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『日本国債暴落の可能性は?』【【11】国債暴落しない説の紹介

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前回は国債暴落説について追求しました。
暴落する代表的な理由は?
①借金世界一(2012年度末で国と地方併せて概ね940兆円の借金)
②過去の金利ボーナスの消滅
③日本経済が弱くなっている⇒税収が上がらない
④国債が個人資産の7割に
⑤金貸しのたくらみ
今回は、立場を180度変えて、「暴落しない説」の紹介とその根拠について調べてみました。
日本国債暴落の可能性は?』シリーズ過去記事は以下を参照。
【1】プロローグ [1]
【2】国債って何?:基礎知識の整理① [2]
【3】国債発行の歴史と直近の発行残高(国の借金1000兆の実態) [3]
【4】国債発行と流通の仕組み:基礎知識の整理② [4]
【5】国債って誰が持ってる?(保有者の実態) [5]
【6】コラム①:格付け会社って何? [6]
【7】国債市場の動き? [7]
【8】日銀の金融政策って何?:基礎知識の整理③ [8]
【9】日銀の金融政策の変化 [9]
【10】国債暴落説の紹介 [10]
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■まず、日本国債は暴落しないと言う説を紹介します。
株式日記と経済展望「国債デフォルトしない国は、黒字国上位の1位ドイツ、2位中国、3位サウジアラビア、4位日本等である。潜在的国債デフォルト国は最下位183位アメリカ、181位イタリア」 [11]

・現在のところ世界で一番信用がある通貨と国債は日本の円と日本国債だ。
・世界一の外貨保有国の中国もドルもユーロも買うのはやめて金や円を買っている。
・日本のように経済が強くて経常黒字国なら資金もだぶついて国債をいくらでも発行で
 きます。
・日本やドイツは経常黒字国であり国債をどんどん発行しないと需要がありすぎて金利
 が低下する一方だ。
・増田俊男氏に寄れば日本は、「20年間デフレでゼロ成長、国民の預貯金が1,500兆円
 だから国の債務がGDP比230%の1,000兆円もあってもまだ500兆円も国債需要(買える
 能力)があり、他に530兆円以上の対外債権(連続21年間世界一)を持つ」国
であり、
 これでは円が買われるのは仕方がない。
・アメリカのヘッジファンドは日本国債の売りたたきのために日本国債を買い込んでい
 るということですが、むしろ資産保全のために日本国債を買っているのだ
・原発事故などで天然ガスなどを買わなければならないのに外貨もなかなか減らず、貿
 易収支も赤字になっていますが円が高い。

今後、ギリシャ危機と同様に「ゴールドマン・サックスが空売り・CDSで仕掛けてくるのでは?とも言われています。その時日本はどうするのか?
同じく、株式日記と経済展望「ヘッジ・ファンドは、日本国債の空売り、先物売り、売りオプショ ン、CDSで巨大利益の機会を待っている。 2012年8月頃が、危険だと感じています。」 [12]
より。

ゴールドマンサックスが今度仕掛けてくるのは日本国債らしい。だからヘッジいファンドは日本国債を買い捲っている。
おそらく子会社を通じて空売りや先物売や安いCDSを買い捲っていることだろう。日本の財務省の官僚たちや日銀の官僚たちはアメリカの手先みたいなものだから、情報はアメリカの財務省に筒抜けだろう。と言うことはゴールドマンサックスにも筒抜けになっている。問題はいつどのように日本国債の悪材料をばらして来るかですが、吉田氏は今年の8月ごろと予想している。
(中略)
私が吉田氏と根本的に意見が異なるのは、ギリシャ国債は自国通貨建てではなく、日本国債が自国通貨建てであり外資が売り崩そうとしても日銀が買えば意味は無い。90年代の株式市場で成功したことが日本国債で成功するとは思えない。市場規模があまりにも違いすぎて中央銀行にヘッジファンドが戦いを挑んでも、中央銀行には印刷機でいくらでも円を刷ることが出来るから勝てるわけが無い。

様々な「暴落しない説」も参考に、その理由を整理してみました。
●日本は資産(金融資産・対外資産)を沢山持っている。
 いざとなったら、それを売ればいい!!
●日本は黒字国である。
 資金がだぶついていていくらでも国債を発行できる。
●日本には沢山の貯蓄がある。
 国民の預金が1500兆。まだ500兆買える能力がある。
●日本国債は自国通貨建て。
 暴落になれば、日銀がどんどん紙幣を刷り国債を買えば良い。

では、これらの暴落しない説について検証してみましょう。
■日本の資産(金融資産、対外資産)は、いざという時に売れるのか?
○国内資産は売れるのか?高橋洋一氏の著書「「借金1000兆円」に騙されるな!」によると、H22年3月31日現在で、資産合計650兆円、うち400兆円以上が金融資産。
金融資産は、現金、預金、貸付金、有価証券、出資金などで、売るのも簡単。とのこと。
確かに金融資産は、売ることは可能です。
しかし、いざとなったらこの資産は「本当に売れる?」のでしょうか?
以下、日本白書より。

平成22年(2010年3月末時点)の連結バランスシート(財務省) [13]
全体:772兆円
現金:35兆円、有価証券:224兆円、貸付金:192兆円、有形固定資産:270兆円
○有価証券
約1兆ドルの米国債。純資産でない
残りの100兆円以上の資産は、「公的年金預り金:130兆円」。純資産ではない。
この米国債と年金の積立金の2つが有価証券になります。
○貸付金
政府が地方公共団体と政策金融機関に貸してる金。
投融資先
プロジェクト・ファイナンス、PFI、事業再生、ベンチャー、産学官連携、国際協力、社会・環境活動など、政策性が高いプロジェクトを支援するための融資や投資が基本となる。
彼らに貸した金をどーやって巻き上げるんでしょう?
・有形固定資産
道路や政府系の建物、皇居。道路を売るなんて考えられないし、皇居なんて売れません。この有形固定資産でお金に変えられるものは極少数。
政府が予算編成に困って、政府資産を売却して使える金額って殆どありません。有価証券と貸付金は使えない資産です。そ〜考えると現金の35兆円ぐらいなものですね。

国内資産は、暴落時に、そう簡単に売れない。
次に、対外資産についてはどうなんでしょうか?
○対外資産は売れるのか?

日本の対外純資産253兆円、21年連続で世界一
財務省は22日、2011年末の日本の対外資産と負債の状況をまとめた「対外貸借報告書」を発表した。日本の政府や企業、個人が海外に持っている資産(対外資産)から、海外の政府や企業、個人が日本に持つ資産(対外負債)を差し引いた「対外純資産」の残高は、前年末比0・6%増の253兆100億円だった。過去2番目に高い水準で、09年以来2年ぶりに増加した。
参考:リンク [14]

・対外資産は3・3%増の582兆480億円。
・対外負債は5・5%増の329兆380億円。差額:253兆100億円。
上記の内、政府が持っている対外資産は?いくらなのか?
政府が持っている対外資産とは、外貨準備高を意味しています。
外貨準備高は、約97兆円。外貨準備以外の約485兆円(582兆円−97兆円)は「民間」の対外資産。参考:リンク [15]
いざと言う時に政府が動かせるのは、せいぜい約97兆円。それも全て売ることはできません。残りは民間資産のため、どの程度動かせるのか???
日本は国内資産・対外資産共、多くの資産を持っているのは確かです。国家破綻を回避する力はありますが、いざ暴落時の金貸しとの戦いのスピードには、役に立たないと見た方が賢明ではないでしょうか。
■日本は黒字国である。
この間、日本の貿易赤字が問題になっていますが、その中身は?
貿易赤字、5月で過去最大 9073億円、LNG輸入増続く
フジサンケイ ビジネスアイ 6月21日 [16]

財務省が20日発表した5月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は9073億円の赤字となった。赤字は3カ月連続で、赤字額は5月としては過去最大。原子力発電所の稼働停止で火力発電用燃料の輸入が増える一方、欧州債務危機を受けた海外経済の減速が輸出の重しになっている。欧州連合(EU)との貿易収支は、初めて赤字に転落した。
輸出額は前年同月比10%増の5兆2347億円で、3カ月連続で増加。米国や中東向けの自動車などの輸出が伸びた。

参考:財務省5月速報値
リンク [17]
リンク [18]
日本は、原子力発電の停止(LNGの輸入増)と世界的な市場縮小の中で、今までのように貿易黒字を維持する環境ではなくなったのではないでしょうか?
一方で、輸出大企業(自動車)を中心とた輸出額は伸びているのは確かですが、日本の自動車輸出の対GDP比率は、マスコミの大騒ぎとは裏腹に、なんと1.23%にすぎません。(参照:『なぜ今、TPPなのか?』【11】コラム:日本は貿易立国って本当? [19]
またTPPに加入すれば、この状況は更に悪化するのは間違いありません。
■日本人の貯蓄
資金循環統計(2012年第1四半期速報):参考図表(日本銀行ホームページ) [20]
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2011年度1513兆円(そのうち現金・預金は835兆、約55.2%)
上記より、大きな傾向を見ると。
・株価下落、円高に伴う時価減少の影響から株式や投資信託を中心に資産が減少
・債権からも資金流出となり、国債からも12期連続で資金が流出。
・投資信託からも資金が流出
・現金・預金の残高や金融資産に占める割合は過去最高
 欧州債務危機、市場環境の不透明感を受けて、個人がリスク回避し、現金・預金の残
 高や金融資産に占める割合が過去最高となっている。
・ゆうちょ銀行への資金流入が増大で、預金残高は11年ぶりに前年から増加に転じた。
国民全体の金融資産は、2010年度に比べ0.7%の伸び。その中身は、株式・債券から、現金・預金へと流れているのが主で有り、資産全体の伸びは少ない。
金融資産の前年度比の推移は、伸び率は鈍化しています。
2009年:2.5%→2010年:0.8%→2011年:0.7%
この率を遙かに超えて年々国債は増え続けている。
また、国民の金融資産は1500兆円ありますが、それぞれ住宅ローンや借金を抱えているわけで、それらの負債を差し引くと、実態は700〜800兆円で既に国債を下回っています。
■3大メガバンクの動き
日本人の資金が預金へと流れている中で、国内3大メガバンクの動きはどうなっているでしょうか?

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気を吐く3メガ銀、3月期最終益1兆9000億円規模に 欧州危機影響せず [22]()
(株えもんのブログより)

三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)など3メガバンクの2012年3月期連結決算で、最終利益の合計が前期比約3割増の1兆9000億円規模に達することが23日、分かった。3月に国内株価が回復し、評価損が減少、国債売買も好調だった。欧州債務危機などの影響で業績が崩れた欧米の銀行と違い、気を吐いた格好だ。

○メガバンク好決算、世界に飛躍のチャンス(http://ameblo.jp/89452400/entry-11208822224.html)
(SankeiBizより)

メガバンク好調の背景には、上記の記事以外に海外業務で欧米の金融機関が損失処理に追われ業務を縮小していることも見逃せない。
 米国はサブプライム問題、欧州はソブリンリスク問題で動きが取れない欧米の金融機関に対して、日本のメガバンクはバブル崩壊後にリスクをとった業務を縮小してきたことにより、体力を温存、海外での業務を伸ばしています。

○■メガバンクの国債売買益は過去最高水準
(http://blogos.com/article/39215/)
(BLOGOSより)

さらにこの3つのグループが保有している国債の残高は、三菱UFJが約48兆円、みずほが34兆円、三井住友が約28兆円と、総額で約110兆円に上り過去最高となったそうである。

バブル崩壊以降リスク回避をしてきた3大メガバンクは、サブプライム危機、ソブリン危機を乗り越え、この間苦しんでいる欧米の金融機関と違って好調。国債の購入額も過去最高になっています。
■まとめ
・日本は、資産は多く持っているが、暴落時にそれを使える可能性は低い。
・日本の貿易黒字の環境は大きく変化しており、黒字維持は難しくなっている。
・国民の金融資産の伸び率は、この間下がってきている。一方、国債は増え続ける。
・日本国債は自国通貨建てだが、日銀が印刷機を無限に回すことはできない。
 利払いはどんどん増え続け、1%の暴落が致命傷になる。現状でも1%=10兆円

日本国債暴落は、「金貸し」が仕掛けてくる可能性はある。その時、対抗できるのは日銀の印刷機だが、中央銀行である日銀そのものも、金貸しの支配下にある。(参考【9】日銀の金融政策の変化 [9]
また、3大メガバンクも、株主には金貸し勢力が入り込んでいます。
日本国債は暴落させられる可能性は高い?のではないでしょうか?
金貸しが仕掛けてくるとしたら、その目的は何か?
更に追求していきます。
次回は、国債が暴落したらどうなるか?事例をまとめます。
お楽しみに・・・・

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