政策を選択すること」に対するハードルが非常に高いと言える。その後、1228日の記者会見で、2021110日から9月末日までの「期限付きのパンデミック特別法」が提出されたと発表があり、これが可決されれば、政府がショッピングセンターや店舗などを強制的に閉鎖できるようになる。

グスタフ国王が、「我々は失敗した」と発言する一コマがあり、その発言が切り取られ、「スウェーデンは失敗した」というニュースとなり、世界中を駆け巡った。この発言は、インタビュアーの「今年は何が一番ストレスでしたか。」という質問に対して、「我々は失敗した。多くの犠牲者を出した」に始まる回答の冒頭であった。もっとも、国王の失言や失態は今回に始まったことではないため、国民の多くは、あまり気にしていないようであり、国内での反応はそれほど強いものではなかったが、国外での反応は非常に大きなものとなった。国王の発言の一部が切り取られ、プロパガンダ的に報道されることになったのは残念であった。

 ■スウェーデン、コロナ感染防止策強化 ロックダウンは「まだ」202119 [6]

スウェーデンは8日、新型コロナウイルスの感染防止に向け、商業施設やジム、集会など対象とした社会的距離対策の強化を発表した。一方、店舗閉鎖を含む都市封鎖(ロックダウン)については、必要に応じて導入する用意があるとしながらも、まだそうした状況には至っていないという見方を示した。

■スウェーデン、新型コロナの死者1万人超える2021115 [7]

スウェーデンの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による累計死者数が14日、1万人を超えた。1日の死者数は過去最多の351人を記録した。また同日の新規感染者数は6580人で、累計感染者数は518783人となった。

■人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移【世界・国別】202128 [8]

202128日で、スウェーデンのコロナによる死者数は100万人当たり51.9人で世界で第。ポーランド、ドイツ、イタリア、フランスもほぼ同水準。日本は一桁少ない5.3人。

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