その1では、穀物価格が2007年から高騰している実態をみました。
リンク [1]
その2では、穀物相場を動かしている商品取引所を扱いました。
リンク [2]
今回は、食品の価格について考えてみます。
物価の優等生という言葉があります。
かつて消費者物価が5%〜7%上がっていた時代に、殆ど値上がりしなかった食品が卵です。
その為、卵を指して物価の優等生という称号が与えられました。
古来、日本人は卵のパワーを信じ生卵で精をつける」「二日酔いに玉子酒」、弁当には玉子焼きと味付け海苔が欠かせないものでした。今ではマヨネーズを初めとしてスイーツの主材料生クリームにも欠かせない食材ですね。
今現在、卵は、スーパーで10個入りパックが 200円前後で販売されています。
昭和25年から平成15年までの「卵の消費者価格」と「米生産者価格」の推移をみます。
●卵とお米の価格推移
米60kgは1俵のことで、米生産者価格は55年の間に5倍となっています。
一方、卵の消費者価格は、同じ55年間で、10数%しか上がっていません。
※ただし、オイルショックの昭和50年・55年時点では、35円/100gまで上がりましたが、それでも1.6倍です。
そうした物価の優等生である卵にも、値上がりの時が近づいています。
続きを読む前に、応援クリックを!
ブランド卵値上げ、「物価の優等生」穀物高に屈す(読売新聞2008年6月25日) [3]
鶏卵最大手のJA全農たまご(東京都新宿区)は25日、8月1日からブランド卵を1個当たり約3円値上げする方針を発表した。
今後、スーパーなど小売店と本格的な交渉に入るが、すべて価格転嫁されれば店頭価格は10〜13%程度値上げされる。ほかの鶏卵大手も同程度の値上げ交渉に入っている。ブランド卵は小売店向け出荷量の5割程度を占めており、値上げが店頭価格に浸透すれば、家計には痛手となりそうだ。(幸内康)
全農たまごは、「しんたまご」をはじめとするブランド卵全品の出荷価格を値上げする。すべて転嫁された場合、「しんたまご」1パックの店頭価格は、現在の300円前後が330円前後になる。
イセ食品(東京都台東区)も「森のたまご」に代表されるブランド卵全品を1個3円前後、アキタ(広島県福山市)も「めざましたまご」などで3〜4円程度の値上げ交渉を進めている。
農林水産省によると、<卵価格が安定していたのは>鶏卵農家の規模拡大や、鶏の品種改良で生産性が上がってきたことや、飼料の主原料であるトウモロコシ価格が比較的安定してきたことが背景にある。
しかし、配合飼料の価格は過去2年で4割以上も値上がりした。配合飼料のうち5〜6割を占める輸入トウモロコシの価格や、海上運賃の高騰が原因だ。飼料費は経費の6割を占めるといい、全農たまごは「企業努力で解消できる範囲を超えている」と訴えている。
そこで、物価の優等生である卵の生産状況について、もう一段掘り下げてみます。
●卵の生産・流通工程
昭和30年代にケージ飼育が開発され、安い輸入穀物、多産の品種、成長ホルモンの使用などを経て養鶏農家の大規模化、機械化が進み、今や養鶏農家は大規模採卵工場の様相を呈しています。
『2003年の全国養鶏経営数は4530戸、成鶏雌1億3730万羽が飼育されています。そのうち、5万羽以上を飼育する大規模農家が690戸(全体の15.2%)で、成鶏メス全体の69%を飼育しています。』
しかし、輸入穀物の高騰や輸送燃料の高騰を迎え、市場が飽和状態の中で、価格の値上げは難しく生産者の苦悩が再び始まりました。
参考:品目でみた穀物輸入額と輸入単価の値上がり
品 目 | 輸入額 (2007年) |
単価(千円/トン) 2003年 |
2007年 |
2008年3月 |
とうもろこし | 4,517億円 | 16.3 | 27.2 | 32.4 |
大 豆 | 1,955億円 | 34.0 | 47.0 | 64.4 |
小 麦 | 1,922億円 | 24.1 | 36.4 | 61.0 |
日本は食糧を輸入するお金が十分あるが! [4]
養鶏農家にエールを送りたくなります。この気持ちを代弁してくれる仲間が居ます。
どうしちゃったの この日本? [5]さんの意見を代表してご紹介させて頂きます。
やっと、一部の「第一次産業」が報われた?
いや「飼料」と「運賃」の値上が一番の原因でしかない。
鶏卵業はもう数十年間、利益がほとんど取れる事無く世の中に奉仕して来た。
値上げは辛いが「高くなった餌代」を負担してあげようではないか。
やさしい気持で鶏卵業を見守ってあげようではないか!
消費者の財布を苦しめる。それが、世の中で嫌われる「値上げ」。
最近はガソリンが上がり、それに付随する商品が上がって行った。
しかし、今回の「卵値上げ」は様相が違う。
世の中の給料と卵の値段の上昇比率を考えれば少しは理解するしかないと思う。
だから「いち消費者」として、卵の値上がりは仕方無いと考える。
今回の値上げの裏側を考えれば、仕方が無いものも見える。
例え値上げしても「飼料代」と「運賃」で消えるのが実情。
だから決して卵の売価が上がっても「鶏卵業の儲け」が増える訳ではない。
紹介した読売新聞Iの記事の中の「生産者の努力の域を超えている」、この言葉は重く受け止める必要がありそうです。
生産者の努力で保ってきた、物価の優等生卵が、実態経済と遊離した投機の影響を受けて危機を迎えています。
現在の食品値上がりは、戦後の食べ物の基本構造が土台から崩れ出したという事です。
生産者は、勇気をもって値上げに動き出しても良いと思います。
読者のみんなはどう思いますか?
卵に関心をもった人は、以下のサイトで勉強しましょう 😀
第30回 鶏卵は「物価の優等生」?
リンク [6]
懐かしデータで見る昭和ライフ [7]から
卵は物価の優等生【養鶏の現状と技術】
リンク [8]
畜産ZOO館・鶏 [9]から