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『ウォールストリート;恐怖の8日間』より(6)今後は円>ユーロ>ドル

前投稿 [1]からの続きです。

▼今、ユーロが下げ、米ドルがユーロに対し維持し、円が上がっている理由
【ユーロの、対ドルでの下げの原因】
今は米ドルに対し、1ユーロは$1.36に下げています。
ユーロに対しては、ドルが上がった。
この原因は、米国の金融機関が、欧州にもつユーロの株や証券を売ってユーロを得て、そのユーロをドルに交換(ユーロ売り=ドル買い)して、自国での資金繰りに充てているからです。
欧州の株価の下落は、米国と欧州の金融機関及びファンドの、ユーロ株売りによります。
(注)米国の金融機関とファンドは、前述のように、対外債権を$16.5兆持っています。これを、売っている。
【米ドルの、対円での下げの原因】
他方、米ドルは、日本円に対しては$1=100円付近に下げています。(08.10.08)
この原因は、米系ファンドがもつ日本株の売りの金額(円売り=ドル買い)より、日本の金融機関によるドル債やドル株の売り(ドル売り=円買い)の金額が大きいからです。
ドル債を売ってドル札に換え、そのドルを円に交換(ドル売り=円買い)し、自国に持ち帰っているからです。今、日本に資金が回帰しています。
●今通貨でもっとも強いのが円、次がユーロ、もっとも弱いのが米ドルです。
【短期では】
短期では、米国の金融機関とファンドの、資金繰りのためのポジション解消売りで、米ドルへの回帰(ドル買い)が上回って、ドルが上げるように見えるときがあるかもしれません。
【重要】
しかし前述のように、米国は、今後1年で228兆円が不足します。したがって、3か月、6か月スパンで見た時の、いずれの、世界の通貨に対するドル安は、避けられない。
米国のドルの信用が下落しているのです。
(中略)
■8.重要な事実
▼ドル下落に向かう米国債を、どこが買うか?
米国は2009年、2010年にかけて、228兆円もの国債の増発が必要だということを示しました。
●米国債は、今でも、その94%を、海外が買っています。米国内では、増発される国債を消化できない。根底の理由は、毎年の、国民の増加預金(残高は700兆円)がないからです。
【重要】228兆円ものドル建て証券を、どこの国が、買えるかです。買えなければ、中央銀行のFRBが買うしかない。日本、アラブ、中国を、懸命に合わせても100兆円分が限界でしょう。欧州は買う力がない。
そうすると、2000兆円の対外債務の米ドル証券が、激しく売られ、米ドルが崩落し、米国債の金利が、市場の圧力で高騰します。

▼米国世帯の消費は、100兆円が過剰だった
米国世帯の資産とは、株であり、住宅の値上がり(1年で100兆円〜200兆円の含み利益)でした。
これがなくなると、米国の世帯は、1年で、100兆円くらいの個人消費を減らさねばならない。米国の個人消費は、約800兆円(GDPの70%)です。
100兆円は、12.5%の個人消費の減ですから、大きい。1世帯当たりで1年100万円分の消費減です。米国の消費者ローンは、大きく減っています。
2009年の米国GDPは、相当なマイナス(−3%から5%)になります。これは、米国の自動車会社3社を破産させ、中国・日本の輸出工場も直撃します。米国での、日本企業の生産も、減ります。
米国の貿易赤字を売上としてきた貿易黒字国の過剰生産力(約100兆円分の生産力)は、今後数年の、デフレ圧力(商品物価の下落圧力)になります。
過去、5%の高い実質経済成長だった世界は、2009年、2010年と、GDPのマイナスを、経験するでしょう。

(引用以上)

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