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MMT(現代貨幣理論)って正しいの? ~1.国の借金の現状把握~

数年前から、「MMT」(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)が話題になっています。「自国通貨建てで借金できる国は、過度のインフレ(物価上昇)にならない限り、どれだけ借金が膨れ上がっても問題ない」という、これまでの経済学の常識(国の借金の増加→債務不履行→財政破綻)を覆す大胆な論理が、賛否両論含めてネットを賑わせています。

ステファニー [1]

画像引用:ステファニー・ケルトン教授 DIAMOND online [2] より
「MMT」理論の提唱者の一人である、ステファニー・ケルトン教授(ニューヨーク州立大)によれば、「日本国債のデフォルト確率はゼロ」、MMT理論を実証してきたのがまさに日本である、と主張しています(同上記事 [2]より)。
現代貨幣理論の代表的な主張をまとめると、以下の3つのことが挙げられます。
確かに、現代日本の財政事情にそのまま当てはまるように思います。
  • 自国通貨を発行できる政府は財政赤字を拡大しても債務不履行になることはない
  • 財政赤字でも国はインフレが起きない範囲で支出を行うべき
  • 税は財源ではなく通貨を流通させる仕組みである
そこで、MMTは本当に正しいのか、そもそもこれらの主張はどんなものなのか、を今後追求したいと思います。
今回は1回目ということで、現在の日本の財政(借金)の状況把握に焦点を当てます。

■日本の借金1216兆円(2020年度末)
国債、借入金、政府短期証券を合わせた、いわゆる国の借金の2020年度末での合計額は、1216兆4634億円にも上ります。(参考:jiji.com [3]

日本借金推移 [4]

画像引用:jiji.com [3] より
つい10数年くらいまでは、800~900兆円であったのに、ここ10年で約1.5倍に膨らんでいます。特に2020年に始まったコロナ禍で2020年度は前年より約100兆円も増加しています。
年度ごとの政府の財政状況推移を見ても、(当たり前ですが)歳入が歳出を上回る現象が続いています。コロナ禍が始まった2020年の国債発行額が突出しています。
単年度収支 [5]
画像引用:財務省 [6] より
また、国の借金→財政破綻論でよく挙げられる切り口として、「債務残高の対GDP比」があります。
各国債務残高 [7]
画像引用:財務省 [8] より
上のグラフが示すように、日本の財政赤字は、対GDP比で260%を超え、2位のイタリア(150%)を大きく引き離しています。
しかも、先述のように、このコロナ禍で100兆円超えの国債発行、更には70兆円の補正予算積み上げと、ここ10年を見ただけでも、ものすごい量の国債発行、つまり通貨増発を行っています
コロナ禍初期の2020年5月時点のデータでは、日銀の国債保有量は500兆円に達しています。

日銀国際保有残高 [9]

画像引用:jiji.com [10] より
以上のように、状況は厳しく、1200兆円の日本の借金は到底返済できる金額ではありません。日本の財政破綻についてもバブル以降、メディアやネットでも何度か取り上げられてきましたが、(幸い)未だに財政破綻には至っていません。
当ブログのタイトルである「金貸しは国家に金を貸す」
文字通り、金貸しが国家に金を貸すことで利益が生まれる「中央銀行制度」を金貸しが構築したことで、この借金は増え続けてきたわけです。
○自国通貨を発行できる政府は財政赤字を拡大しても債務不履行になることはない
というMMTの主張は、この財政悪化の状況でも財政破綻しない、というものです。
果たしてこの主張(認識)は正しいのか、次回、より詳しくMMTを追求していきます。
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