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『ウォールストリート;恐怖の8日間』より(3)CDS損失は最低で320兆

前投稿 [1]からの続きです。

■2.ヘッジファンドには解約が殺到している
以上の4要素に加え、株・住宅証券・社債などに投資する側では、元本200兆円のヘッジファンドに、今、解約が殺到しています。
世界のヘッジファンド(と言っても米英が中心)は、2007年12月対比で、元本に対し16.1%の、表面化した損を抱えています。含み損は、不明です。(08.10.11 Financial Timesの巻末統計)
ヘッジファンドは今後、損の拡大を恐れる投資家からの解約によって、預かり元本が、半分の100兆円に縮小すると見られています。
(注)ヘッジファンドには、商業銀行と投資銀行が、資金を貸しています。
ヘッジファンドに、10倍のレバレッジ(元本に対しての、信用借りの倍率)があるとして、元本100兆円の消滅は1000兆円の、運用資金の引き揚げ(=清算)を意味します。
つまり、株・社債・住宅証券、原油・資源・穀物のコモディティ、及びデリバティブの、投機的な売買をしていたヘッジファンドの運用資金量が、今後、1000兆円くらいも減るということです。
(注)わが国の株式市場(時価総額が270兆円に下落)では、その60%の売買は、ガイジンファンドによるものです。ガイジンファンドの、資金繰りに窮した結果の売りが主因で、国内の買い手はなく、日経平均が8000円付近に下落した(08.10.10:終値8276円)と言っていい。
今日火曜日は、若干上げるでしょうが・・・
■3.14か月の経緯
▼住宅価格の下落幅の拡大
14か月前の2007年8月9日には、米国のサブプライムローン(残高120兆円)の、デフォルト率の(未回収率20%)の上昇が問題とされました。
米国FRBの議長バーナンキが見つもった住宅ローンの損害は、15兆円くらいにすぎなかった。当時、米国住宅の価格調整は、15%程度で終わるとされていたのです。08年3月には、米国の金融危機は終わったとの説が、政府筋から流された。エコノミトはそれに乗ったのです。
【密約】
投資銀行の5位、ベアスターンズが倒産した2008年3月に、米政府の呼びかけで、米欧日の間に、ECB(欧州中銀)と日銀がドルを買い支え、米国に資金供給するという「密約」が買わされていたことが、08年8月に明らかになっています。
今、米国の住宅価格の下落では、2006年のピークから−40%が想定されつつあります。(公式見解は、当然に、ありません) 
米国の不動産では、3000兆円×40%=1200兆円の、価値下落が生じるでしょう。住宅価格は、今から20%は下げます。
(注)世界で最も高かった日本の、90年代の不動産価格の下落は、1000兆円くらいでした。
これに、欧州の住宅価格下落(20%〜30%・・・)が加わることは、前述した通りです。
▼世界の株価の下落
2007年10月時点では、世界の株価(時価総額)はまだ高く、$63兆(6300兆円)くらいを維持していました。
その後12か月で、時価総額は3300兆円(08.10.10)に低下し、08年12月に向かう価格は、見当がついていません。
世界の株価は、ファンドの、ポジション解消売りがどこまで続くかにかかっています。
▼CDSの総損害
CDSの損害は、不明です。元本6200兆円の(低く見て)5%が、清算による最終損とすれば、それだけでも、310兆円の資金が必要です。
(注)今後、金融危機が落ち着くまでの間、CDSの新規組成と契約は、消えるでしょう。
株価下落による損の、3000兆円を抜きにしても、
・住宅価格の下落による損が、600兆円相当、
・CDSの解消による損が、310兆円相当、
 合計で、910兆円が必要になる可能性があります。

(注)株価が下落した分は、金融機関・企業・個人の投資及び年金基金の損害になります。
以上の、本稿の損害見積もりの910兆円(2009年末まで)は、IMFの、現時点での損害見積もりの約6倍です。

(続く) [2]

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