反グローバリズムの潮流(フランス、マクロン大統領は公約を実現するも、じり貧状態に)
2017年5月7日の大統領選挙の決選投票で、極右勢力のルペン候補を大差で破って当選したマクロン大統領ですが、「フランス大統領選挙はマクロン氏(グローバリスト)の勝利と言えるのか」で予想した通り、国民の不満は拡大する一方のようです。
マクロン大統領は、当選後、着実に公約を実現して行っています。そこは前回の記事で予想した、マクロン大統領の勢力が国会で多数派になれず、国会運営が混乱して政策が実現しないと言う可能性も予想しましたが、これは大きく外れました。マクロン大統領は当選後半年程度で労働改革法案を成立させ、2018年1月1日から施行されています。
つまり、マクロン大統領は公約を見事に実現したにもかかわらず、支持率を下げていることになります。これはどういう事でしょうか。
フランス大統領選挙の決選投票は、マクロン大統領と、極右派と言われるルペン候補の一騎打ちでした。フランスは第二次世界大戦の時にナチスドイツに支配された苦い歴史があります。従って人種差別的な極右勢力に対する警戒感が非常に強いのです。グローバリズム勢力は、そこを強調して、このままだと極右勢力が国を支配して、とんでもないことになる恐怖心をあおりました。
マクロン大統領が選ばれたのは、彼が掲げた政策が評価されてからではなく、極右勢力ではない選択肢という事が一番のポイントであり、若いから今までと違う事をしてくれそうと言う期待感もあって選ばれたのでしょう。
だから、国民も、大統領選挙が終わり冷静になってマクロン大統領の政策の内容をよく考えたら、極端な自由主義の弱肉強食の政策であり、とても支持できないと変わって来たのだと思われます。
マクロン政権による労働法典改正は、2017年9月と12月に計6つのオルドナンス(委任立法)が成立し、今回のすべての措置が2018年1月1日に施行された。解雇規制に関する法改正として、不当解雇の場合の補償金額の上限設定、グローバル展開する企業の整理解雇の条件の変更、解雇不服申し立て期間の短縮などの改正が行われた。このほか、労働協約を産業単位から個別企業の労使関係に分権化する改革など、労働市場を改革し企業競争力を向上させ、高止まりしている失業率を低下させることを目的としている。
改革の詳細な内容が公表された後の9月12日、22.3万人が参加する全国規模の抗議行動が実施された。9月21日にも、CGTや連帯、フランス全国学生連盟の呼びかけで、13.2万人の抗議活動がフランス各地で行われた。パリでは労働者の力やフランス民主労働同盟、管理職組合総連盟などもデモ行進に参加した。その他、フランス各地でデモ行進が行われ、極左政党・フランス不服従も参加する規模の大きなものとなった。トゥール、レンヌ、モンペリエ、ニーム、マルセイユ、パリ、カーンなどの各地では、「マクロン法は、経営者のためのもの」とのスローガンを掲げ、高速道路を低速で運転したり、封鎖するといった抗議活動も行われた。10月19日にもCGTの呼びかけにより全国で抗議デモが実施された。
■これからも欧州は”難民問題”に悩まされるトルコとの関係性がカギに2018年1月19日
そもそも、マクロン大統領が選出された背景には、ドイツなどと比べて景気回復ペースが遅く、失業率が高止まりする現状を変えられない既存政党への不満があった。フランス経済停滞の原因の一つには、過剰な雇用者保護が挙げられる。週35時間労働制や厳格な解雇要件などが、企業の雇用コストを増加させ、フランスの国際競争力の低下を招いてきた。フランス経済を再び成長軌道に乗せるためには、労働市場改革が不可欠であり、現政権も最優先で取り組んでいる。
一方、雇用者保護の緩和は、短期的には賃金の低下や失業率の上昇といった痛みを招き、国民の不満を高めかねない。事実、マクロン大統領の支持率は改革の具体化に伴い急落し、大統領選直後の67%から、8月には一時36%にまで落ち込んだ。外交手腕などへの評価により、12月には52%にまで回復しているものの、依然として労働市場改革への不満は大きい。結局、改革が成功しても失敗しても、マクロン大統領への風当たりが強まることは避けられない。最悪のシナリオは、マクロン大統領の支持率が大幅に落ち込み、それによって改革が頓挫してしまうケースである。
■マクロン仏大統領、短期間の兵役義務化めざす考え「徴兵再来」との批判招く恐れも 2018年1月20日
フランスのマクロン大統領は19日、軍幹部らを前にしたスピーチで「国全体で兵役に従事する仕組みをつくりたい」と述べた。18~21歳の男女を対象に約1カ月の兵役を課すという自身が掲げる制度案について実現を目指す考えを示した。個人の自由を重視するフランスでは、「徴兵制の再来」との批判も招きそうだ。
大統領選の公約では治安、テロ問題などに若い世代の目を向けさせるために兵役の義務化を導入するなどとしていた。信条などを理由に拒絶する「良心的兵役拒否」は認めるとしている。
マクロン大統領の近況はどうなっているのかなぁと思いました。そこで支持率を調べてみると、やけに下がってた。このチャートの見方は、調査会社ごとに線の色が違うので、全部で7社の世論調査結果ということになります。一番高い支持率を示す黄緑の会社と、一番低い水色の会社との差は、15%近くになりますが、7社全てが今年に入ってから、マクロン大統領の支持率低下を示しているのが興味深い。
フランス労働市場の謎。2017年のフランスでの失業率は、9.3%→8.6%まで下がった。これだけ大きく失業率が下がったにもかかわらず、求職数は3,700人しか減っていない。よ~く調べると、求職(仕事を探す)を辞めてしまった人が、2017Q4だけでも、205,000人もいた!ということで、諦めちゃった人が多いので、そういう人が失業者のカウントから外れた結果ということのようです。
フランスでマクロン大統領の国鉄、公務員改革に対する抗議デモが22日、各地で行われ、全国で計約32万人が参加した。この日は国鉄の大規模ストにあわせ、公務員労組も人員削減などに反対してストを実施。警察によると、パリでは約4万9千人のデモ隊がバスチーユ広場に集まった。暴徒化した約100人が付近の商店などを襲撃し、警察が放水車で鎮圧する騒ぎになった。
■仏マクロン大統領が「AI立国」宣言、無人自動運転も解禁へ2018年3月30日
近年テクノロジー分野への投資が活発化しているフランスで、また新たな動きが始まった。3月29日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、AI(人工知能)分野のテクノロジー開発支援に向け15億ドル(約1600億円)を支出すると宣言した。
「AIは今後、我々の暮らしに大きな革新をもたらすことになる。労働市場の今後の動向を考える上でもAIは非常に重要だ。AIが仕事を奪うなどと恐れる必要はない。イノベーションは国民に、新しい時代の幸福をもたらすのだ」とマクロンは話した。
■仏国鉄がスト入り 3カ月予定 マクロン氏改革に抗議2018年4月3日
フランスの国鉄(SNCF)が2日夜、3カ月間の予定で大規模なストライキに入った。エマニュエル・マクロン大統領が推し進める労働改革への抗議が理由で、仏全土で交通の混乱が予想される。
SNCFの職員は恵まれた待遇を受けており、毎年自動的な賃金引上げや退職年金の早期の受給、年間28日に及ぶ有給休暇や雇用保障などがある。また近親者は無料で鉄道が利用できる。マクロン政権は、SNCFの優遇措置を段階的に廃止したいと考えており、ほかの産業部門と同じような条件での採用開始を提案している。マクロン政権は、欧州連合(EU)の基準に沿う形で、2023年からの鉄道部門への競争導入を目指している。
今回のストは、フランスの労働組合にどれほどの力があるのかの試金石になる。フランスの労働者のわずか11%強が労働組合員で、フランスは組合組織率がEUの中で最も低い国の一つ。しかし、組合はこれまで、組織率以上の経済的かつ政治的な影響力を及ぼしてきた。
■仏全国スト、大学でも抗議拡大 試されるマクロン大統領の改革案2018年4月5
国鉄職員が3か月間にわたる大規模ストライキに突入し交通に大きな混乱が生じているフランスでは、マクロン大統領の抜本的改革案に対する抗議運動が大学にも広がっている。
首都パリと南東部リヨン(Lyon)の2大学で、マクロン大統領の入学者選抜計画に反対する学生らが校舎を封鎖し、座り込みデモを開始した。国内各地の大学ではここ数週間、同様の授業ボイコットが続いている。一方、南部マルセイユ(Marseille)では元港湾労働者や郵便配達人、学生などさまざまな立場の人々が集まり、マクロン大統領は公共サービスを廃止しようとしているとして抗議の声を上げた。
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