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新テーマ:ドルに代わる通貨システムは?〜プロローグ〜

%24.GIFドル安が続いている。ドルは、今年3月以降、主要7通貨に対して14%下落し、対円では80円台に入った。もはや、ブレトンウッズ以来のドル基軸通貨体制の終焉は誰の目にも明らかである。各国の国家要人や国際機関、研究者から、ドルに代わる国際決済通貨の必要性が表明されるようになった。しかし、基軸通貨の地位がポンドからドルに移った100年前のように、今ドルに代替する力を持つ通貨があるかというと、まだ無い。そのため、次なる国際通貨システムの青写真は描く人によって様々、まさに百家争鳴の様相を呈し始めている。
そこで、本ブログでは、『ドルに代わる通貨システムは?』シリーズと題して、これから週1回、8〜9回程度のエントリーの中で、新しい国際通貨・地域通貨創設を巡る現在の状況を押さえ、その行方を考えていきたい。
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今年に入り、ドル基軸体制の終焉を告げる発言が続々と増えた。特にここ2ヶ月は立て続けだ。

中国人民銀行の周小川総裁が世界準備通貨の創設を提案 [1](3/23)
中国人民銀行の周小川総裁は23日、国際金融システムの制度改革を進める上で、IMF(国際通貨基金)に対し「スーパーソブリン(超国家=国際)準備通貨」の創設を求めた。IMFの特別引き出し権(SDR)の活用範囲を広げて準備通貨とする案で、SDRの構成通貨とその組み入れ比率の見直しを提案している。

国連国際開発会議(UNCTAD)が国際通貨の創設を呼びかけ [2](9/7)
国連加盟国は国際準備銀行の設立と、それによる通貨発行および、為替変動の監視を認めるべきだ、とUNCTADは述べた。ドルの国際取引における役割は、新興市場を「信用詐欺」から守るだけにとどめるべき、とも述べた。

国連、「新たな基軸通貨が必要」/金融改革委が報告書 [3](9/21)
報告書は、ドル基軸からの脱却で、米国の経済や政治に関する問題に影響されるようなことがなくなり、世界の金融システムの安定性が増すと指摘。偏りのない世界経済の成長を促すため、基軸通貨の見直しが不可欠との立場を強調した。

世銀ゼーリック総裁がドル体制の終焉に言及 [4](9/28)
G20のメンバーでもある世界銀行のゼーリック総裁が演説の中で「(現状のドル本位制)以外の選択肢が登場しているので、基軸通貨としてのドルの地位は危うくなっている。米国は、ドルの地位が盤石だと思わない方がいい」と警告した。
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歴史から読み解く現在、ハーバード大教授ファーガソン氏 [5](10/3日経新聞)
「金融政策としての量的緩和は有効だが、米連邦準備理事会(FRB)による米国債の大量購入は長期金利の上昇を招きかねない。住宅ローン金利も上がり、FRBの意図とは反対の影響が出る。ドルは準備通貨としての価値を失うのではないか」

アラブ諸国が原油のドル支払を停止? [6](10/6)
英インディペンデント紙に、アラブ諸国が原油の支払いに米ドルを使うのを止めようとの提案を、ロシア、日本、中国、フランスにしているとの記事が出ている。支払いは米ドルの代わりに、日本円や中国元、ユーロ、金等を含む通貨バスケットに移行しようとするもの。すでに各国の中銀総裁・財務相と「シークレット・ミーティング」を持ったと報じている。

米国に代わり世界覇権を目論む中国はともかく、9月の世銀総裁の発言は大きい。ゼーリック総裁は、かつては共和党政権でUSTR(米通商代表部)代表も務め、米国の国益拡大に心血を注いできた人物だからだ。さらに彼は、CFR(外交問題評議会)及びTC(三極委員会)のメンバーであり、ゴールドマン・サックスとも関わりが深い。IMF、国連、世界銀行といったいわゆる国際機関と背後の支配勢力は、完全にポスト・ドル体制の準備に入ったとみて良いだろう。
他にも、中東、米州、東アジア、アフリカなどで、ユーロのような国家をまたがった地域共通通貨の創設が以前から議論されており、ポスト・ドル体制を構成する要素として改めて注目される。とりわけ影響が大きいと思われるのは、原油のドル建て決済と通貨のドルペッグを続けてきた中東産油国の共通通貨構想だ。こちらにも動きがあるようだ。
ドルに代わる国際決済通貨として昨年から頻繁に取り沙汰されるようになったものの一つに、IMF(国際通貨基金)のSDR(Special Drowing Rights:特別引出権)という通貨単位がある。SDRは単一通貨ではなく、各国通貨の価値を加重平均した「バスケット通貨」と呼ばれる。SDR以外にも、構想中の地域共通通貨や新国際通貨でもバスケット方式を取り入れたものが多い。
そこで、このシリーズでは、バスケット通貨とは何か?の追求を皮切りに、現在、新しい国際決済通貨・地域共通通貨の主要な候補とされるものの現状を押さえ、その狙い、実現可能性、影響と問題点を追求・整理してみたい。
さらに、本ブログでも扱われたゲゼル・マネー [7]のように、過去、“お金の呪縛”=金貸し支配から逃れようと提案された通貨システムがある。これらも参照し、来るべき市場縮小・共認原理の時代の通貨システムの切り口・ヒントが見つけられればと思う。
(追求予定テーマ)
1.『バスケット通貨』とはなにか?
2.SDRとはなにか?
3.湾岸共通通貨ができるとどうなる?
4.アジア共通通貨は成立するか?
5.基軸通貨体制の問題とはなんだった?
6.脱支配構造をめざした通貨構想
7.市場縮小・脱金貸し社会の通貨の条件は?

乞うご期待!!

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