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【ドル基軸通貨の行方】~各国の通貨戦略:世界最大人口国となるインドの動き~

ロシアの金兌換転換。中国による、独自の単一通貨プロジェクト始動。など、ドル離れがもはや世界のトレンド。
ほかの国はどうか。特に注目をしたいのは、「インド」の動き。
数年後には世界第一の人口となる国の経済戦略が世界に与える影響は大きい。

基本的には常に『バランス』を意識した外交・経済戦略。”現在の”大国である中国・ロシアがどう動いたとしても、最終的には影響力の大きな地位にポジショニングを取れる戦略をとっている。

インドの動きの中でも要注目なのが、通貨戦略。
デザインルピー導入の動きが活発になりつつある中、人民元に匹敵する通貨となっていくのか。
もはやアメリカもアジア戦略に関してはインド頼みとなっている。

インドの動きから世界の動きを読み解いていきたい。まずはバランス外交の視点から。

〇インド デジタル ルピー発行
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>インド政府は2月1日に、インド準備銀行(中央銀行)が中銀デジタル通貨(CBDC)「デジタル・ルピー」を2023年度(2023年4月~2024年3月)中に導入する計画であることを突然明らかにした。

インドは以前より、中銀デジタル通貨の発行に意欲を見せていた。昨年7月にインド準備銀行のシャンカル副総裁は、「中銀デジタル通貨の段階的な導入を検討しており、根本的な技術や発行方法などさまざまな問題を調査中だ」と説明していた。ただし、「発行には慎重な調整と実施への微妙なアプローチが必要だ」とも述べていた。

〇インド 戦略的自立外交を支える3つの視点 リンク [2]
>インドは、1947年の独立以来、国際社会で積極的な役割を果たすことを目指してきた。冷戦期はソ連とソビエト・インド友好協力条約を結んだが、ソ連崩壊後ロシアとの二国間関係は防衛協力と限定的な経済関係に縮小しつつある。冷戦後、インドは複数の大国と緊密な連携を図りながら、「戦略的自律性」を追求した。

インドの脅威は、中国とパキスタンである。特にインドは台頭する中国からの安全保障上の脅威に直面している。そのため、インドは日米豪印戦略対話(Quad)に参加し、アメリカと複数の安全保障協定を締結した。また、インドは東南アジア諸国連合(ASEAN)と連携し、「アクト・イースト」政策を強力に推進してきた。

>インドのジャイシャンカル外務大臣はその著書『インド流:変動する世界への戦略(The India Way: Strategies for an Uncertain World)』で、インドの戦略を「アメリカを関与させ、中国を管理し、ヨーロッパを開拓し、ロシアを安心させ、日本を巻き込む」こととしている。これは「同盟を避ける」、「多極化した世界に内在する対立を利用する」、「その結果生じる矛盾を受け入れる」という3つの原則によって形成されている。

>同盟の形成:バランシング・バンドワゴニング・ヘッジング
このような状況を踏まえ、インドが長期的にどのような戦略を取るかを国際政治学の理論を用いて分析する。国家が同盟を形成する際の行動形式として、バランシング、バンドワゴニング、ヘッジングの3つがある。

>バランシングとは、国家が、自国の脅威となる大国に対して、他国と同盟を結び対抗することである。バランシングは、台頭しつつある大国が地理的に近くに存在し、その大国が攻撃的な能力を強化している際に選択されることが多い。

>一方、バンドワゴニングとは、力を急速に拡大している大国に便乗し、協力する見返りに利益を得ることである。これは、利益の見返りに、大国に対して従属的な立場を受け入れることも意味する。

>バランシングとバンドワゴニングの間には、ヘッジングがある。ヘッジングとは、国家が、他国との関係についての不確実性及びリスクが高い状況において、互いに反作用する複数の政策を追求することで、リスクを相殺しようとするものである。ヘッジングは、競争関係にある国に対して、将来誰と組むかを曖昧にすることで抑止の効果がある。

>今後ロシアが中国と距離を縮めるのであれば、インドはロシアとの距離を置き、アメリカとの関係を強化し、より①バランシングを意識するだろう。もしロシアと中国が一定の距離を取るのであれば、インドは引き続きアメリカ・ロシア・中国の中で③ヘッジングを続けるだろう。

ハドソン研究所研究員の長尾賢氏は「インドが正式にアメリカの同盟国にならなくても、中国がインドはアメリカ側だと思い込めば、中国はその軍事予算をインド対策に割き、アメリカへの対抗に使う軍事予算を減らすことができる」と指摘し、公式な同盟関係なしに、両国の抑止力を高めることができるとしている。
=引用終わり=

By mochi

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