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反グローバリズムの潮流(イタリアの政治混迷で世界経済が動揺)

mcb1805281002013-f1 [1]先週、イタリアで反EU政権が樹立 [2]と投稿しました。ところが大統領が首相として承認したコンテ氏が作成した内閣の案を、マッタレッラ大統領が拒否。一転して、組閣は断念し、再選挙に向かう可能性が高くなりました。この混乱を受けて、今週はニューヨーク株式市場で500ドルも株価が下落するなど、世界の金融市場に大きな動揺が走りました

ここで、不思議なのは、反EU政権の首相を大統領が承認した時には、殆ど金融市場に混乱は見られなかったのに、大統領が組閣を拒否した時に暴落が起こったことです。何故こんなことになったのか調べてみました。

イタリアの新政権に対して、金融市場が懸念しているポイントは大きく二つです。一つ目が、新政権がばらまき政策を実施して、将来イタリアの国債が暴落する可能性が高い事です。イタリア国債の多くを買い支えているのがECB(欧州中央銀行)ですから、イタリア国債が暴落すればEUの金融や経済が、ガタガタになる可能性があります。

二つ目が、EUの存続そのものの問題です。イギリスのEU離脱の準備が進んでいますが、ここでイタリアまでEUを離脱するとなると、EUの存続自体が危うくなります。

それでは、株式暴落は何故、反EU勢力の連立政権の首相が承認され新政権が成立すると思われた5月24日ではなく、大統領が内閣案を拒否し再選挙の可能性が高まった5月29日に起きたのでしょうか。

それは、再選挙の結果がどうなるかと予測し、今よりも反EU勢力が強くなると市場が予測したからです。イタリア社会に閉塞感が広がっており、歳出拡大や減税をうたう両党への国民の支持は厚い。再選挙となれば、両党とも今よりも主張を過激化させて、さらに得票を伸ばす可能性が高い。従来EU離脱を掲げていた「五つ星運動」は得票を伸ばすために前回選挙ではEU離脱を公約に掲げませんでした。しかし、国民の反EU感情が大きいことに自信を持った今であれば、公約にEU離脱を掲げる可能性も高くなったのです。

その後、イタリア国債も世界の株式市場も落ち着きを取り戻しつつあります。また、連立政権は大統領に拒否されたユーロ懐疑派のサボナ元産業相を財務相から外すことで政権を発足させる協議も始まったようで、ひとまず混乱は収束に向かいつつあります。

しかし、イタリアの新政権の動向によっては、EUに大きな影響を与える可能性があり、しばらくは目が離せない状況です。また、新政権が樹立されると、ベーシックインカムが導入される可能性が高く、その結果がどうなるか楽しみで、今後のイタリアに注目しています。

 

■イタリア首相候補が辞退、反ユーロ派閣僚起用に大統領が拒否 再選挙めぐり「近く決断」2018年5月28日 [3]

イタリアで連立政権を目指し第一党「五つ星運動」、右派「同盟」の2党が首相候補に擁立したジュセッペ・コンテ氏は27日、マッタレッラ大統領との会談で組閣が不調に終わったため、首相指名を辞退した。大統領は「再選挙を行うかどうか近く決断する」と述べた。

大統領は声明で、コンテ氏は提出した組閣名簿で反ユーロ派のサボナ元産業相を財務相に指名し、大統領は受け入れを拒否したと明らかにした。「サボナ氏はユーロ離脱に言及してきた。ユーロ加盟はイタリアの基盤」と述べた。サボナ氏は近著で、ユーロ圏は「ドイツの檻(おり)」だと表現し、ユーロ離脱のシナリオを用意すべきだと主張していた。

イタリアで大統領は、政治的な思惑で組閣に干渉してはならないとされるが、国際協定や条約への抵触が懸念される場合は任命を拒否できると解釈されている。

■イタリア不安、市場覆う=政治混迷でリスク回避2018年5月29日 [4]

欧州連合(EU)懐疑派の台頭に伴うイタリア政治の混迷を受け、金融市場が不安に覆われている。ユーロの対円相場は11カ月ぶり安値に下落。イタリアの株価も急落し、長期金利は4年2カ月ぶり高水準に上昇するなど、投資家のリスク回避が鮮明だ。

社会に閉塞(へいそく)感が広がる中、歳出拡大や減税をうたう両党への国民の支持は厚い。政権樹立には失敗したが、仮に秋にも再選挙が行われれば、党勢は維持されるとの見方が有力となっている。イタリアは先進7カ国(G7)の一角を占め、ユーロ圏でもドイツ、フランスに次ぐ大国。仮にユーロ圏から離脱すれば大きな影響が予想され、欧州の長期的な混乱は必至だ。

■「イタリア政治危機」?2018年5月29日 [5]

イタリアが揺れています。マーケットでは「イタリア不安」でイタリア国債が売られ、同国債利回りが急上昇しています。なぜ?欧州危機の再来なの?ユーロ圏内で独仏に次ぐ経済規模を持つイタリアの政権が反EUを唱えるとなると、これはEU分裂のキッカケになりかねません。

五つ星と同盟の連立政権は、低所得者に一人月額780ユーロ(約10万円)をばら撒く放漫財政を掲げているので、イタリアの累積債務が更に膨らむことが市場では懸念されます。そもそもイタリア国債はECB量的緩和政策による国債購入プログラムで買い支えられてきました。ECBのイタリア国債保有額は既に40兆円相当規模にもなります。その結果、イタリア国債は利回りが低く抑えられ10年債が1%台で推移していました。しかし足元では2.7%まで急上昇。と言ってもまだ、欧州債務危機当時に比べれば極めて低い水準ですが。果たして市場が高を括って楽観的すぎるのか。

■NYダウ平均株価 一時500ドル以上値下がり イタリア混乱懸念で2018年5月30日 [6]

29日のニューヨーク株式市場はイタリアの政治情勢の混乱が長引くのではないかという懸念から世界経済の先行きに対する不透明感が増したという受け止めが広がり、ダウ平均株価は一時、500ドル以上、値下がりしました。

市場関係者は、「イタリアだけではなく、首相への退陣要求が強まっているスペインの政治情勢に対する警戒感もあり、ユーロ圏経済に再び焦点があたっている」と話しています。

■イタリア政局混乱でECBが直面した大誤算 まさかの再選挙、ユーロ相場はもっと下がる2018年5月30日 [7]

組閣失敗を受けマッタレラ大統領は元IMF(国際通貨基金)財政局長のカルロ・コッタレッリ氏を暫定政権の首相とし、組閣を委ねている。コッタレッリ氏は親EU(欧州連合)でかつ緊縮路線を明確に支持する人物だ。総選挙で選ばれた政治家が推薦する閣僚候補の「主張が気に入らない」いう理由で、大統領が組閣に協力しないということには後味の悪さも残る。両党は指名拒否が憲法違反になるとして、大統領の弾劾手続きを要求している。今回の騒動は客観的に見ればEUが「手先である大統領」を通じて内政に干渉したようにも映り、禍根を残す可能性はある。

最も重要なことは再選挙を実施したからといってイタリア議会の勢力図が親EUに変わる見込みがほとんどないということだ。現時点の世論調査では3月再選挙時よりも極右である「同盟」が勢いを伸ばしているというデータもあり、9月再選挙後に樹立される連立政権では一段と反EU色が強まるおそれもある。

ECB(欧州中央銀行)は「拡大資産購入プログラム(APP、いわゆる量的緩和)をいつ、どのように打ち切るか」を主要論点としている。「APPは年内に終了する。これを9月に宣言する」というのがメインシナリオだったはずであり、すでに関心は利上げ着手に移っていたと思われる。

現在、ECBが毎月購入している国債の19%弱がイタリア国債であり、これは同国のECBへの出資金比率対比で1%程度オーバーして購入されている。政局不透明感に乗じてイタリア国債が売り叩かれる中で、ECBが難なく身を引けるだろうか。今秋をメドにイタリア再選挙が見込まれている時点で9月政策理事会での終了宣言は難しくなったと考えるのが自然だ。仮に「APPの年内終了すらおぼつかない」という想定に移れば、ユーロドル相場は再び「1.05~1.15」に引き戻される可能性があろう。

ここにきてスペインでも与党・国民党の汚職問題に絡んでマリアーノ・ラホイ首相への退陣要求が強まっている。最悪の場合、今年の秋にイタリア、スペインのダブル総選挙というシナリオまで浮上している。そもそも今秋は英国のEU離脱(ブレグジット)交渉が佳境を迎えるタイミングでもある。ECBの正常化プロセスは一気に雲行きが怪しくなってきたと見ざるを得ない。

■欧州株式市場=反発、イタリア株持ち直す2018年5月31日 [8]

欧州株式市場は反発して取引を終えた。前日はイタリア政局の混乱が不安視され世界的に株価が下がったが、この日はイタリア株が持ち直した。イタリア暫定首相に指名されたカルロ・コッタレッリ氏が暫定内閣の組閣で主要政党の支持を取り付けられない中、早ければ7月にも再選挙が実施される可能性が浮上。投資家らは新たな展開を考察しているもようだ。

■米国株4日ぶり反発、306ドル高 イタリア懸念が後退 2018年5月31日 [9]

30日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反発。政局の混迷を背景としたイタリア国債の利回り上昇が一服し、投資家のリスク回避姿勢がひとまず和らいだ。前日に大きく下げた金融株を中心に買いが優勢となった。前日まで大きく上昇していたイタリア10年物国債利回りが30日は低下した。イタリア政局に対する警戒感は根強いが、世界の金融市場の混乱や米景気悪化につながるとの懸念は後退した。

■<イタリア>連立再び協議開始 先行きは不透明2018年5月31日 [10]

総選挙後の混乱が続くイタリアで、最大勢力のポピュリズム(大衆迎合主義)政党「五つ星運動」のディマイオ代表が5月30日、マッタレッラ大統領と大統領府で会談し、一度は頓挫した右派政党「同盟」との連立政権樹立に向けて協議した。だが「同盟」のサルビーニ書記長は再選挙を望む姿勢を堅持しており、先行きは不透明だ。

焦点となっているのは、「五つ星」と「同盟」が経済相候補として挙げたユーロ懐疑派のサボナ元産業相の処遇だ。ディマイオ氏は会談後、「サボナ氏に代わる人物を見つけよう」と述べ、経済相候補を代えることでマッタレッラ氏の理解を得たい考えを示した。サルビーニ氏はディマイオ氏との協議には応じる考えを示したものの、「サボナ氏を経済相から外すのはおかしい」とも述べた。

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