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金価格高騰はなぜ?

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《画像:「芦屋銀馬車」 [2]より》
金価格の高騰が止まりません。ウクライナ危機を契機に、過去最高値となる1グラム8,000円に迫る勢いです。2020年のコロナ以降、金へ投資マネーが集中し価格が上昇していた状況下で、今回のロシアのウクライナ侵攻により、欧州をはじめとする経済危機への懸念から、(資産価値の変動幅が大きい株式よりも)金にさらに投資が集中しています。

 

金(ゴールド)取引市場は、世界の市場動向を見るうえでのモノサシになります。金価格の変動要素としてどんなものがあるのか見てみましょう。

(以下、るいネット [3] より)
◆金価格の変動要素
・国の金融緩和・財政投入△(→インフレ) ⇒ 金△
・エネルギー(原油)△(→インフレ)   ⇒ 金△
・株式△                 ⇒ 金▼
・長期金利△               ⇒ 金▼
・ドル高(円安)             ⇒ 金▼
《補足》
米国の実質長期金利金相場逆相関の関係があります。アメリカの景気が悪いときには、米ドルの信頼性が低下しドル安基調になることから、資金が金に集まります。結果金の価格が上昇します。(例えば、2008年のリーマンショック直後、長期金利は上昇し、ドル価格は下落、金価格は上昇しています)
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《図版は毎日新聞の記事 [5]より》

 

◆過去の金価格の動き

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《金価格の長期推移 田中貴金属工業 [7] より》

◎長期

・明治~昭和~戦後~高度成長~1980年まで一貫して金価格は上昇。
・1980年に急高値を付けた後、そこを境に2000年頃まで緩やかに下がり続ける。
・2000年代に入ると(2008年リーマンで一時下げるも)2011年まで急上昇。
・2011年を境に海外は急降下(国内は横ばい)。
・2015年に反転し、(国内外とも)2015年から急上昇。

◎近5年(※/グラム

・2016年4,396円 → 2017年4,576円 → 2018年 4,543円 → 2019年 4,918円 → 2020年6,122円
・2020年は前年比1.24倍に急上昇。
→2020年急上昇したのは「コロナショック」がもたらす経済対策の各国の大規模な財政投入や金融緩和に対する「インフレ」懸念。それに加えてエネルギー価格の急騰による高インフレが続くとの見通しが反映。

◆金価格の変動要素の経験則

◎ドル建て金価格は「米ドルと金は一般的に逆相関」(ドルが強いと相対的に金が弱くなる)
・1979年 ソ連のアフガニスタン侵攻:国際的政治不安で一時的に金価格高騰。
・1985年 プラザ合意:ドル高是正→ドル安で金価格が上昇。
・1989年 冷戦終結:国際緊張緩和とIT革命でアメリカ好景気→ドル高で金価格が下降。
・1999年 第一次ワシントン協定:金の下落防止→各国中央銀行による金売却量に制限。
・2001年 米同時多発テロ:ITバブル崩壊と米同時多発テロによる政治的緊張で金価格が上昇。
※しかし、日本の金価格は経験則に従ってない「ドル高・金高」になるのは?
→‘49~‘71年まで 360円固定レートの後、‘73年変動相場制を経て、‘85年プラザ合意によるドル安誘導→急激に円高。その後‘00年まで円高(ドル安)基調にもかかわらず金は緩やかに下がり続けた
ドル安は金を押し上げる要因だが、米ドル建て取引の金は、日本へ輸入するためにドル円為替が影響→他の輸入品と同様に、ドル安・円高→金価格▼の要因。

◆見通し

・現在、世界的な量的緩和政策により「低金利」の継続。→インフレ懸念→金上昇圧力。
・一方、アメリカの長期「金利」を上げる動き(日本の金利も追随)→金下降圧力。
→市場縮小→各国の紙幣バラマキ(財政投資)による「インフレ懸念」の上昇圧力、その原資の国債発行のための「金利」上昇による金下降圧力の綱引き
→金価格は‘80年まで上昇し続けたが、豊かさ実現し市場拡大が停止した以降は、ドル建て取引ゆえのアメリカの強さ(→ドル)次第で変動している面が大きい。

★ドル基軸通貨の維持⇒ドル高誘導される限り、金価格は下方圧力が働く。

★アメリカが経済崩壊すれば金価格は上昇する。

それまで金価格は、ロシア・中国を軸とした国際情勢、金貸しの投機戦略、エネルギー・食糧価格の変動など複合要素が絡むが、下げる要因はアメリカの「金利△」と「ドル高△」次第。
金価格の上昇も、青天井ではありません金価格が大幅に下がるとき、米金利が上昇、つまりドルも上がっていくはずですが・・・果たしてドル価格は本当に上がるのでしょうか。
現在、金利はむしろ上昇基調にあります

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《米国債10年利回り(5年推移) Investing.com [9] より》

 

つまり、逆相関関係であるはずの「米国の実質長期金利」「金相場」が上昇基調で相関し始めていますこれが過去の事象と異なる部分です。ウクライナ情勢も気になるところですが、その背後で世界経済が大きく動きつつあります。要経過観察です。
(以上)
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