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米国はどのように衰退してゆくのか?(16)〜米国人の精神構造は? その1 米国政党から見る精神構造とは?〜

前回までは、米国の産業の行く末(衰退)について紹介し、金貸し支配終焉後の米国産業界は、建国時に近い「大陸型産業」に縮小回帰してゆく道しか残されていないことがわかりました。
その1 [1]  その2 [2]  その3 [3] その4 [4]
刻一刻と迫る経済破局。経済破局が起きれば、一気に国家秩序崩壊まで至らないとも限りません。経済破局→秩序崩壊が起きるか否かは、金貸しによる生き残り競争の趨勢、さらには米国民の精神構造が最後のカギになります。
 

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そこで今回からは、政治や宗教、文化の面から米国人の精神構造を解いていきたいと思います。
それでは、まず米国人の精神構造を米国の政党の歴史的変遷から見ていきたいと思います。
 
 
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■共和党と民主党の特色
 
米国の政党は、大きく共和党、民主党に分けられています。これら政党の特色は、どのようなものなのでしょうか?
 
「日本を守るのに右も左もない」〜『アメリカの共和党・民主党』22〜 [5]より)

共和党は、もともとは建国前からの北部移民(WASPなど)を中心につくられ、反カトリック=プロテスタントの色合いが強いが、イギリス・ヨーロッパを価値的に否定する色合いがある。
その意識から『孤立主義(→モンロー主義)』であり、反ヨーロッパの裏返しとして『アジア主義』の面をもつ。
そして、孤立主義の裏表にある『膨張主義』→アメリカの大義=世界の大義の意識から『世界主義(世界的に価値観を染め上げる)』に収束しようとする面がある。
また、市場拡大の戦略は、建国から世界一の工業化・経済大国を牽引してきた産業資本から軍需産業を基盤としており、『武力を中心とする略奪による富の収奪』が基本である。
だから、保守財閥の産業資本家→金貸しまで領域を伸ばしたロックフェラーなどの影響が強い。
そして、冷戦構造の米ソ二極化が崩れ米国の力が突出すると、結果的に他国からは「一極主義」に見えるが、アメリカの赤字が急激に上昇しアメリカ一極(の基軸通貨)では行き詰まってくるなかで、本質は儲かれば国に拘らずどこの国でも寄生する金貸しの意向のもと、もともとある世界主義も相まって、今は『(世界覇権主義の中での)多極主義』を推し進める原動力になっている。
一方の民主党は、もともと農業でヨーロッパとの貿易を進めていた南部を基盤としながら、鉄鋼、石油など主要産業はWASPなど旧い移民に占められるなかで、遅れて入ってきた移民の受け皿として機能してきたため、意識的にもカトリック・ユダヤの色合いが強くなっており、東部を中心にした金融資本の『経済系』の面がある。
その意味では欧州のロスチャイルド系金融資本とのつながりが深いだろう。
そのため『親ヨーロッパ』で、ヨーロッパを対象にしているという意味で、『国際(=ヨーロッパ)主義』であり、『反アジア主義』の面をもつ。
だから、国際主義を御旗にしているので欧米以外からは「多極主義」に見えるが、本質はヨーロッパの国々を中心にした世界形成をおこなう『欧米一極主義』である。
そして、市場拡大の手法は、表向きは国際協調主義なので、武力による略奪というよりは、理念的に共認形成をはかろうとする。つまり、『欺瞞観念を駆使して、だまし共認による富の掠め取り』である。
ただし、軍需と金融は深い関係があり、軍需産業と組んで戦争市場も作動させる。
その時は国連など国際合意を捏造して戦争を正当化させるため、一旦、民主党が戦争市場を作動させると規模が大きくなり、理念に拘わざるを得ないため長期化し、欧米以外の国に対しては容赦がない(例えば、第1次+第2次大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争など20世紀の四大戦争)。

 
共和党・民主党の特色には、以下のようなものが挙げられます。
 
<共和党>
・孤立主義(→モンロー主義)
・反ヨーロッパ主義
・世界覇権主義の中での多極主義
・反カトリック=プロテスタントの色合いが強い
 
<民主党>
・国際主義
・親ヨーロッパ主義
・欧米一極主義
・カトリック・ユダヤの色合いが強い
 
 
 
■移り変わる政党の主流
 
 
「日本を守るのに右も左もない」〜『アメリカの共和党と民主党』8〜 [6]より) 

アメリカ史における政党の主流を俯瞰すると、
南北戦争の1860年のリンカン当選以来、ニューディールの1932年のF・D・ローズベルトの当選までほぼ共和党の多数党の時代であった。
そして、1936年のローズベルト連合が形成され、広く低所得者層、都市大衆が民主党支持者になり、1932年の選挙戦以来から第二次大戦を背景にほぼ民主党の多数党の時代が到来した。
そして、1969年のニクソンそしてより顕著に’82年のレーガンから今のG・W・ブッシュに至るここ約30年ほどの間の共和党の変容で錯綜するが、
議会まで含めれば基本的には民主党が多数党を占める状況が‘90年頃まで続いた。
そして、‘90年台後半頃から民主党の転換組の「新保守主義(ネオ・コンサーヴァティヴ=ネオコン)」と「キリスト教右派」を取り込んだ共和党が、’94年上下両院で多数党を占め、以降共和党の多数党時代。

 
そして、2008年リーマンショックで高まる世界金融危機から、2009年、民主党のバラク・オバマ氏が黒人初の大統領として就任。雇用回復、社会的弱者の救済などに取り組み、現在に至ります。
 
 
 
■現在の共和党・民主党の政策
 
 
「MA社会研究所情報」 [7]より)
 

景気、雇用に関しては民主党は公共事業などの景気政策を継続して中間層を支える。共和党は法人減税で中小企業を育て、雇用を作り出す。税、財政では民主党は富裕層への減税を年末で打ち切る。共和党は富裕層の減税を継続し、歳出をカットする。医療保険では民主党はオバマケア国民保険制度を拡充する。共和党はオバマケアを撤廃する。エネルギーは民主党はクリーンエネルギー化を進めて、原発も推進する。共和党は化石燃料や原発で米国で自給する。軍事費は民主党は削る。共和党は削減せず世界最強を維持する。結婚、中絶では民主党は同性婚、妊娠中絶を認める。共和党は同性婚反対、中絶反対。移民は民主党は不法移民に市民権を認める。共和党は不法移民の市民権を認めないという。

 
注)オバマケア [8] 
 
 
<共和党>
・富裕層の減税継続
・景気政策(法人税減税→中小企業の育成)
・オバマケア国民保険制度の撤廃
・自給エネルギーの推進(化石燃料の推進・原発など)
・軍事費の維持(→軍事世界最強の維持)
・不法移民の否認
<民主党>
・富裕層の減税打切
・景気政策(公共事業の増加→雇用の増加)
・オバマケア国民保険制度の拡充
・クリーンエネルギー化の推進
・軍事費の削減
・不法移民の是認
 
上記のように、白人エリートの多い共和党は、富裕層が有利な政策をとっているのに対し、黒人の多い民主党は、低所得者救済の政策を徹底しています。
 
 
 
■米国人の民族性
 

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アメリカ独立戦争 [9]

 
「日本を守るのに右も左もない」〜『アメリカの共和党と民主党』8〜 [6]より) 
  

・『排他意識』と『アメリカ価値観の絶対化』
⇒①自由の国、アメリカは移民国家で、見ず知らずの人同士という血縁・地縁(→共同体)とは無縁の多元的な移民人種の集まりで、このことはヨーロッパ的固定的身分制の壁は顕在させないが、強固な警戒心をもった移住民間の“排他的な壁“を頑然と存在させている。
②アメリカは、根底に『排他意識』に侵されながら、一方で、『誰にも自由に私権を獲得する機会が平等にある』というアメリカン・リベラルとデモクラシーに執着するという、相矛盾する意識の混濁を抱え続けており、本音と建前、肉体と観念の混濁を抱え続け、それゆえにその価値を他者に押し付けて絶対化するために拡大(拡張)してきた面がある。
・『イギリス・ヨーロッパを価値的に否定』→『アメリカの特殊性意識』
⇒アメリカの精神的支柱でもあり事実上の支配階級を形成していくカルヴァン派ピューリタンの精神には、植民地領時の意識そして独立後の現実的体制的問題を絡めた意識がある。
・『地理的予定説+アメリカの大義は世界の大義』→『孤立主義と膨張主義』
⇒独立戦争は、植民地社会による本国権力の否定と本国権力に代わる自らの権力機構樹立のための戦争で、国家間の戦争とは異なり、本国対植民地、より厳密に言えばイギリスにいる君主対アメリカ臣民という垂直的な支配・被支配の関係にある勢力の間の戦争であった。
それが、内戦を国際戦争までに止揚することになり、アメリカの戦いの意味は、イギリスという国を越えて、当時のヨーロッパ(大きくは世界)の君主制の否定を意味していくことになる。

 
 
 
■米国人の精神構造(まとめ)
 
<観念上部>
・自由
・反ヨーロッパ
・選民意識
・世界一でなければしょうがない
<観念下部>
・警戒心
・自己正当化
 
米国人の観念下部が、経済破局→秩序崩壊に繋がると考えられそうです。
 
 
前段でも述べましたが、米国人は、移民集団であるが故に、潜在的に繋がることは困難であり、「理念で繋がる人種」です。これらをより掘り下げていくためには、宗教がカギとなりそうです。
 
次回、米国人の精神構造を宗教の観点から紹介したいと思います。

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