2010-02-13

『国家と市場の力関係の逆転』 4 キリスト教の布教戦略・騙し構造

ヨーロッパでは、王権を超える力を持ったキリスト教教皇が絶大な力を握り、中世以降において十字軍や異端審問・魔女狩りなどヨーロッパ全体を動かす力を持つに至った。
さらにキリスト教は植民地支配の尖兵となり、西欧諸国の世界侵略とともに世界中に広まっていき、今では世界最大の信者数を誇っている。
※日本人にとって、原罪や処女懐胎、イエスの復活など信じがたい説話を多く含んでいますが、そのような宗教が受け入れられ広まっていった理由は何故なのでしょうか?西洋人の体質と教会の布教戦略とは?
今回は、前回より時代的にやや遡りますがヨーロッパにおける金貸し支配の足がかりとなったキリスト教について改めて調べてみました。

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基本構造は
  るいネット 『近世欧州市場の特殊性』より

1.皆殺し→全て敵⇒架空観念に収束するが、正邪の羅針盤を喪失しているので『騙せば官軍』の世界に。
2.この力の原理に立脚する「騙せば勝ち」の構造を見抜き、それを布教戦略として成功したのがキリスト教。
3.欧州では中世〜近世、教会が国家・国王をも上回る共認権力(→財力)を確立(アジアには無い構造)。

古代ローマ以前は部族毎に守護神信仰を持っていた。しかし、ローマ帝国の侵略闘争の下で、部族集団が解体され、奴隷化・核家族化が進むと人々は個人の救済を求めるようになる。集団を失った個人に、隣人愛という概念でうまく付け込んで行ったのがキリスト教だ。
●1.キリスト教の騙し構造:罪の捏造と美化戦略
ユダヤ教の異端だったキリスト教に普遍性をもたせ広めていったのはパウロである。彼は、“人類の罪”・“愛”という対立概念を持ち出した。
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パウロ
1.罪・原罪と希望・愛:
パウロは、「イエスの十字架の死は、人類の罪のあがないを身代わりになって行ったものであり。贖罪の行為であり、イエスの死は神の人類全体に対する愛の発露だった」とした。
つまりパウロが取った布教戦略は、人々の罪を強調し、それに対するあがないとしての贖罪行為・美化行為「愛」の捏造だった。
私権時代だれでも多少悪いことをしたり、その思いを秘めていたりと言う罪悪感はあるだろう。そんない意識を逆手にとった戦略だ
・この人類の罪は、さらに4世紀ころのアウグスティヌスによって、原罪という概念に進化させられる。アダムとイブが楽園を追放されて(神に禁じられていた木の実を食べたので)以来、生まれながらにして深い罪(原罪)を背負っているというもの。
・彼は特に性欲を原罪の証として激しく攻撃した、曰く「この悪魔のような性器の興奮」。
一方彼はイエスの死によってその罪はあがなわれ、そのイエスの救済事業を受け継ぐのが教会であるという論理を構築した。彼は人間の徳として、信仰・希望・愛の3つを強調した。
かれは、その内面の葛藤(私権意識と信仰心)から、最後は最後の審判によって「神の国」に属するものが神の栄光にたたえられるという終末論的な歴史観に至っている。
このように人間は生まれながらにして罪を背負っていると烙印を押され、その上でイエス(代理人としての教会)が救済するという立場を構築したのだ。これを壮大な騙しと言わずしてなんと言おうか?
こうして教会は人々の上に立って、人々の罪の意識を煽ることで、何でも正当化できるようになる。十字軍や贖罪符(免罪符)も、贖罪行為として正当化され、教会に反するものは異端として攻撃されるようになる。

●2.ローマ守護神の真似をして信者を増やす
一定信者が増えてくると、今度はマス戦略を図り、当時ローマで信仰深かったミトラ教の要素を取り入れていく。
  『キリスト教封印の世界史』より引用 

だがローマ人がキリスト教に親しみを持ったのは、「唯一」を重んじる教えに惹かれたからではない。ローマ人がもともと多面神になじんでいたからだ。キリスト教にはローマの宗教、特にミトラ教とそっくりな面がある。「帝国の守護者」ミトラは、太陽神のヘリオスやアポロンと密接な関係がある神だった。当時に近いミトラの誕生日、12月25日はイエスの誕生日でもある。ミトラの誕生日を目撃したのは羊飼いだったし、この羊飼いはミトラが天に昇る前に最後の晩餐をミトラと過ごしていた。春分と関係のあるミトラの昇天日は、キリスト教の復活の日でもある。キリスト教徒が占拠しカトリックの総本山としたバチカンの丘は、ミトラを祭る洞穴神殿があった場所だった。ミトラ教の最高祭司の称号≪パテル・パトルム≫は、教皇を意味する≪パパ≫の語源となった。
キリスト教の教父たちは、ミトラ教と驚くほど似ている理由をこう説明した。これは悪魔の仕業だ。古代のミトラ伝説は、唯一の真の信仰を悪魔が先取りして真似たものだ、と。

こう見てくると、キリスト教のお話の多くは信者獲得のために都合の良い説話を寄せ集めたものなのではないだろうか?
●3.支配者への擦り寄り
同時に彼らは支配層への浸透を図る。以下の布教者の言動はキリスト教の性格を見るうえで注目に値する。フェニキア商人が奴隷教化のためにキリスト教を取り入れたという説と符号してくる。

>男女の奴隷が周辺の国々から得たものである場合、あなたはそれを奴隷として買うことが出来る。・・・・この国で彼らに生まれた家族を奴隷として買い、それを財産とすることもできる。彼らをあなたの息子の代まで財産として受け継がせ、永久に奴隷として働かせることもできる。(レビ記)
>奴隷は神に従うように主人に服従し、自分の運命に身を任せるべきである・・・
(初期キリスト教の教父聖ヨハンネス)
>すべての人は、上の権威にしたがうべきである。なぜなら神によらない権威はなく」、「従って権威に逆らうものは神のさだめにそむくものである」「あなたがたは、支配者全てに対して、義務を果たしなさい」(パウロ、「ローマ人への手紙」)

以上の言動はローマに抵抗したキリストなら絶対容認しないであろう。キリスト教は元来ローマに対する反政府・反権力活動を強く含んでいた。
布教戦略を立案した使徒達は、それでは支配者対策として都合が悪いため、イエスの死を当時ローマと対立していたユダヤに押し付け、キリストを裏切ったユダヤ人という話をでっち上げ、ローマ支配層に擦り寄っていったのだ。
●4.ローマ帝国末期に国教化されることで、ヨーロッパ世界の宗教として確立
キリスト教は最後の目標として国教化を勝ち取る。
 
  実現論より

それが社会共認になった以上、それは共認動物の社会統合上、頂点に君臨することになる。・・・支配階級からみれば、はじめから現実を変革する力などなく、むしろ私権の核を成す家族や恋愛を美化して人々を共認統合してくれる幻想観念は願ったり適ったりで、自分たちの身分を脅かさない限りありがたく利用すべきもの・・・

●5.ローマ帝国崩壊時に教会組織は国家業務を引き継ぎ、ゲルマン国家の核を形成
キリスト教の強さは西洋社会で曲がりなりにも共認集団を形成したことで、武力国家が崩壊しても組織は存続し、社会の信任を得ていくことになる。本源集団を失った西洋で共認集団を形成したことが、ヨーロッパに広く深くキリスト教が根付いた理由ではないだろうか。
『中世ヨーロッパの都市世界』河原温著より

がんらいキヴィタスと呼ばれたローマ都市の機能は、三世紀以降ローマ帝国の危機とともに収縮したが、解体しつつあった国家的業務を新たに引き継いだキリスト教会によって継承された。キヴィタスには司教座が設置され、司教が常駐してキリスト教化の拠点とされたのである。
・・・司教は、教会と信仰生活の司牧を司ったばかりではなく、住民間の紛争の調停、貧者救済、公共建造物や橋、道路などの維持に努めてその社会的権威を高めた。司教のキヴィタスに対する支配権は地域によって様々であったが、カロリング朝(751年〜987年)以降、政治的・軍事的役割も負うべき存在として王から裁判権や免税特権などを付与され領主として支配を行った。そうした司教の所在地(司教都市)は、その後の中世都市の一つの重要な核を構成したのである。

教会が、すでに都市で自治権に近いものを構築していたことが見える。そして教会と諸国の王たちが手を結ぶことで複雑に入り組んだ新しい関係が生まれ、やがて神聖ローマ帝国へと発展していく。
●6市場社会への移行、教会の危機感から暴走が始まる
しかし、中世末期に商人・金貸しによる自由都市が発達し始めると、それまで学問や芸術などの共認域を握っていた修道院に代わり、商人向けの学校・大学の設立や、宮廷向けの文学などが花開き、教会は権威の土台を次第に崩されていく。こうして焦りと危機感を増していく教会は大暴走を始め、その他者攻撃・自己正当化という真の姿を露にしてくる。
  『キリスト教封印の世界史』  より

カトリック教会は権威主義に凝り固まり、至上権を訴えるのに夢中で、見る見る変化し、発展していく中世社会から取り残された。あせった教会は、教皇の命令に従わせようと画策した。キリスト教を旗印にヨーロッパの民衆を団結させ、十字軍を結成してイスラム教徒、ユダヤ人・東方正教会を襲わせた。
だが、団結が長続きしないと見るや、今度は近場に目先を替え、教会の権力を脅かし命令に背く者を手当たり次第に攻撃した。三十年間におよぶアルビジョア十字軍の蛮行は、やがて西洋最大の規模となる五百年間の残虐な弾圧へと発展していくのである。

5百年間の弾圧とは、その後の異端審問・魔女狩り・未開地の人々への奴隷宣言と奴隷化のことを指している。共認を司る特権階級が暴走し始めるととんでもないことが起こされる。
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魔女の処刑 リンク  よりお借りしました
●7金貸しにとっては都合のよい単純馬鹿・他者攻撃体質
このような教会は、金貸しにとっては全く都合の良い組織といえる。宗教的な理由から対立構造を作り戦争を煽りやすい。教皇をトップとする階層構造になっており買収しやすい。
ブッシュがキリスト教右翼を手なずけてイラク・中東戦争に突っ走ったように、幻想観念に洗脳され正邪の判断もつかなくなった信者・教会ほど操りやすいものはないだろう。その構造は今でも生きているのだ。
※最後に西洋人の歴史を振り返って言えば、原罪→愛という根も葉もない観念で自分と人々を欺くのではなく、自我・性→掠奪闘争、それに続く世界侵略、正当化と歴史の捏造という事実を深く総括するところから始める必要があるのではないだろうか?そうでないとやがて事実が見えた世界から見放されるだろう。
今回は金貸しというよりキリスト教が主体で番外編みたいになりました。でも、西洋の騙しって市場に引き継がれていって、なかなか根深い感じがします。

List    投稿者 Hiroshi | 2010-02-13 | Posted in 未分類 | 1 Comment » 

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コメント1件

 portugal hermes handbags | 2014.02.01 18:28

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