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反グローバリズムの潮流(難航するドイツの連立協議、国民の意識との乖離が広がる?)

0171123at09_t [1]2017年11月30日の記事、反グローバリズムの潮流(ドイツ総選挙、メルケル首相は連立協議に失敗、再選挙の可能性も) [2]で、総選挙後2カ月がたっても、政権が成立せず、ドイツのメルケル首相が追い詰められていることを紹介しました。ドイツは再選挙になだれ込むのか、新たな連立協議が成立し、政権が発足できるのか、その後の状況を調べてみました

メルケル首相率いる与党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と第2党の社会民主党(SPD)は連立協議を行い、党首同士は連立を進めることで合意しましたが、SPDの内部、特に若手の中に連立に対する反対意見が大きく、1月21日のSPDの臨時党大会で否決される可能性も残っており、予断を許さない状況です。

両党の主要な対立点は以下の通りです。

1.難民政策。社民党は保護に積極的だが、同盟は流入を抑制していきたい考え。

2.EU政策。社民党はシュルツ党首は欧州が最優先事項だと明言。同盟はEU財政統合に反対する国内世論に配慮し消極的。

3.医療保険や税制の改革。社民党が訴えてきた「弱者に優しい制度設計」に対し、同盟は自己責任を重んじる立場から難色

協議の結果、EU政策は社民党の意見を受け入れ、難民政策と医療保険・税制改革は与党キリスト教民主・社会同盟の意見を受け入れることで合意に達したようです。

ここで、不思議なのがEU政策です。どちらかと言えば弱者救済を訴えているのが社民党なのですが、経済格差の根源であるEU統合を社民党が推進しようとしているのです。EUにより労働力の移動が自由化され、難民も大量に受け入れることで、ドイツ国内でも労働者階級ほど競争が激化し、労働条件は悪化しているのです。その為に、人権思想に基づいてEU改革や移民受け入れを推進する社民党(SPD)は今回の総選挙で大敗を喫したのですが、そこは全く変えようとしていないのです。

何故こんなことになるかと言うと、残念ながら社民党は現実が全く見えていないからだと思われます。彼らは人権絶対という価値観を持っているから、国民に移民や労働の自由化に反対する人が多くなっても、その人たちは右傾化したのであり間違っているとしか考えられない。そして自分たちが選挙で負けたのは、メルケル率いる与党キリスト教民主・社会同盟と連立を組んできたから、こうした世論=右傾化に迎合していると国民に思われたからだと考えたのです。その為、社民党はEU推進、移民受け入れの論調を高めることになっています。

まだ、連立政権が成立するかどうか予断を許しませんが、もし連立が成立しても、国民の意識との乖離が大きい政策運営になることはほぼ確実であり、ドイツのメルケル政権は今後も支持率を大きく落としていくことになりそうです。

 

■メルケル首相の与党、SPDとの連立協議開始で合意=独紙2017年12月1日 [3]

メルケル首相率いる与党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と第2党の社会民主党(SPD)が大連立政権の樹立について、予備的な協議を開始することで合意したと報じた。メルケル首相、CSUのゼーホーファー党首、SPDのシュルツ党首が、シュタインマイヤー大統領の仲介で、先月30日に会談した際に合意が成立したという。会談では、大連立政権の樹立、メルケル首相率いる少数与党政権の樹立、再選挙など、様々な選択肢が協議されたが、最終的には大連立政権の樹立について、協議を再開することで合意が成立したという。

■ドイツ社民党、メルケル与党と連立協議へ2017年12月8日 [4]

総選挙後の政権づくりが難航しているドイツで、第2党の社会民主党(SPD)は7日党大会を開き、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(同盟)との連立協議に応じる方針を決めた。

SPDはメルケル政権下で過去2期にわたり連立を組んだ結果、中道左派としての存在感が薄れ、今年9月の総選挙で得票率が戦後最低だった。もともと難民政策や社会保障政策などで両党の主張には大きな隔たりがある。党大会では、党員から連立に反対する声も多く上がった。シュルツ氏は「最終的にどのような形になるのか分からない。もしかしたら新しい形になるかもしれない」とし、閣外協力や総選挙の可能性に言及した。

■独社民党、政策で譲歩しない構え 連立協議控えメルケル氏けん制2017年12月19日 [5]

ドイツの社会民主党(SPD)の幹部は18日、メルケル首相率いる与党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との連立協議について、主要な選挙公約で譲歩すれば党内の承認は得られないとの考えを示した。SPDは医療保険制度について、公的保険と民間保険が並存する現行制度は貧困層を差別していると批判。メルケル氏ら保守派は、制度の一元化によって競争が損なわれ、サービス悪化につながるとしている。

■メルケル首相に幾重ものハードル ドイツ政権協議が本格化、政権樹立へ再挑戦2018年1月6日 [6]

3党連立協議が頓挫したメルケル氏には政権樹立への再挑戦。大連立継続に政権維持の望みをつなぐが、幾重ものハードルが待ち構えている。

ドイツでは2日、昨年9月の総選挙から100日を迎えた。「政治空白」は2013年前回選挙後の86日を超え戦後最長。この間、国際情勢は動いたが、「世界最強の女性」と呼ばれたメルケル氏の影は薄い。「世界はドイツが動けるのを待っている」とも述べていた“甘い”認識は封印した。

交渉では主要争点の一つに難民政策が上るが、両党の開きは大きい。欧州政策でも温度差が目立つ。社民党が目指す医療保険制度改革も障害になるとの見方が強い。ともに選挙で歴史的な低得票率に終わっただけに安易な譲歩は難しい。

政権維持に成功しても、メルケル氏には“厳しい風”が続きそうだ。世論調査では大連立に否定的な意見が52%に増加。肯定的な意見(45%)を上回り、メルケル氏の下で3度目となる大連立への「飽き」が鮮明になっている。メルケル氏に任期途中で首相退任を求める回答が47%となり、任期全うを支持する回答(36%)を超えた。

■独連立交渉、予備折衝最終日は「厳しい一日」に=メルケル首相2018年1月11日 [7]

ドイツのメルケル首相は、自身が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が連立協議を進める社会民主党(SPF)が欧州の統合加速を強く求めていることから、両党の予備折衝最終日となる11日は「厳しい一日になる」との見解を示した。

首相は予備折衝の期限とされる11日の協議の開始に当たり、厳しい一日になるだろうが、ドイツ国民が結果を期待していることは認識していると述べた。

一方、SPDのシュルツ党首は欧州が最優先事項だと明言。「予備折衝の最終日に当たり、われわれはこれが欧州連合(EU)の新たなスタートになるべきだということを明確にする。政府に加わるとすれば、欧州を強くすることが条件だ」と記者団に語った。

■ドイツ、連立継続へ政策協議入り=二大政党が合意、依然隔たりも2018年1月12日 [8]

ドイツのメルケル首相率いる保守系のキリスト教民主・社会同盟と国政第2党の中道左派・社会民主党の幹部は12日、大連立政権の継続に向け、詳細な政策協議に入る方針で合意した。社民党が21日の臨時党大会で党員の承認を得た後で、交渉が始まる見通し。

個別政策では両党の原則的な見解に隔たりもあり、今後の協議は容易ではない。難民対応をめぐっては、社民党は保護に積極的だが、同盟は流入を抑制していきたい考え。医療保険や税制の改革では、社民党が訴えてきた「弱者に優しい制度設計」に対し、同盟は自己責任を重んじる立場から難色を示してきた。

■ドイツ:大連立政権、交渉入りへ合意 社民党内に反対強く2018年1月12日 [9]

ドイツのメルケル首相の国政最大会派キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と国政第2党・社会民主党は12日、大連立政権継続のため政権協定交渉入りを目指す方針で合意した。社民党は21日に西部ボンで開く臨時党大会で交渉入りについて審議する。

社民党のシュルツ党首は欧州連合(EU)改革を重視。合意ではEUに否定的なトランプ米大統領や、中国、ロシアが台頭する国際情勢を念頭に、EU内の投資増や格差解消に取り組むことを明記。マクロン仏大統領と連携する姿勢を強調した。

内政政策では社民党が求めていた富裕層への増税や医療保険の抜本改革は見送られた。一方で、社民党が否定的だった難民受け入れの上限については「年間18万~22万人を超えない範囲」と盛り込まれた。保守色の強いCSUが強く主張したとみられ、再選挙による議席減を恐れる社民党が譲歩した形だ。

一方、社民党大会に向け、党青年部は「大連立反対キャンペーン」を強化する構えだ。シュルツ氏は、大連立反対派の党内左派や党青年部の説得を図る考えだが、全党員による投票で政権参加が決まるため、最終段階で政権入りが否決される可能性も残されており、当面不透明な状況が続く。

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