2012-12-16

大恐慌の足音・企業は生き残れるか? 第2回 〜シャープ その1 なぜここまで落ち込んだのか?〜

前回、リーマンショック以来進んできた急激な市場縮小が、実体経済を崩壊させ始めた例としてパナソニックを扱いました。かつて日本経済を牽引していたパナソニックですら、自己資本比率が急落し、やもすれば2年以内に債務超過を引き起こしかねない状況であることが理解できました。
今の日本経済が直面する厳しさを物語っていると言えます。
さて、今回は同じ家電業界の「シャープ」を扱いたいと思います。
地上デジタル放送が終了する前に、薄型テレビ「アクオス」を従え、飛ぶ鳥を落とす勢いと見られたシャープが、ここまでの危機に陥った状況にショックを受けられた方も多いと思います。

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画像はこちらからお借りしました


シャープ 本社・亀山工場に抵当権 計1,500億円(2012.9.8)

シャープの本社(大阪市阿倍野区)と亀山工場(三重県亀山市)の土地建物に、追加融資の担保として計1500億円の根抵当権が設定されていたことが5日、分かった。国内の大手電機メーカーが本社と主力工場を担保に融資を受けるのは異例だ。
 登記簿によると、抵当権は、主力取引銀行のみずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行が、それぞれ750億円ずつを極度額(借金上限額)に設定。対象は、本社ビルと隣接する田辺ビルの土地建物(計約1万7千平方メートル)のほか、亀山工場の土地建物(約30万平方メートル)など。いずれも8月31日付で、提携する台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業との出資見直し協議が合意されるとみられた局面と重なる。
 シャープはこれまで、主に社債やコマーシャルペーパー(CP)などを発行し、市場から直接資金を調達。銀行から融資を受ける場合も、信用力を背景に基本的に担保を差し入れてこなかった。

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◆シャープの経営状況分析
前回と同じように、毎年の決算報告に基づいた共通の表形式で、取り上げる各企業の基礎体力と利益状況の分析を行ってみます。表の見方は、前回記事を参照下さい。
  シャープの企業体力分析

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上表より、流動比率(短期体力)は2010年度ピーク時の122%から翌年で100%に近い値まで急減し、2012年度第二四半期では100%を大きく割り込んで76%(危険水準!)まで低下しています。
自己資本比率(長期体力)は2007年度ピーク時の40%が、毎年微減していますが、流動比率と同じように2010年から2011年にかけて悪化、階段を落ちるように2012年度第二四半期では10%と、2010年と比較して3分の1をさらに下回る水準に減退しています。
外資比率は2007年から2008年にかけて落ち込みがあり、リーマンショックの影響が見られますが、2010年から2011年にかけて微減するものの大きな変動はありません。
  シャープの利益状況分析

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売上高を見ると、2007年度の約3.4兆円をピークに減少し、2010年度は地上デジタル放送への切替による駆け込み需要から上昇に転じますが、2010度から2011年度にかけて急減。2012年度第二四半期では約1.1兆円で、来年度3月決算では2011年度売上高をさらに下回る可能性は高いと思われます。売上高の減少に対して、従業員数は近5年では目立った動きがなく、むしろ意外なことに2010年から2011年にかけては微増しています。これらはリストラが全く進んでいないことを示しています。

◆シャープの経営悪化の主要因

次に、危機的な状況まで追い詰められた主要因を見ていきたいと思います。
シャープと言えば液晶パネル、そして薄型液晶テレビ「アクオス」が有名ですが、従来の亀山工場に加えて2007年に、大阪府堺市に土地126ha(甲子園32個分)を確保して総額1兆円にも上る巨額投資で一気に大量生産へと勝負へ出ました。
この投資が大きく裏目に出たことが、今の経営危機の主要因です。
以下の年表をご覧下さい。

2007年にシャープは2000年比1.5倍という凄まじい売上高を誇り、堺工場計画をスタートさせます。
当事はアナログ放送が地上デジタル放送へ切り替わる噂が出始めた頃であり、日本中のブラウン管テレビの買換え需要が進むのではないか?と、業界中心に盛り上がりを見せていた頃です。
また、各社熾烈な競争と大量生産の結果、当初は物珍しさ故に高価格だった薄型TVも、価格の下落が進行します。(その下げ幅は前回記事をご参照下さい)
2009年に誕生した民主党政権によって、景気刺激策の一環としてエコポイント制度がスタートし、アナログ放送の切替えタイミングと相俟って、2010年秋にはテレビ400万台を売上げます。
が、直後には東北大震災が直撃。
もともとリーマンショックによって顕在化していた、大衆の節約意識が急速に高まります。
アナログ放送の終了によって駆け込み需要があったものの、2012年春にシャープの危機が一気に顕在化することになります。
ここまでを纏めると、大衆の節約意識の高まりという、根本的な意識潮流の変化が進行しているにも関わらず、総額1兆円にも上る投資はあまりにも巨大すぎたと言えます。アナログ放送の切替も、エコポイント制度も、何とか人工的に刺激して消費を促そうとする「目先の経済政策」に過ぎず、堺工場計画は、大衆の意識を見誤る「時代に逆行する投資」だったと言っても過言ではありません。
◇  ◇  ◇
明日の記事では、今の業績を受けて、シャープが次にどのような展開を描いているか?に迫ってみます。

List    投稿者 wabisawa | 2012-12-16 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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