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「国家と市場の力関係の逆転」8 まとめ〜逆転は「騙し」で実現した〜

国家と市場の力関係の逆転は、「騙し」を拡大することで実現しました。
まとめ図解:画像をクリックしてご覧ください。
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現在の市場も、この「騙し」の延長線上にあります。
では、この「騙し」は、どうのように成立し、国家と市場の力関係は逆転したのか?
「国家と市場の力関係の逆転」シリーズをもとにまとめます。
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国家と市場の力関係の逆転は、中世〜近世に掛けてヨーロッパから始まります。
その後、金貸しにより中央銀行を中心とする国家の間接支配が全世界に広がっていきます。
では、なぜヨーロッパから始まったのでしょうか?
そこには、ヨーロッパ社会の特殊事情があります。
■ヨーロッパの持続的拡大とその特殊性 参照:るいネット [2]
ヨーロッパは、古代市場では実現しなかった持続的成長を、中世〜近世に成し遂げます。

その背景には、国家を超えた普遍宗教としてのキリスト教が教団としてのネットワークを形成していたことが大きい。もともとキリスト教自体に騙し的要素が内在されているが、この国家権力を超えた教会権力をうまく利用して(騙して)、教会ネットワークを金貸しネットワークへと変換させたことが、欧州商品市場が国家の枠組みを超えて特殊な長期にわたる繁栄を実現させた原動力である。しかも欧州はイスラムの富を略奪しただけではなく、欧州内での騙しあい、奪い合いも激化させ、欧州全域に「騙せば官軍」というムードが確立していき、多くの貴族や騎士に商人的(投機的)体質が形成されていった。

■もともとキリスト教自体に騙し的要素が内在しているとは? 参照:4 [3]
●キリスト教の騙し構造:罪の捏造と美化戦略

パウロが取った布教戦略は、人々の罪を強調し、それに対するあがないとしての贖罪行為・美化行為「愛」の捏造だった。
私権時代だれでも多少悪いことをしたり、その思いを秘めていたりと言う罪悪感はあるだろう。そんな意識を逆手にとった戦略だ。」
「人間は生まれながらにして罪を背負っていると烙印を押され、その上でイエス(代理人としての教会)が救済するという立場を構築したのだ。これを壮大な騙しと言わずしてなんと言おうか?

●ローマ守護神の真似をして信者を増やす

一定信者が増えてくると、今度はマス戦略を図り、当時ローマで信仰深かったミトラ教の要素を取り入れていく。
キリスト教のお話の多くは信者獲得のために都合の良い説話を寄せ集めたものなのではないだろうか?

●支配者への擦り寄り

キリスト教は元来ローマに対する反政府・反権力活動を強く含んでいた。
布教戦略を立案した使徒達は、それでは支配者対策として都合が悪いため、イエスの死を当時ローマと対立していたユダヤに押し付け、キリストを裏切ったユダヤ人という話をでっち上げ、ローマ支配層に擦り寄っていったのだ。

■騙し的要素が内在しているキリスト教が、ヨーロッパに根付いたのは何故か?参照:4 [3]

キリスト教の強さは西洋社会で曲がりなりにも共認集団を形成したことで、武力国家が崩壊しても組織は存続し、社会の信任を得ていくことになる。本源集団を失った西洋で共認集団を形成したことが、ヨーロッパに広く深くキリスト教が根付いた理由。

■どうように教会ネットワークを金貸しネットワークへと変換したのか?
金貸しは、キリスト教ネットワークの形成とその利用で拡大してきた。
●キリスト教のローマ帝国・国教化:参照1 [4]

キリスト教国教化は、フェニキア商人と有力貴族の結託により実現したと考えられます。その後、キリスト教とフェニキア商人は、帝国・国家の分裂・統合の上位に、495年に始まるローマ教皇を頂点として広域なネットワークを形成し力を拡大していきます。

●教皇権の確立を後押しし、欧州にキリスト教ネットワークを形成(叙任権闘争)参照:2 [5]

聖職者任命の叙任権を王から奪取することでローマ教皇は、それまでバラバラだった各地の教会を、ローマ教皇を頂点とする統一組織に再編成することが可能になり、王権から独立してヨーロッパ全体にネットワークを張り巡らした。

●キリスト教を利用した掠奪:十字軍遠征〜騙せば官軍の意識が拡大 参照:3 [6]

十字軍遠征:イェルサレム奪還のためのキリスト教徒による「正義の戦い」。
これは、教皇・皇帝・諸侯・騎士団、商人・金貸しによる政治的野心の正当化、領地拡大、商圏拡大のための方便「大義名分」でしかありません。まさに騙しで始まったのです。
十字軍遠征とは?何だったのか?
・ヨーロッパ全体に「騙せば官軍」の意識が広がった。
・諸侯・騎士団を、商人(投機)貴族化していった。
・200年に及ぶ掠奪による持続的市場拡大により、富が蓄積された。

●キリスト教のお布施管理として銀行ネットワークを形成 参照:7 [7]

中世ヨーロッパで国家を超えた権威を持ち、国家を超えたネットワークを形成していたキリスト教教会。そのお布施は、最終的には教皇のお膝元のローマに集められた。そこに目をつけたのがメディチ家などの銀行家だった。

教会ネットワークに乗っかる形で、メディチ家などの銀行家は国家を超えて市場ネットワークを形成していきます。同時に北イタリアで資本家が支配する小国家群が勃興していくが、その後彼らは交易の舞台が地中海から大西洋に移るにつれ、そのネットワークを利用してオランダ次いでイギリスへと移動していく。

●キリスト教資金の運用 参照:7 [7]

フィレンチェに設立されたメディチ家の銀行のなかでも、教皇のお膝元にあるローマ支店の役割は重要だった。メディチ家は財務代理人として、さらに戦費を調達する銀行として、きわめて重要な取引関係をローマ教会と築いていた。メディチ銀行の大半の利益はローマから上がっていたといわれています。

■キリスト教から近代思想・大衆支配へ向かう金貸し
●ルネッサンスによる自我・私権意識の大衆への拡大 参照:5 [8] 
十字軍で得た富をもとに、金貸しは、キリスト教ネットワークから近代思想へと騙し戦略を転換します。
ルネッサンスとは、大衆支配という国家と市場の力関係を逆転させる手がかりを掴んだ時代ではないでしょうか。

ルネッサンス時代、人間主義(ヒューマニズム)という名の下で自我・私権・恋愛・自由の追求が是とされたことである。古代において、私権闘争は序列原理=身分制度によって箍がはめられており、暴走できないようになっていたが、ヒューマニズムは、自由、恋愛など自我・私権の追求を正当化し、序列原理を解体していく。

そして、無制限な自我・私権の追求を是とする人々の意識潮流が形成されていったことで、国家権力も、市場主義を是とするしかなくなっていった。その結果、市場権力(金貸し)は国家権力の枠を超えて無限に拡大

この大衆の(幻想)共認をもって初めて、「市場権力(金貸し)」が「国家権力」を逆転する手掛かりを掴んだわけです。そして、ここから近代思想が生まれ、現在の近代市場・近代社会に繋がって行くのです。

この頃、掠奪の大航海時代が始まり、スペイン・ポルトガルが力をつけて行きます。
●金貸しが支配する国家の成立:〜オランダ・イギリスが金融システムを整備〜参照:7 [7]

スペイン・ポルトガルから追い出されたユダヤ人が向かったのが、オランダ、次いでイギリスです。その地は、古くから教会と結託してネットワークを形成していた金貸し(教皇派・ゲルフ派)たちの大きな拠点でもありました。彼らは、金融技術と独自のネットワークを持つユダヤを組み込み、金貸しにとって都合の良い政体を模索していく。

そして、金貸し王国であるオランダ王国を成立させます。そして、イギリスを乗っ取ります。

その成果が1642年の清教徒革命と1688年の名誉革命です。それまでのイギリス国王を追放し彼らの支持するドイツ貴族オラニエ家のウィリアム3世送り込んだ。そして、名誉革命後の1694年にはイングランド銀行が成立する。
・国家に金を貸すシステム:中央銀行+国債発行
・資金を集めて資本化するシステム(投機市場と植民地経営を組み合わせたシステム):
 →東インド会社(株式会社の始まり)
・植民地からの略奪が一服すると、次に植民地への輸出で儲ける為の産業革命へ。

●フランス革命からの近代国家の確立・拡大 参照:6 [9]

フランス革命により、「絶対王政」が崩れ(国王の駆逐)、議会が主権をもつ「国民国家」が成立しました。金貸しによる国家の間接支配が始まります。民主主義とは、金貸し達が、国王を駆逐し大衆を支配するための作りだしたのではないでしょうか。
そしてヨーロッパ諸国は、フランスにならって、次々と「国民国家」に移行して行きます。

●近代市場の確立 参照:7 [7]

自由・平等・博愛・・・この思想の目的は今や明らかです。大衆を旧来の身分制から解き放ち、都市=市場に導くための自由だったのです。
かつ金貸し・市場にとっては、どこにでも参入できるように、市場システムを移植していく必要もありました、その際も自由は便利な概念です(規制撤廃→自由市場・楽市楽座)。
このようにしてオランダ・イギリス→フランス・アメリカ次いで日本、というように幅広く大衆まで市場に組み込まれた近代国家が世界中で成立していきます。(その他の発展途上国は市場による最末端の収奪対象だった。)

■もう騙しは通用しない。
市場(金貸し達)は、もともと私権闘争の抜け道として登場しました。幻想化した商品とうまい言葉により武力支配者を騙し、己の私権を獲得してきました。
その後、もともと騙し的要素のあるキリスト教と結託し、キリスト教の拡大に力を貸しそのネットワークを利用し、国家と結託して力を拡大してきました。その戦略は、騙しと掠奪です。
ルネッサンス以降、性と自我の開放により大衆を近代思想(騙し思想)に収束させ、近代市場を作ります。着々と国家と市場の力関係の逆転が進んでいきます。そして遂に大衆を巻き込んで民主主義国家を成立させ、国王の力を駆逐し、中央銀行により間接支配体制を構築し、国家と市場の力関係は逆転します。
しかし現在、金融市場は縮小し、この騙しの戦略は限界を迎えています。また時代は、共認社会へと移行し「騙し」が次々と明るみに出てきています。共認社会では、事実が命綱、「もう騙しは通用しない」。

*国家・キリスト教・市場の構造年表 画像をクリックしてご覧ください。
 (なんでや劇場 資料16 「国家と市場の構造年表」をもとに作成)
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