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大恐慌の足音・企業は生き残れるか? 第4回 〜三菱自動車〜

企業は大不況を生き残れるかを検証する今シリーズでは、大手家電メーカーのパナソニック [1]とシャープ(その1 [2]その2 [3])そしてソニー [4]http://www.kanekashi.com/blog/2012/12/001961.html#moreを見てきました。
第四回目の今回は、自動車メーカーの三菱自動車についてみていきたいと思います。
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いつも応援ありがとうございます。


◆三菱自動車の経営状況分析 
まず、三菱自動車の経営状況を見てみましょう。
今回も同様、有価証券報告書からのデータを基に分析しました。
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まず最初に注目したいのは、前回までの電機メーカーと比べて、三菱自動車の流動比率が低い点です。
企業の体力の有無は、一般的には流動比率=120%を目安に判断します。
(参考リンク [1]
世界的な経済悪化を招いたリーマンショック以前の2007年時点でさえ、120%を大幅に下回る数値となっています。
 
自動車メーカーの場合は、消費者の支払い方が大きく関係しています。
電機製品を買う際、人によって差はあれ大抵は現金で支払われます。
一方、自動車のような大きな買い物になると現金ではなくローンで支払うことが殆ですが、このローン支払いが流動比率に大きな差を与えています。
 
消費者が自動車メーカーの子会社(ローン会社)にローンを組み、子会社が自動車メーカーに現金を支払います。また、子会社は銀行から借り入れている、という関係になります。
 
今回シリーズ一連で扱っている連結決算の数値には、企業本体だけでなくこの子会社(ローン会社)含めての数値が使われています。
子会社による銀行からの短期借入金の金額が連結決算の流動負債に入る為、それによって流動比率が下がるのです。
 
それでは、単体決算(三菱自動車のみの決算)を見た場合どうでしょうか。
単体決算では、子会社から支払われる現金(売れた自動車の代金)のみ計上されるので純粋な企業体力を見ることができます。
 
ところが三菱自動車の場合、
2007年:流動比率96.96%(流動資産667,578百万円・流動負債688,537百万円)
2011年:流動比率87.68%(流動資産512,477百万円・流動負債584,487百万円)
 
と、連結決算の数値と同等もしくは近年にいたってはそれ以上の数値となっています。
つまり、三菱自動車は相当財務が苦しい状況だと言えそうです。
 
 
◆三菱自動車の国別売上台数
・『三菱自動車はアジアで生きている。』
 
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データは「こちら [5]」からお借りしました。
 
図を見ると、日本国内ではあまり売れておらず海外での売上で成り立っていることが解ります。
さらに、2007年までは欧州諸国での売上が目立っていますが、リーマン以降経済が悪化し、影響のなかったアジアがその後の三菱自動車を支えてたことが伺えます。
 
ここで改めて流動比率の推移をみると、リーマン以降流動比率は回復し、同時に従業員数は1割程度減少しています。
欧州での売上低迷を受けても、経営を維持しながら経営規模もそれに合わして縮小しているのが伺えます。
 
 
・『三菱自動車を支えるアジア諸国』
 
国内販売台数        151,255
アジア販売台数       299,589
総需要(国外含)台数   4,595,153
 
⇒日本国内市場 3.3%
⇒アジア市場  6.5%
 
アジアは国内よりも2倍近い市場があります。
また、タイとインドネシアでの販売台数が他アジア諸国との比較で倍近く上回っているようです。
 
 
◆まとめ
 
三菱自動車の経営状況を見てきました。
国内では、すでに私権収束の潮流は弱まり、家や車といったステータスを追い求める気運は無くなりつつあります。若者の車離れなどがその顕著な現象です。
三菱自動車はこういった時代潮流やリーマンショックといった逆風に晒されており、三菱グループの後ろ楯で支えられていると見れそうです。
 
今回は数ある自動車産業メーカーの中から三菱自動車を扱いましたが、次回は、自動車メーカー国内最大手のトヨタ自動車の経営状況を見てみたいと思います。
 

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