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シリーズ「どうする?市場の独占支配」9

【第9回:アメリカの象徴「ビッグ3」の崩壊】
 
 
アメリカの実体経済と華やかで派手なアメリカンライフを象徴する自動車産業がいよいよエンスト。これは今のアメリカ国家を文字通りに象徴しており、各国(特に実体経済で先行する日本)にブイブイと圧力をかけ続け、自らの実体経済を疎かにしてメーターも見ずに幻想金融経済で突っ走ってきたアメリカがガス欠で終わりというC級映画並みのお粗末なエンディング。それでも動かそうと水で数倍に薄めたハイオクを入れまくって、「まだいける!」とのたまう今日この頃で、さすがのアメリカ国民も「もう動かん車に無駄な油を使うな!」と申しておりまして、車から人を放り出しても走り続けようという悪あがきが見苦しいです。まぁ〜、アメリカの象徴ですから、そこが終わるとアメリカ全体が痛いわけです。(前回は、こちら [1]
 
 
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         フォードのalan mulally とGMのwagoner
 
 
しかし、自動車産業というのは裾野が結構広いんですね。ビッグ3がダメになると関連会社も道連れで、トヨタ、ホンダもアメリカで部品が手に入らなくなるし、アメリカ経済大打撃で消費もできない混乱に陥るということで、トヨタも「ビッグ3を潰さないで・・・」と御願いしているとか。大きな目でみると日独車独占の良い機会なのですが、どうせ復活の目は無いのですから、「静かに去って下さい。」という意味ならば正解かもしれません。どこも買収意欲も沸かないほど、アメリカの実体経済には信用はありません=終わりです。
 
ここ数日の動きをまとめますと・・・・
 


◆2008年12月20日『米政府が自動車救済発表、TARPから174億ドル融資』
ブッシュ米大統領は19日、自動車大手のゼネラル・モーターズとクライスラーに対して174億ドルの融資を行うと表明した。さらに支援と引き換えに両社が2009年3月末までに存続可能であることを示すよう求めた。
 
◆2008年12月20日『米自動車救済策でGMのCDSに保証支払い発生も』
米政府による174億ドルの自動車大手救済策発表を受け、アナリストの間でゼネラル・モーターズの債務を保証するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の支払いが実施される可能性があるとの見方が出ている。
 
◆2008年12月20日『米GMを「C」に格下げ、依然破たんの恐れ』
米格付け会社フィッチ・レーティングスは19日、ゼネラル・モーターズの格付けを「C」に2ノッチ引き下げた。米政府が自動車メーカー融資計画を発表したものの、依然破たんの恐れがあるとしている。
 
◆2008年12月20日『米GM・クライスラー、融資に関する合意文書に署名』
米ゼネラル・モーターズとクライスラーは、政府による最大174億ドルの融資に関する合意文書に署名した。ホワイトハウスのフラット報道官が19日、ロイターに対して明らかにした。
 
◆2008年12月20日『景気対策も活用へ=ビッグ3支援で−次期米大統領』
オバマ次期米大統領は19日、シカゴで記者会見し、ブッシュ大統領が発表したゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーへのつなぎ融資に関連して、検討中の景気対策の一部を自動車業界のために使う考えを明らかにした。
また、ホワイトハウスは同日、ビッグスリーが1社でも突然破綻すれば、実質GDPは1%以上低下し、部品メーカーや販売店を含め110万人以上が失業するとの試算を公表。政府支援の必要性を改めて強調した。

 
◆2008年12月20日『ビッグ3「最悪」回避も保護主義台頭に懸念』
「世界中の自動車メーカーにとってビッグスリー(米自動車3大メーカー)の破綻(はたん)は良いことではない」
ホンダの福井威夫(たけお)社長は以前から、経営危機に陥ったゼネラル・モーターズ(GM)など3社についてこう述べていた。日本メーカーが恐れていたのは現地の部品メーカーや販売会社の連鎖倒産だ。ビッグスリーと日本メーカーが、同じ部品メーカーや販売会社に依存するケースは極めて多い。特に「米国依存度の高いトヨタやホンダのダメージが大きい」(業界筋)とされる。
むしろ、日本メーカーが危惧(きぐ)するのは1990年代に起こったような貿易摩擦や「日本たたき」のように米国で再び保護主義が台頭することだ。一時的とはいえ、米政府が瀬戸際のビッグスリーを支援したことで、今後も追加的な救済策が浮上してくるだろう。年明けにはオバマ民主党政権が誕生し、その流れは加速しそうだ。日本メーカーからは「米政府が外国車の緊急輸入制限など強攻策に打って出る可能性もある」(大手幹部)との見方も出始めている。

 
◆2008年12月20日『トヨタ、上場来初の減配へ 円高、販売源で連結赤字も』
トヨタ自動車が平成21年3月期の年間配当を前期実績(140円)から減配する方向で調整していることが20日、分かった。急激な円高や世界的な販売不振による業績悪化を受けた。減配に踏み切れば東京証券取引所などに上場した昭和24年以来初めてとなる。
 
◆ 2008年12月21日『カナダ、米自動車業界救済で40億カナダドルを緊急融資』
カナダのハーパー首相とオンタリオ州のマクギンティ首相は20日、米国政府が自動車大手のゼネラル・モーターズとクライスラーに対して174億ドル(約1兆5500億円)ドルのつなぎ融資を行うと発表したことを受け、同2社のカナダ現地法人に対し40億カナダドル(約2930億円)の緊急融資を実施すると発表した。
オンタリオ州の諮問委員会は先に、米自動車大手3社が破たんすれば、今後5年間にカナダで約60万人が失業することになり、その大半が同州に集中するとの報告書を発表していた。

 
◆2008年12月23日『GMの株主価値、大半が失われる可能性』
米政府が自動車メーカーへの融資を決定したことについてクレディ・スイスのアナリストは、ゼネラル・モーターズの株主資本の大半もしくはすべて失われる可能性があるとの見方を示した。
同氏は顧客向けノートで「労組や(GMの)社債保有者が多大な犠牲を払うことにより、GMの既存の株主資本も完全にあるいはほとんど無価値になることが不可避だと今後2カ月間でより明らかになるだろう」と述べた。

 
◆2008年12月23日『米クライスラーを「CC」に格下げ、見通しは「ネガティブ」』
今回の格下げは、クライスラーが米政府から40億ドルの緊急融資を受けることに関連して、担保を保有する貸し手に譲歩を求める見通しを19日に示したことを受けた措置。クライスラーが債務の株式などへの交換を完了した場合、信用格付けを「SD(選択的デフォルト)」に引き下げる方針だ。
 
◆2008年12月23日『米フォードを「Caa3」に格下げ、見通し「ネガティブ」』
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、米自動車大手フォード・モーターのコーポレート・ファミリーおよびデフォルト格付けを「Caa1」から「Caa3」に、流動性格付けを「SGL—3」から「SGL—4」に引き下げた。見通しは「ネガティブ」。
 
 
再建策を条件につなぎ融資で3月まで延期・・・・と、思っていたら、このニュース。
 
 
◆2008年12月25日『米GM:金融会社、資本注入可能に 銀行持ち株会社化、FRB承認』
米連邦準備制度理事会(FRB)は24日、米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)の金融関連会社GMACの銀行持ち株会社移行を承認すると発表した。これにより、GMACは公的資金による資本注入の対象となるほか、公定歩合金利でFRBから融資を受けられるようになる。金融危機に伴う信用収縮の深刻化で縮小していた自動車ローンの拡大につながるとみられる。
 
 GMACの株式は現在、米自動車3位クライスラーを保有する投資会社サーベラス・キャピタルが51%、残り49%をGMが保有している。FRBは、GMACの大株主であるGMとサーベラスの出資比率引き下げも求めており、銀行持ち株会社への移行で、GMの持ち株比率は10%未満となり、サーベラスも33%に減少する。
 
 
これを受けて、ぐっちーさんは [2]
 

朝から実にとんでもないニュースが飛びこんできた。前にもこれは理論的には救済可能だが、完全にルール違反だ、と書いてきたこれ・・・GMACの銀行化を容認してFRBの傘下に入れ銀行と同じ扱いにしてしまうこと・・・が実現してしまうようだ。
 
ラグビーボールを前に投げてアメリカンフットボールを作った国だ、ということをすっかり忘れていたようだ。ついにラグビーボールを前に投げてしまったと言える。
 
現実的にはFRBがいくら銀行として管理するとはいえ、これでGMの救済にあたって相当の障害が無くなったと言える。今後は金融機関GMACの関連会社としてのGM,つまり政府に保護されたGMACがいくらでも資金が調達できるのでGM自体の資金繰りは心配が無いことになる。(前提条件はいくつかありますがね)

アメリカ政府もFRBも、国民の声など無視して何でもやる構えですね。ある意味、強気です・・・・
オバマ就任までは、できるだけの無茶をやっておこうということでしょうか・・・?
 
 
 
by コスモス

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