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外貨準備凍結の行使はドル基軸通貨体制の終焉を加速する

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ロシア・ウクライナ情勢を受けて、欧米諸国を中心にロシアへの経済制裁が発動されている。

特に今回は、2014年のクリミア事変の際には見送られた“外貨準備の凍結”という措置が行われた。
この措置がロシア経済に与えた打撃は小さくない。一方で、この措置は一国への制裁という域を超え、現在の国際通貨システムの根幹を大きく揺るがす事態をもたらしている。

外貨準備凍結の行使は、「いざというときに米ドルは使い物にならない」という懸念を、ロシア以外の諸国に抱かせるのに十分であった。

世界で米ドル離れは着実に進んでいる。各国の外貨準備高において、ドルの占める割合は、1999年には71%であったが、2021年には59%まで低下している。

【参考】世界のドル離れ加速、揺らぐ基軸通貨…リーマンショック級の経済危機再来に警戒 [3]

最近では、中東における米国にとって最大の同盟国であるイスラエルが、外貨準備において米ドル(+ユーロ)の保有量を減らし、代わりに新たな4国の通貨(中国人民元、日本円、カナダドル、オーストラリアドル)を保有する動きを見せている。
あくまでも利害関係の合致によって成立していた同盟関係であり、その潮目が変われば容易く綻ぶことを示している。

【参考】イスラエル、中央銀行の外貨準備に初めて中国人民元を追加、米ドルの保有量を削減~すべてがNになる~ [4]

このまま米ドル離れが加速し、ロシアやBRICSのような資源を豊かに保有する国々が力をつけて連携を強めていけば、ドルを基軸通貨として重要視する必要はなくなる。

外貨準備凍結を行使すれば、米ドルへの不信が上昇することは当然米国も承知している。それでも、ロシアをはじめとする国々の勢力拡大をけん制するには、ロシアをデフォルト危機に追い込むしかなかったのだろう。制裁発動としながら、米国は外貨準備凍結というハイリスクカードを切らざるを得ない状況にまで追い詰められていると言える。

しかし、仮にロシア経済に大きな打撃を与えることができたとしても、世界各国の米ドルへの信頼が回復することはない

信認根拠のない基軸通貨と決別した後は、金や資源のような実物を裏付けとする基軸通貨制度(orバスケット通貨制度)へと移行が加速するのではないか。

by 小石丸

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