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『日本国債暴落の可能性は?』【5】国債って誰が持ってる?(保有者の実態)

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前回の記事では、国債発行と流通の仕組みを調べました。今日は、この国債を誰が持っているのか?に着目して調査・追求していきます。
日本の国債は、ほとんどを国内で持っているから安全だ!という意見と、日本は1000兆も借金があるから、ギリシャと同じことになる、外資に国債を売られ暴落し、日本は破綻するという意見もあります。
まずは実態はどうなのか?見ていきましょう。
『日本国債暴落の可能性は?』シリーズ過去記事は以下を参照。
【1】プロローグ [1]
【2】国債って何?:基礎知識の整理① [2]
【3】国債発行の歴史と直近の発行残高(国の借金1000兆の実態) [3]
【4】国債発行と流通の仕組み:基礎知識の整理② [4]
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●国債の保有者
日本国債は、誰がどれだけ持っているのでしょうか?
日銀の2011年末の「国債等の保有者内訳」をグラフ化してみました。
もとデータはこちら→リンク [5]

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このグラフより2011年度末の状況は、ゆうちょ銀行を含む中小企業金融機関等がトップ、保険会社が2位、国内銀行が3位です。4位に日銀・中央銀行の92兆円がきています。6位に海外がランキングされ、その保有額は78兆円・全体920兆円の8.5%を締めます。ほとんどが日本国内で保有しているとはいえます。
では、各金融機関の国債保有はどのように変化しているでしょうか?
次にここ10年間の日本国債保有の推移を見ていきます。
以下のグラフを参照してください。
このグラフは、各金融機関の日本国債保有の前年度比(%)を示しています。棒グラフが国債合計額の推移です。元データは上記と同じ日銀のデータ。
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グラフの中で、緑の海外の推移、赤の中央銀行の推移、紫の国内銀行の推移に注目してください。
特に2008年リーマンショック以降の動きを見ると、国内銀行は大きくは減の方向、特に2011年では急激に減っています。これに対して、海外と中央銀行の伸びが極端に大きくなっています。今まで国内保有のトップ3だった国内銀行が国債を買わなくなっています。逆にその分を海外と中央銀行が買っています。
なぜこのような動きになっているのか?
国債市場では、何が起きているのか?
●国債の売り越しに転じた都銀
以下、「大きく変化した国債の売買市場:吉田繁治氏」 [8]より。

2009年まで、国債を大きく買い越してきていた都市銀行(中核が3大メガバンク:三菱、みずほ、三井住友)が、2010年から売り越しをする月が増えています。
そして2011年は14兆910億円の売り越しに転じているのです。
つまり、資金量が多い都市銀行(約300兆円)が、政府の赤字増加で一層多く発行されるようになった日本国債を増加買いしなくなっているのです。
1年の途中で満期償還がある短期債の売買が含まれるので、売り越 した14兆円の全部が、都銀から手放されたとは言えません。
たぶん、2011年で[14兆円÷4=3兆円]くらいの保有国債が減少しているで しょう。
2012年の1月、2月も売り越しが続いています。最新データの2012年2月は、1ヶ月で4兆1267億円もの売り越しです。
(注)売り越し= 売り−買い)の差額
「買い手だった都銀が、2010年から日本国債の売り越しに転じた」という事実は重大です。2009年まで、最大の買い手として、月別を単純後継すると、1年に30〜89兆円の買い越しだったからです。
都銀の保有額の増加では、買越額の1/4だったでしょう。
つまり、1年に8〜20兆円を増加保有していたのです。

●国内銀行が国債を買えなくなったのは何で?
しかし、そもそも国内銀行が国債を買えなくなったのはなぜでしょうか?
以下、るいネット「日本国債の買い手が消えつつある」 [9]より、簡単に図解化してみました。
2000年:家計の貯蓄横ばい。
民間銀行の国債購入資金横ばい。国債発行は増える。
      
民間銀行は、輸出企業の貯蓄と借入金の回収で国債購入
      
2008年:リーマンショック:企業の貯蓄減
      
銀行は国債を買えない⇒国債の買い手が日銀へ
      
2011年:国債の買い手は、日銀と海外ヘッジファンドへ
●都銀の穴を埋めたのが、外人の買い越し

2010年から、日本国債の買い越しを増やしたのは、外人ヘッジ・ファンドでした。
・2010年は、月別累計で101兆9737億円、
・2011年は、141兆941億円も買い越しています。
買い越しは、2012年1月が12兆円、2月が14兆円と、続いています。
外人ファンドの売買は、ほぼ3ヶ月で現金の償還がある短期国債です。
かねてから長期債は、ほんど買いません。長期保有することが目的ではないからです。
オフショアにある外人ファンドの国債保有は、2011年9月末で47兆4040億円(748兆円の国債の6.3%:財務省の集計)でした。
11年9月以降、買い越しを増やしているので、2月末現在の保有残は推計ですが、少なく見ても、[11年9月で47兆円−その後の満期償還20兆円+その後の買い越し40兆円=67兆円]には達しているでしょう。
◎「国内の都銀が売り越した分を、海外ヘッジ・ファンドが、オフショアから買う」という需給構造に変化しています。

また、海外投資家は、3月5日から30日までの日銀のデータでは、先物オプション市場全体の約6割の取引を占めています。前回記事:「国債発行と流通の仕組み:基礎知識の整理②」 [4]
参照。そして、その取引総額は23兆円・・・・。

このような状況の中で日本はどうしてるのでしょうか?
●日銀の量的緩和(日銀の国債買取)の連発

その後の2月には、日銀が、資産買い受け基金(65兆円)を使い、1年に40兆円(1ヶ月3.3兆円)の国債を、増加買いをするという、過去はなかった金額の「量的緩和」の発表がありました。
量的緩和は、国債を買って、その代金のマネーを日銀が刷るということです。
「あぁ、これは増加買いしてきたヘッジ・ファンドによる、日本国債売り(空売りや先物売り、または売りオプション)が大規模に起こったときの備えだな」と思ったのです。
この対策がないと、国債売りが増えたとき、損失の恐怖に駆られた金融機関からの狼狽(ろうばい)売りも呼ぶため、金利が高騰するからです。
こうなると、2011年1月中旬までのPIIGS債のように、市場は売り一方になります。
郵貯・簡保や年金基金を含み、金融機関の預金(預かり資産)はさほど増えなくなっています。 1枚22円のコストで1万円札を刷ることができる日銀以外には、国債を大きく増加買いする財源が、年々、なくなってきているからです。

●日銀の長期国債の額が、年末に日銀上限額を突破する。
日銀は、この間、金融緩和に踏み切り国債購入を増やしていますが、現状のままでは、日銀が決めた国債購入の限界を迎えようとしています

日本銀行がもつ長期国債の額が、今年末には日銀が定める上限額を初めて突破する見通しとなった。日銀は「国債保有は世の中に出回るお札(銀行券)の量まで」というルールを決めていたが、金融緩和のため国債の購入が増加。政府の借金を事実上肩代わりする状況に歯止めがかからなくなっている。朝日新聞:2012・5・9

●まとめ
以上より現在の状況をまとめると・・・
・家庭と企業の預金が増えないのに国債はどんどん増えていく。買い手がいない。
・現在、日銀と海外ヘッジファンドが主な国債の買い手になってきている。
 特に海外ヘッジファンドは先物市場で暴れている。
・日銀は、国債の買い増しを進めている。しかし、限界は近い。すでに天井を突破。

一方で日本国債をもっとも支えている「ゆうちょ銀行の金」も注意が必要です。
上記グラフでは、ゆうちょ銀行は中小企業金融機関に含まれています。前回可決された玉虫色の「郵政民営化改正法案」では、「100%の経営権を、なるべく早期に、100%売り出します」と言っています。ここに国内法より国際法が優先するTPPの圧力が加わり、ゆうちょ株式が外資へ渡れば、日本の金を自分たちの好きなように使うことが可能になり、日本は国債の柱を失います
日本国債の動きは、非常に危険な状態に入っていると言えます。
裏では金貸しが動いているのか?その目的は?
次回は、デリバティブ商品から株式・国債まで、勝手にランキングをつけて市場を荒らす「格付け会社」について調査・追求します。いったい彼らは何者なのか?・・・お楽しみに。
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