- 金貸しは、国家を相手に金を貸す - http://www.kanekashi.com/blog -

反グローバリズムの潮流(追い詰められるフランスのマクロン大統領)

f1b140c357a56e645916237cf7c0571e_1525251602_2 [1]前回、フランスのマクロン大統領が、着実に公約を実現していながら、支持率が下がりデモが多発していることを紹介しました。「反グローバリズムの潮流(フランス、マクロン大統領は公約を実現するも、じり貧状態に)」 [2]マクロン大統領の経済改革や大学入試改革が国民に不人気だからです。これに対して、フランスは労働者や学生の人権を保護し過ぎて、経済競争力を失っており、マクロン大統領の改革が正しく、反対勢力は改革を阻む守旧派であると言う報道もされています。一体どちらが正しいのでしょうか。時代の流れを大きく見れば、社会が豊かになるにつれて、労働者や学生の権利が拡大してきたことは明らかで、このこと自体が間違っていると、否定することはできないと思います。社会が豊かになっても、労働者と学生の人権は抑制されたままである方が正しいと言う人は少ないでしょう。

一方で、豊かさが実現した先進国は、経済の停滞に見舞われ、このままでは社会全体が衰弱していく、という危機感に覆われています。そういう意味では、改革の必要性を多くの人が認識していると思います。マクロン大統領が選ばれたのも、この状況を打破してくれるような改革を期待されたからでしょう。では、なぜマクロン大統領は公約を実現しているのに、支持率が下がり、デモが頻発しているのでしょうか。

それは、マクロン大統領の改革が、現状を未来に前進させる改革では無く、過去に逆戻りさせる改革だからです。豊かさが実現されるにつれて獲得してきた権利を、豊かさが失われていくから剥奪すると言うのでは、単純に貧困だった過去に戻るだけで、改革と言うにはあまりにも無策です。過去に戻るだけですから、これも守旧派の一種にすぎません。

一方で、デモをしている労働者や学生も、権利の放棄に反対するだけで、現状からの後退ではなく、前進させる改革を提示していませんから、現状維持と言う意味での守旧派と言えます。しかし、大きな時代の流れの中で、どちらがより先端に近い位置にいるかと言えば、過去に戻るよりも、現状維持を主張する大衆の方だと思われ、そう遠くない将来にマクロン大統領は支持を失うと思われます。

グローバリズムも、規制緩和という言葉を使っているため、いかにも新しい改革のように見えますが、実は資本主義の黎明期の弱肉強食の時代に社会を後退させる動きでしかありません。グローバリズムも、いずれ大衆の支持を失って行くでしょう。

世界が今望んでいるのは、同じ改革でも、過去に戻るのではなく、未来に向かって発展していく改革ですが、まだ、そのような改革を提示した政治家は登場していないようです。

 

■マクロン仏大統領、TVインタビューで激論 経済改革の正しさ主張2018年4月16日 [3]

テレビインタビューはここ1週間で2度目。国民に不人気な経済改革やシリア問題、鉄道労組のストなどについて大統領を質問攻めにした。メディアは経済改革に懐疑的な世論を味方に引き入れようとマクロン大統領への攻撃を強めており、番組では双方ともに一切手加減せず、激しいやりとりを繰り広げた。

大統領はフランス国内での一連の抗議活動に関する「偏向した」質問について記者の1人を非難。大統領は財界寄りの経済政策についてたびたび記者からの攻撃を受け、「富裕税に関する税制について全く謝罪するつもりはない。資金は経済に再投資されている」と応戦した。 反対派は財界寄りの経済政策を進めるマクロン大統領を「金持ちの大統領」と呼んでいる。

さらに、君主的と批判されることが多い大統領の統治スタイルについて「全能という幼稚な考え」は持っていないのかと質問され、「権威は信じているが、権威は全能を意味しない」と答えた。

■マクロン仏大統領がEU演説、欧州は「内戦状態」と危機感 2018年4月18日 [4]

フランスのマクロン大統領は17日、欧州連合(EU)欧州議会で行った演説で、ポピュリズム(大衆迎合主義)や反EU派が勢力を増す現状を「欧州の内戦」と表現し、強い危機感を示した。3月のイタリア総選挙で移民排斥を訴える右派「同盟」が躍進し、今月にはハンガリー国会選でEUの移民政策に反対するオルバン首相が大勝したことを念頭に置いた発言だ。

マクロン氏は独仏主導でEU改革への行程表を今年6月までに示す予定。演説にはEU改革の必要性を訴える狙いがある。

■フランスの大学生がデモとストライキで大学を封鎖している(1) マクロン大統領の教育改革の何に反対か 2018年4月21日 [5]

フランスで、学生が大きなデモとストライキをやって、キャンパスを封鎖している。職員や教授で参加している人もいる。全部の大学ではないが、完全封鎖の所もあれば、機能の一部が止まっている所もある。もう2週目になる(もっと長いところもある。大学によって異なる)。なぜ学生はストライキをしているのだろうか。マクロン大統領の大学入学改革に反対しているのだ。「大学の入学で生徒の選別をするな」と主張してデモとストをしているのだ。

具体的には、3月に法制化が公布された「学生の成功とオリエンテーションの法律」への反対である。この新しい法律は、大学入学における生徒の選別を事実上合法化するものだ(その他にも色々な要素を含んでいる)。

なぜ反対なのか。教育はすべての人のものだから。選別はフランスの国是「自由・平等・博愛」に反するからである。日本では今世紀に入ってやっと高校の授業料が無償化され、いま大学の授業料の無償化の検討が始まっている。しかし、とっくにそれはフランスでは実現している。大学(学士)の登録料は、184ユーロ(約2万5000円)である。これを日本人に言ったら、「一ヶ月ですか」と言われた。違う。1年である。

■ソルボンヌの反乱:キャンパス封鎖 (2)フランスの大学生がデモとストライキで大学を封鎖している2018年4月26日 [6]

キャンパスを封鎖して抗議をし始めた第1号は、ボルドー第2大学だった。3月1日のことだ。ただしこの時は、いくつかの入り口を封鎖しただけだ。初めてキャンパス全体の封鎖が起こったのは、3月6日、トゥールーズのジャン・ジョレス大学だ。集まった生徒たちが総会を開いて投票し、封鎖を決めたのだった。

3月22日に学生の選別を合法化する法律「ヴィダル法」が上院を通過して決定になってから、徐々に抗議行動が増えていき、デモや封鎖(キャンパスの一部・全部)は、4月の1週目と2週目に飛躍的に増えた。現在、30強の大学で、封鎖(一部・全体)が行なわれている。そしてソルボンヌ大学の本キャンパスで学生による封鎖が起きたのは、キャンパス前の広場でのデモの2日後。4月12日だった。

この封鎖の直前に、マクロン大統領は、かなりとんでもない発言をしたのだった。「議論があるのは非常に良いことだが、私は言いたい、占拠されている多くの大学では、彼らは学生ではなくてプロの扇動者だ」「学生たちは理解しなければならない。もし(4月末ごろから始まる)期末試験を受けるなら、復習しなさい。この共和国には、チョコレートの試験はない」(甘くないという意味だろう)。学生たちの主だった反応は「子供扱いしている」「ばかにしやがって」だった。

■【マクロン革命 大統領就任1年】(上)フランス病 病巣にメス 大学、国鉄…改革抵抗勢力と対峙 2018年5月1日 [7]

フランスは今、政府への抗議デモとストで大荒れだ。国鉄、航空会社、法曹界、大学-背景を探ると「フランス病」の深刻さが浮かび上がる。

名門ソルボンヌ大学は4月、学生に一時占拠された。垂れ幕に「ファシスト打倒」「資本主義粉砕」という古色蒼然(そうぜん)たる左翼語が躍る。1968年、ドゴール政権を揺るがした学生運動「5月革命」が半世紀ぶりに再来したかのようだ。フランスには大学入試がない。バカロレアという高校卒業資格を取れば、誰でも国立大学に入れる。かつて西欧の知の中心地だったソルボンヌ大は、英誌による最新の世界大学番付で196位。ソルボンヌのような大学が不振では、人材や研究の底上げはできない。「平等」に固執し、フランスはずるずると世界のトップから引き離された。

国鉄デモは4月初めから5日間に2日のペースで続き、利用者の不満は爆発寸前だ。抗議の主な対象は、鉄道員の雇用特権の廃止。「52歳で辞めても年金は満額支給」など民間とかけ離れた厚遇で、20世紀初めに重労働だった鉄道員の確保のために導入された制度だ。国鉄職員の約9割がこの恩恵に浴し、約500億ユーロ(約6兆円)に上る国鉄債務の原因でもある。

フランスの経済は、競争力ランキングなどで独英に水をあけられている。仏モンテーニュ研究所のドミニク・モイジ首席顧問は「改革の成果で2%超の経済成長を実現するか、あるいは国民の反発を受けて孤立するか。1年後には、マクロン政権の行方が見えるはずだ」と予測する。

■マクドナルドに放火、300人近く逮捕 パリのメーデー行進、暴動に発展 2018年5月2日 [8]

警察によると、黒い上着にマスクを着用した約1200人がデモに合流。「パリよ立ち上がれ」「皆が警察を嫌っている」などと叫んだ。デモ隊の一部は、行進の阻止を試みた後、市中心部の東側にあるマクドナルドの店舗を破壊して放火。さらに自動車販売店の複数の車や、ショベルカー、バイクにも火をつけた。警察は、催涙ガスや放水銃でこれに応じた。

マクロン大統領はツイッター(Twitter)に「犯人を特定し、その行動の責任を取らせるためすべてのことをする」と投稿し、暴力を非難した。フランスではマクロン大統領の公共部門改革をめぐって緊張が高まっている。

[9] [10] [11]